インフラストラクチャーの構築を押し進めるには「無能な管理職を取り除く」ことが必要との主張
誰もが必要だと思っているインフラストラクチャーの整備や拡充が、どういうわけか順調に進まず、時には中断に追い込まれてしまうという話は多くの場所で見聞きします。交通機関の研究家であるAlon Levy氏が、インフラストラクチャー構築の主な障壁となっているのは「無能な管理職」にあるとして、プロジェクトを前進させるためには失敗した実績がある管理者を解任するべきだと主張しています。
The Need to Remove Bad Management | Pedestrian Observations
https://pedestrianobservations.com/2021/02/06/the-need-to-remove-bad-management/
管理職としてインフラストラクチャーの整備に関する決定権を握る人物には、行政から任命された上級役人、地元の利益団体の代表者、公共部門のプランナーやコンサルタント、関連する公的機関の役員などが含まれます。これらの人物はインフラストラクチャーの構築において強い発言力を持っていながら、「意思決定者の代理」としてプロジェクトに携わっている関係上、失敗した際の責任を取ることが少ないとのこと。
交通機関の研究家であるLevy氏は、実際にインフラストラクチャーの構築に成功したプロジェクト、あるいは失敗したプロジェクトに携わった人物にインタビューを行い、さまざまな話を聞いてきたそうです。そして、失敗したプロジェクトに携わった管理者の中には、原因について興味深い説明をする人物がいる一方で、「自分たちが間違えたことを認めない人物」も存在し、これらの人物がプロジェクトを失敗に追い込んでしまうと述べています。
Levy氏は、無能な管理職は「世界の他の地域に対する好奇心」が欠如しており、自分以外の存在や知識を信用しない独我論的な人物であると指摘しています。たとえば、ボストンの鉄道路線の電化に反対したある鉄道関係者は、「120年前から運用されている古い路線のため電化には多くのコストがかかり、運行が行われない夜の4時間だけでメンテナンスを行うことは不可能である」と主張しました。ところが、いずれの問題もヨーロッパでは解決されているものであり、この鉄道関係者はヨーロッパの成功事例を研究していなかったとのこと。
また、Levy氏はコネチカット州・ニューヘイブンの活動家がメトロノース鉄道に対し、ディーゼル車両から電気車両への置き換えを訴えた会議の事例も挙げています。この会議では、鉄道会社や州運輸局の管理者らが電化に反対し、既存のディーゼル車両を維持することを主張しました。
この際、管理者らは「ヨーロッパの電気車両を250万ドル(約2億6500万円)で購入するのは不可能」「アメリカでは車椅子の乗客に配慮する法律があるためヨーロッパの車両がアメリカの路線を走ることはできない」といった反対理由を述べました。しかし、いずれの理由も思い込みや誤解に基づくものであり、実際には車両価格は250万ドルもせず、ヨーロッパの車両がアメリカの路線を走ることも可能だそうです。
by Ken
Levy氏は、「人々が何に慣れているのかという問題は重要です」と述べ、権力を持つ管理者の立場にいる人々は何かを変えることを嫌がると指摘。そのため、無能な管理者は自分たちの問題を検討する際に国外の事例を検討・研究することもせず、実際に研究した人が持つ貴重な洞察も評価しないとのこと。
こうした無能な管理者によるインフラストラクチャーの構築が停滞するのを防ぐため、Levy氏は「無能な管理者を取り除く」ことが必要だと訴えています。同様のプロジェクトを実現した成功例から学ぶのではなく、不可能である理由ばかりを探す管理者はプロジェクトにとって有害であり、「独我論者を好奇心旺盛な学習者に、言い訳を専門家に置き換える」ことが重要だと述べました。
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