飲み終わったペットボトルを繰り返し使うことは安全なのか?

世界中では毎分100万本近いペットボトルが購入されていると推定されており、そのほとんどが最終的に埋め立て処分されています。中には飲み終わったペットボトルを洗い、再び水やお茶を入れて水筒代わりに使っている人もいますが、気になるのが「ペットボトルの再利用は衛生的に問題ないのか?」という点です。そんなペットボトルの再利用に関する疑問に対し、専門家らが回答しています。
Is it safe to reuse plastic water bottles? - Metafact
https://metafact.io/factchecks/218
We All Do It, But Is It Actually Safe to Reuse Plastic Water Bottles?
https://www.sciencealert.com/it-is-safe-to-reuse-plastic-water-bottles-these-scientists-explain

ペットボトルの原料であるポリエチレンテレフタラート(PET)は、軽量かつ透明であり比較的熱にも強いという特性から、ペットボトル以外にも多くの食品の包装に使用されています。アメリカやヨーロッパを含む多くの地域でPETの安全性が確認されており、飲食物と接触しても問題ないと考えられています。
しかし、インターネット上では「ペットボトルに含まれる化学物質が飲料に放出され、ガンを引き起こす」といった説もあるとのこと。こうした主張をする人が懸念している化学物質の1つが、プラスチックの合成に使われるビスフェノールA(BPA)です。
BPAは内分泌系にダメージを与えて生殖機能や代謝機能に問題を引き起こす可能性がありますが、BPAが使われるのはポリカーボネートやエポキシ樹脂といった剛性の高いプラスチックであり、PETには含まれていません。

危険性が懸念されているBPA以外の物質としては、アンチモンという化学物質が挙げられます。ペットボトルの製造で触媒として使われるアンチモンは発がん性物質ではありませんが、危険量を摂取するとおう吐や下痢を引き起こす可能性があります。ペットボトルから飲料に溶け出したアンチモンの危険性について数カ月間にわたり調査した2008年の研究では、徐々にアンチモンがペットボトル内の飲料に浸出することが確認されたものの、その量は危険値よりはるかに低い値に過ぎなかったとのこと。
また、化学物質の浸出は高温の条件でより頻繁に発生すると懸念されています。2008年の研究で気温が60度~80度といった条件で半年間の調査を行った結果、飲料中に浸出するアンチモンが危険値に達したことが判明しました。しかし、これについても60度の条件では危険値に達するまで176日、80度の条件でも1日以上かかったそうで、長時間にわたりペットボトルを直射日光の下に放置するのを避ければ危険値には達しないそうです。

ペットボトルの再利用については微小なプラスチック片であるマイクロプラスチックの観点からも不安の声があり、実際に「開封直後のペットボトル飲料には93%の割合でマイクロプラスチックが含まれている」との研究結果もあります。しかし、世界保健機関(WHO)がマイクロプラスチックの有害性について調査した結果、マイクロプラスチックは人間の健康に重大な有害性をもたらさないと結論づけられています。
また、サリー大学で環境バイオテクノロジーを研究するUmar Abdulmutalib氏は、「新しいペットボトルには古いペットボトルより多いマイクロプラスチックが含まれている可能性があります」と指摘。ノルウェー海洋研究所のMarek Cuhra氏も、「洗浄済みのペットボトルから水を飲むことは、新品のペットボトルから水を飲むよりも安全だと考えています」とコメントしました。Cuhra氏らの研究チームは、「新品のプラスチック容器」と「温水で洗ったプラスチック容器」でミジンコを飼育する実験を行い、新品よりも温水で洗った方のプラスチック容器でより多くのミジンコが成長・繁殖するとの研究結果を発表しています。
専門家らが考える最も大きなペットボトル再利用のリスクとは、「ペットボトルの汚れ」です。ペットボトルは繰り返し使い回すことを目的に設計されていないため、簡単に損傷したり割れたりする可能性があるほか、表面にできたひび割れで微生物が繁殖する危険もあるとのこと。特に内部が湿っている場合に汚染がひどくなる可能性が高いそうです。

ペットボトルの再利用について回答した専門家8人のうち、6人は「安全な可能性が高い」と回答しています。再利用に関する最も高いリスクはマイクロプラスチックや化学物質の浸出ではなく、微生物などによる汚染であるため、ペットボトルを定期的に洗うことが大事だとのことです。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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