月経中に「血の涙」が出る珍しい症例が報告される
by ~ Erebos
「血の涙」という慣用句は「怒りや悲しみのあまりあふれ出る涙」を指し、実際に血が涙のように眼から流れ出てくるという状況を意味するわけではありません。しかし、文字通りの「血の涙」が月経中に流れ出てしまうという特異体質の女性が新たに報告されています。
Woman cries blood tears during menstruation in 'rare and unusual clinical case' | Live Science
https://www.livescience.com/blood-tears-menstruation.html
涙は涙腺内の毛細血管から得た血液から血球を除いて液体成分のみを取り出したもので、成分的にはほぼ血液と同じです。「眼から血が流れる」という報告はしばしばフェイクのように扱われますが、細菌性結膜炎や外傷などによって血の涙を流すという症例はこれまで複数確認されており、「Haemolacria」という病名も存在します。
「血の涙」を本当に流した人が報告される - GIGAZINE
新たにインドのチャンディーガル大学院医学教育研究所(PGIMER)のSoumitra Ghosh氏らが報告した症例が特に珍しいとされたのは、眼から流れ出た血が文字通り「血そのもの」に見え、さらに月経により引き起こされるという点でした。これまで報告されてきたHaemolacriaは、前述の通り細菌性結膜炎や外傷などの病気や怪我で引き起こされることが多く、さらに流れ出る血も通常の涙と血が混ざったような「純粋な血」とは遠いものが大半でした。そのため、今回の症例は、特に珍しいものとして報じられています。
実際の画像が以下。患者は25歳の女性で、血を流しているにもかかわらず眼・副鼻腔・涙管・血の涙自体に異常は確認されませんでした。さらに血の涙を流している際に、頭痛やめまいなどの健康異常も併発していなかったとのこと。
これまでの症例によって、Haemolacriaの一般的な原因は炎症、外傷、病変、腫瘍、高血圧、黄疸や貧血だということがわかっています。しかし、Ghosh氏らは今回の女性について上記の一般的な原因について診断を行った結果、今回の症例が鼻、耳、肺、乳首、腸、皮膚、そして眼などの子宮以外の箇所から周期的に出血してしまうという代償性月経だと診断しました。
代償性月経で最も多くみられるのが鼻粘膜からの出血である「鼻血」で、約3割を占めます。問診によると、問題の女性は「初めて血の涙を流した際に鼻血を出した」と答えており、代償性月経の可能性が高いと考えられるとのこと。
特定の眼組織はホルモンバランスに影響を受けることが知られており、角膜のカーブや厚みは月経時や妊娠期、授乳期で変化する場合があることから、Ghosh氏は今回の現象はホルモンバランスが原因として、問題の女性に経口避妊薬を処方。このホルモン療法を3カ月続けたところ、血の涙を流すことはなくなったそうです。
今回の現象について、Ghosh氏は論文の中で「近年の医学文献にも記載されていない珍しい症例です」と指摘。経口避妊薬の投与でひとまずは収まったものの、「血の涙の原因を正確に理解し、容態を長期的かつ効率的に管理するためには、さらなる研究が必要です」と記しています。
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