気候変動で「コーヒー豆」の生産が危機的状況に陥っている
世界中の人々に愛されているコーヒーは、アフリカを原産とするコーヒーノキの種子が原料となっており、熱帯地域を中心に栽培されています。そんなコーヒー豆の生産が危機的状況に陥っていることを解説するムービーが、YouTubeで公開されています。
The global coffee crisis is coming - YouTube
コーヒーは世界で最も人気のある植物の1つです。コーヒーノキは発芽からおよそ3~4年で種子を付けるようになるとのこと。
摘み取って果肉や内果皮を取り除き、洗浄や乾燥、焙煎といった工程を経て……
お店などで販売されているコーヒー豆の姿になります。
コーヒーは世界中で年間5000億杯も売れている飲料であり、コーヒー豆はラテンアメリカやアフリカ、アジアに住む数千万人もの農家によって栽培されています。しかし近年では、人為的な気候変動によってコーヒーノキを育てられる地域が減少しているそうです。
コーヒー豆の主要な生産国であるコロンビアに住む農家たちは、すでに気候変動の影響を強く感じているとのこと。
農家の女性は、「15年ほど前からコーヒー豆の生産量が大幅に落ち始めました。去年は非常に少なかったです」と述べています。
また、別の男性は生産量の減少だけでなく価格の低下も問題だと指摘し、コーヒーを栽培する風景が過去の物になってしまうかもしれないと訴えました。
コーヒーの品種は100種類以上もありますが、そのうちほとんどは野生種であり、商業目的で栽培されている品種はわずかです。中でも有名なのがロブスタ種とアラビカ種の2つ。
ロブスタ種は苦みが強く、エスプレッソやインスタントコーヒーに使われます。
一方、アラビカ種は滑らかでマイルドな味わいであり、より上質なコーヒーに使われることが多いとのこと。
アラビカ種はロブスタ種よりも繊細な栽培条件が必要となります。気温は18度~21度が理想であり、暑すぎても寒すぎてもうまく育ちません。
また、特定の雨量が必要なことに加え、開花前に3カ月の乾期を必要とします。
日中と夜間の寒暖差も重要であるため、アラビカ種は標高1000m~2000mの範囲で最もよく育つそうです。
アラビカ種は主に北緯25度~南緯30度の範囲で栽培されており……
コロンビアはちょうどその範囲内に位置しています。
キンディオ県はコーヒーの世界的産地として知られる地域であり、山間にコーヒー農園が点在しています。コーヒー農家のFabio Enrique Hoyos Salazarさんは、この場所にはコーヒー栽培に適したあらゆる環境が整っているとコメント。
コロンビアのコーヒーは、1世紀以上にわたり世界で最も高品質だといわれてきました。「私たちがコーヒーを愛するのは、コーヒーの中で生まれ、コーヒーで育てられてたからです」と語るのは、コーヒー農家のDignoris Soto Londonoさん。
しかし、コロンビアのコーヒー産地は気候変動によって大きな影響を受けています。温室効果ガス排出量の増加により、1980年からコロンビアのコーヒー産地では平均気温が1.2度ほど上昇しました。
これにより、コーヒー栽培に最適な標高が押し上げられているとのこと。標高が低い場所ではうまくコーヒーノキが育たず、コーヒー豆の品質も落ちてしまうそうです。
比較的標高が低い地域でコーヒーを栽培する農家にとって、適切な標高の変化は大問題です。ヴィラ・グロリアという地域に農園を持つSalazarさんは、暖かすぎる気候と日の光がコーヒー栽培に悪影響を及ぼしているとコメント。
また、温暖な気候は害虫や菌の繁殖にも適しており、ヴィラ・グロリアよりも標高が高いサンタフェの農場では、コーヒーさび病という病気に悩まされているとのこと。コーヒーさび病にかかったコーヒーノキは、葉が色あせて光合成能力が失われてしまいます。
エル・オアシスという地域の農場でも、気候パターンの変化によって雨が降るタイミングや暑くなるタイミングの予測が困難となり、栽培に悪影響が出ているそうです。
2013年以降、コロンビアでコーヒーを栽培できる土地は7%以上減少しているそうで、研究者らはさらに状況が悪化していくと予想しています。
同様の問題はコロンビアに限らず、世界中で発生しています。2050年までにはコーヒー栽培を続けられる土地が50%も減るとの予測もあり、世界のコーヒー豆生産は危機的状況です。
気候変動によって野生のコーヒー種の60%が絶滅の危機に瀕しているとの指摘もあり、品種改良にも悪影響が出るとみられています。
コロンビアではスペインの植民地だった20世紀前半からコーヒー豆が生産されてきました。
1929年に起きた世界恐慌の影響でコーヒー豆の価格が下落すると、コーヒー産業を維持するために政府が介入しました。
政府は1000ヘクタール(10平方キロメートル)以上の土地を買い上げ、それぞれを16ヘクタール(0.16平方キロメートル)の小さな区画に分割してコーヒー農家に売却。
コーヒーと同時に他の作物も栽培し、価格変動を乗り切らせることにしたとのこと。これにより、コロンビアのコーヒー産業は小規模農家が多数を占める構造になったそうです。
また、コロンビアは1962年に国際コーヒー協定に署名し、他のコーヒー輸出国と共にコーヒー豆の最低価格を設定。
コーヒー豆の価格が回復するにつれ、コロンビアの小規模農家は繁栄していきました。
記事作成時点で、コロンビアはブラジルとベトナムに次ぐ世界第3位のコーヒー輸出国となっています。
コロンビアのコーヒー産業は50万もの主に小規模な農家によって支えられていますが、これらの小規模農家が今、気候変動の影響を受けて危機に瀕しています。
コーヒーを守るために木陰を作ったり、農園を高地へ移したり、暖かさに強い品種に切り替えたりするためのコストは、小規模農家が負担できるものではないとのこと。
かつては周辺に住むほとんどの人がコーヒー農園を持っていたものの、今では「コーヒーの栽培=赤字」の状態だとSalazarさんは述べています。
2009年からは気候変動やコーヒーさび病などの影響を受け、生産量が大幅に落ち込んでいます。
2013年にはコーヒー農家がストライキを起こし、政府による財政支援を訴えました。
その後も採算が取れるかどうかギリギリのラインでコーヒー価格は変動し続けており、気候変動に適応するためのコストをコーヒー農家が負担することは困難です。
すでにコーヒー農家は別の作物を栽培することを余儀なくされており、Salazarさんもバナナを栽培する決断を下したとのこと。
世界のコーヒー豆の80%は2500万人もの小規模農家によって生産されており、貧困の中で暮らす多くのコーヒー農家は気候変動に対処できません。
気候変動によって、コロンビアで長年続いてきたコーヒー文化が終わりを迎えてしまう可能性もあるとのことです。
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