寒い冬に激しい運動をすると肺に悪影響が出る可能性
寒い中で運動すると「脂肪の燃焼効率が上がる」という研究結果があり、寒い日ほど運動するべきだとする意見があります。その一方で、10年以上にわたって「寒さが肺に与える悪影響」を研究しているアルバータ大学運動学科のマイケル・ケネディ准教授は、「冬に野外で運動を続けると肺に負担がかかる」と主張しています。
Why winter exercise can be especially hard on the lungs | CBC News
https://www.cbc.ca/news/canada/winter-exercise-lungs-1.5936703
「寒さが肺に与える影響」についてケネディ准教授が興味を持ったのは、大学院生時代にクロスカントリースキーヤーの選手のスキー板にワックスをかけるアルバイトをしていた時だとのこと。ケネディ准教授は、全国大会や春季レースがある3月頃になると、選手がいつも咳込むようになることに気づいたそうです。
ケネディ准教授は2019年に、ウィンタースポーツに精通した16人の男女に外気温15℃の中で5kmのレースをさせる実験を行いました。その結果、被験者全員が「風邪を引いた後に何らかの呼吸器症状が出た」と報告し、ほとんどが慢性的な咳(せき)に悩まされたと述べました。実際に被験者の体を調べてみたところ、被験者16人中9人が気管支収縮または気道狭窄(きょうさく)の症状を示しており、運動誘発性ぜんそくと診断されました。
ケネディ准教授によれば、冷たくて乾燥した空気を吸うことが、ウィンタースポーツのプレイヤーが慢性的に咳込む原因だとのこと。冷たくて乾燥した空気を吸い込むと、肺は刺激されて収縮してしまうと、ケネディ准教授は解説しています。
また、ケネディ准教授はウィンタースポーツ歴が長い、すなわち「寒くて乾燥した状態で運動した時間が長い」人であるほど、肺が刺激に対してより敏感になってしまう可能性を示唆しています。ケネディ准教授は「長年にわたって肺に対して刺激を繰り返すと、肺の自己治癒能力が低下します」と述べました。
マニトバ大学の運動環境医学研究所のゴードン・ギースブレヒト所長も、ケネディ准教授と同じように、冷たく乾燥した空気が肺に負担をかけると指摘しています。ギースブレヒト所長は、収縮した肺で呼吸し続けることを「細いストローを使って深呼吸をしようとするようなもの」と例えました。
ケネディ准教授もギースブレヒト所長も、口をおおうことで空気が暖められ加湿されるため、布製のマスクやネックウォーマー、スカーフなどが有効だと述べています。また、ケネディ准教授は、「運動する前のウォームアップにしっかりと時間をかけ、特に気温が低い日は運動のペースを落とすことが重要」と説いています。
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