世界規模でコーヒー豆不足が発生、「過去最高の生産量」にもかかわらずなぜ?
コーヒーは世界中で親しまれている飲み物ですが、インドのビジネス・金融メディアであるBloombergQuintは2021年3月23日に、「世界各地でコーヒー豆の供給不足が起こっている」と報じました。コーヒー豆の生産量が減ったわけではないにもかかわらず供給不足が起きている原因は「世界的な輸送用コンテナ不足」だとのことです。
The World Is Facing a Coffee Deficit in Supply Chain ‘Nightmare’
https://www.bloombergquint.com/business/coffee-trade-reeling-from-virus-faces-nightmare-freight-snags
BloombergQuintによると、アメリカではコーヒー豆の備蓄量が6年ぶりの低水準となっており、卸売価格の高騰も発生しているとのこと。しかし、コーヒー豆の生産量自体が減少したというわけではありません。2020年に起きた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにもかかわらず、ブラジルにおける2020年~2021年度のコーヒー豆生産量は過去最高になる見通しであり、2020年6月にはコーヒー豆の国際価格が下落したことも報じられていました。
コーヒー豆、4カ月ぶり安値圏 国際価格 ブラジル生産、過去最高見通し: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59943470T00C20A6QM8000/
生産量が増えたのに備蓄量が減少している背景には、世界的に輸送用コンテナが不足したため、生産したコーヒー豆を輸送することができないという事情があります。大量のコンテナがアメリカやヨーロッパの港に滞留したまま回収できない状態になっており、コーヒー豆の生産地に十分な輸送用コンテナが補充されていないそうです。
世界的な「コンテナ不足」が発生中、コンテナは一体どこに行ってしまったのか? - GIGAZINE
コンテナ不足の発端は、COVID-19の流行に伴って各国で都市封鎖が行われたことだったとのこと。2020年の前半には都市封鎖によって経済活動がストップし、アメリカなどの港には大量のコンテナが港に放置されました。その後、アメリカやヨーロッパで「巣ごもり需要」が拡大したことを受け、中国などから商品を積んだ大量のコンテナがアメリカへ輸送されましたが、肝心の港では作業員やドライバー不足から荷物をさばききれない状態になっています。
これに伴ってコンテナ船の運賃は2020年後半から急激に上昇しており、2021年2月には前年同時期の3倍近くにまで運賃が上昇したとのこと。また、世界で使われるコンテナのうち9割以上が中国で生産されているそうですが、急激な需要の増加に対応できていないのが現状です。
フロリダ州の輸入業者であるクリスチャン・ウォルサー氏は、南米から北米への輸送コストが2倍以上になっていると指摘し、「誰もがピンチだと感じています。これらのボトルネックはコンテナの悪夢と化しています」とコメント。
記事作成時点では、コーヒー豆の業者も在庫を切り崩すことで価格を大きく上げずに販売できているそうですが、ニューヨークのアラビカコーヒー先物価格は2020年10月末から2021年3月の間で24%上昇しているとのこと。また、2021年2月のアメリカにおけるコーヒー生豆在庫は前年同月比8.3%減となり、2015年以来の低水準を記録しているそうです。在庫の減少によってブラジルで収穫量が減少した際のバッファーがなくなり、価格の下支えが起きるとアナリストは予測しています。
金融企業のMarex Spectronは、ブラジルにおけるコーヒー豆の生産量が悪天候の影響で減少傾向にあることを理由に、2021年~2022年は世界的にコーヒー不足が起きるだろうと予測。その一方で、ブラジル最大のコーヒー倉庫業者であるDinamoの取締役を務めるルイス・アルベルト・アゼベード・レヴィ・ジュニア氏によると、ブラジルでは空コンテナの到着を待っている豆が大量にあるとのこと。
フロリダに拠点を置くコーヒー輸入企業・Ally Coffee社に勤めるマルコ・フィゲレイド氏は、「スペースやコンテナの不足など、ロジスティクスには頭を悩ませています。私たちは状況を監視し、顧客に話をしてコストの上昇を認識してもらっています」と述べています。
また、世界最大の海運会社であるデンマークのA.P. モラー・マースクは、コンテナやチャーター船が一時的に確保できない状態にあり、輸送に遅延が発生していると発表。利用可能な全てのコンテナを確保するべく手を回しているほか、本来であれば修理しないほど老朽化したコンテナを修理し、なんとか再利用しているとのことです。「これは購入パターンと船舶の入手可能性の両面から見て、一時的な状況です。2021年前半には通常の状態に戻ることを期待しています」と、A.P. モラー・マークスは説明しました。
記事作成時点では、多くのコーヒー豆販売店やカフェがパンデミックで失った客足を取り戻すために値上げを我慢しています。しかし、外食産業の客足がパンデミック以前の水準に戻るには年単位の時間がかかる可能性があり、最終的にはコーヒー類の価格を値上げせざるを得なくなる可能性もあるとのことです。
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