サイエンス

聖遺物「使徒ヤコブの骨」が別人の骨であることが放射性炭素年代測定で判明


イタリアのローマにあるサンティ・アポストリ教会は、イエス・キリストの十二使徒の聖遺物を収蔵していることから、「聖十二使徒聖堂」とも呼ばれています。そんなサンティ・アポストリ教会にある聖ヤコブの遺骨が、「実は本人のものではない可能性が高い」ことが、最新の科学的調査により判明しました。

Investigations of the relics and altar materials relating to the apostles St James and St Philip at the Basilica dei Santi XII Apostoli in Rome | Heritage Science | Full Text
https://heritagesciencejournal.springeropen.com/articles/10.1186/s40494-021-00481-9

Scientific investigations of the believed remains of two apostles
https://www.sdu.dk/en/nyheder/forskningsnyheder/jesu-apostle-videnskabeligt-undersogt

Bones of St. James the Younger, one of the 12 apostles, belong to someone else | Live Science
https://www.livescience.com/st-james-relic-someone-else.html

南デンマーク大学の考古学者であるカーレ・ランド・ラスムッセン氏らの研究チームによると、西暦380年にキリスト教がローマ帝国の正式な国教になってから、キリスト教の聖人の骨や遺物が各地からローマに集められ、教会に保管されるようになったとのこと。サンティ・アポストリ教会にある遺骨も、使徒でありイエス・キリストの兄弟でもあったともいわれている聖ヤコブの遺骨だと考えられています。

以下は、サンティ・アポストリ教会にあった遺骨の一部です。金色のリングがはめられた環状の物体が、聖ヤコブの大腿(だいたい)骨とされる骨片です。


ラスムッセン氏らの研究チームは、これらの聖遺物の来歴を調べるため、まず遺骨からタンパク質を採取しました。次に、タンパク質からアミノ酸を抽出して放射性炭素年代測定にかけて、遺骨の持ち主が生きていた時代の特定を行いました。

その結果、サンティ・アポストリ教会の遺骨から採取されたサンプルの年代は「西暦214年~340年の間」であることが判明。タンパク質と同時に骨から採取されたコラーゲンでも、同様の結果が得られました。この結果から研究チームは、「遺骨の持ち主はイエス・キリストが生きていた時代の人物ではない」と結論付けました。


ラスムッセン氏は、遺骨の持ち主について「聖遺物は聖ヤコブの骨ではありませんでしたが、不明な点が多い最初期のキリスト教の歴史に光を投げかける発見でした。私たちは、この骨をサンティ・アポストリ教会に奉納した人物は、本物の聖ヤコブの遺骨だと信じていた可能性が高いと考えています。なぜなら、骨の発見状況などから、骨が初期のキリスト教徒の墓から持ち出されたのは間違いないとみられるからです」とコメントしました。

なお、サンティ・アポストリ教会には聖ヤコブと同じく十二使徒の1人だったフィリポの足とされるミイラもありますが、解析前に行う処理が困難なことから、研究チームはフィリポの足の年代測定は断念したとのこと。研究チームは、このミイラも聖ヤコブの遺骨と同様の経緯で教会に持ち込まれたと推測しています。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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