アジア人プロゲーマーがアメリカで体験した人種差別について語る
ブリザード・エンターテイメントの人気FPS「オーバーウォッチ」のプロeスポーツリーグである「オーバーウォッチ・リーグ」に参戦している韓国人eスポーツ選手「Fearless」ことEui-Seok Lee氏が、自身のTwitchチャンネル上でアメリカで過ごす中で体験した人種差別について語っています。
Korean Overwatch League Player Shares His Experience With Anti-Asian Racism In America
https://kotaku.com/korean-overwatch-league-player-shares-his-experience-wi-1846655749
Fearlessはオーバーウォッチ・リーグに参戦しているDallas Fuelというアメリカのテキサス州ダラスを拠点とするチームに所属する韓国人eスポーツ選手。Dallas Fuelはダラスを拠点としているため、アメリカでプロゲーマーとして活動しています。オーバーウォッチ・リーグでの合計獲得賞金は12万8997ドル(約1400万円)。
そんなFearlessが自身の配信の中でアメリカで体験した人種差別について語った内容をザックリまとめたのが以下のムービー。Fearlessはムービーの中で「アメリカでアジア人として過ごすことは真剣に恐ろしいことです。周りの人はすぐに私たちアジア人にケンカを売ってきます。常にこちらを見てきて、すぐにこちらに近寄ってきてわざとらしく咳をしたり、笑いながら罵声を浴びせてくる。これは本当に恐ろしいことです。海外在住の韓国人は気を付けた方がいいと思います。アメリカでの人種差別は冗談ではありません」などと語り、自身が体験した人種差別を赤裸々に告白しています。
i dont know if i'm "stepping out of line" for translating something about what another team's player is experiencing
— swingchip (@swingchip930) April 6, 2021
but here's the full translation of that Fearless clip.
please see some of what OWL players and staff are facing as Asians in America. pic.twitter.com/LZWvnRkuAx
Fearlessが配信の中で人種差別の被害を訴えたのは、アメリカでアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムが前例のないレベルに達したタイミングでした。アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、新型コロナウイルスのパンデミックが中国により引き起こされたと繰り返し避難してきたことが、アジア人に対するヘイトクライムを引き起こしたと海外ゲームメディアのKotakuは指摘しています。
Fearlessが自身の体験した人種差別について告白したのち、オーバーウォッチ・リーグやファンたちはFearlessへの支持を表明し、「#stopasianhate」というハッシュタグ上で、人種差別撤廃を訴えています。Fearlessが所属するDallasFuelの親組織であるTeamEnvyの共同創設者であるMike Rufail氏は、Twitter上で人種差別を批判するムービーを公開しています。ムービーの中でRufail氏は「我々はプレイヤーが快適に過ごせるようにできる限りのことをしていきます」と語りました。
I am deeply saddened by the situations some of our @DallasFuel players have been put in while walking the streets here in Dallas, TX. This is a great city in a proud state. This isn't something we should be proud of at all and should all pitch in to change it. pic.twitter.com/Sq7MGlco50
— Mike Rufail (@hastr0) April 6, 2021
オーバーウォッチ・リーグにはアジア人プレイヤーが複数参戦しているため、Kotakuは各チームに連絡を取り、チーム内のプレイヤーがFearlessのような人種差別の被害にあっていないかなどを質問しています。
コメントに返答したFlorida Mayhemのゼネラルマネージャーであるアルバート・イェー氏は、「過去に我々が対処した出来事もありましたが、私が知る限り最近ヘイトクライムなどは確認されていません」と語りました。また、新型コロナウイルスの影響でプロゲーマーたちはほとんど外部から隔離された状態で日々を過ごしていることを挙げ、「ある意味パンデミックによる外出自粛を守ることが、所属選手たちを保護することにつながっています」と述べています。
Boston Uprisingでゲーム担当プレジデントを務めるクリス・ローレンジャー氏は、「これまでアメリカに住んでいたアジア人プレイヤーが人種差別的な事件に遭遇したことはなく、何かが起これば経営陣に知らせるようにと指示している」と述べました。
Washington JusticeおよびAtlanta Reignは、問題は発生していないが、スタッフとチームメンバーにあらゆる懸念を提起することを奨励しており、可能な限りサポートしますとコメントしました。
さらに、オーバーウォッチ・リーグ公式はアジア人に対する人種差別が増加していることを受け、「アクティビジョン・ブリザードでは人種差別を可能な限り強力に非難します。我々はアジアのコミュニティや従業員、選手と協力し、eスポーツを含む組織全体でヘイトや無知と戦うために取り組んでいます」という公式声明を発表しています。
なお、Rufail氏はDallas Fuelが実施している人種差別対策についていくつかを共有しており、「選手のためのセキュリティ対策を向上させる」ための作業を行っているとしています。Kotakuは「オーバーウォッチ・リーグの各チームが人種差別の脅威に真剣に取り組んでくれることを切に願っています」と記しました。
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