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40万人以上が死亡した鎮痛剤の乱用問題で600億円以上の和解金を大手コンサル企業が支払う


アメリカでは強い依存性がある鎮痛剤・オピオイドの乱用が大きな問題となっており、過去20年間で45万人もの人々がオピオイドの過剰摂取で死亡したといわれています。2021年2月、大手コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニーが、オピオイド系鎮痛剤を製造する製薬大手のパーデュー・ファーマにアドバイスを行って鎮痛剤の乱用を促進したとして、少なくとも5億7300万ドル(約605億円)、最大で6億ドル(約633億円)近くの和解金を支払うことに合意しました。

Attorney General James Delivers More Than $573 Million to Communities Across the Nation to Fight Opioid Crisis | New York State Attorney General
https://ag.ny.gov/press-release/2021/attorney-general-james-delivers-more-573-million-communities-across-nation-fight

McKinsey Settles for Nearly $600 Million Over Role in Opioid Crisis - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/02/03/business/mckinsey-opioids-settlement.html

McKinsey to pay nearly $600 million in settlements over its work with opioid companies - CNN
https://edition.cnn.com/2021/02/04/business/mckinsey-opioid-settlement/index.html


強力な鎮痛作用を持つオピオイド系鎮痛剤にはケシから採取される麻薬成分が入っているため、乱用や過剰摂取に走る患者が後を絶ちません。医師から処方される合法のオピオイドにより、法律で厳しく取り締まられているヘロインやコカインよりも多くの人がオーバードースで死亡しているとのこと。

オピオイド系鎮痛剤の乱用が大きな問題となっているアメリカでは近年、オピオイドに依存性があることを理解していながら販売を続けて利益を上げていた製薬会社に対する追及が進んでいます。調査の中で製薬会社から医師への利益供与があったことや、オピオイドの処方を後押しする電子医療システムの開発のために製薬会社がIT企業に報酬を渡していたことが判明しています。

2019年には裁判所が製薬会社のジョンソン・エンド・ジョンソンに対して600億円の支払いを命じたほか、2020年には医師に賄賂を渡してオピオイドを過剰に処方させた製薬会社・インシス・セラピューティクスのCEOに対し、禁錮5年6カ月の判決が下されました。

依存性のある鎮痛剤を不要な患者に処方させるため医師に賄賂を送っていた製薬会社CEOに禁錮5年6カ月の判決 - GIGAZINE


そして2021年2月には、「オピオイド系鎮痛剤のオキシコドン(オキシコンチン)を製造していたパーデュー・ファーマにアドバイスを行ってオキシコンチンの販売を促進した」として、大手コンサルのマッキンゼー・アンド・カンパニーが、アメリカの47州や5つの海外領土、そしてワシントンD.C.との和解に応じたと発表されました。この和解によってマッキンゼー・アンド・カンパニーは5億7300ドルを支払うほか、さらに数千万ドルの支払いにも合意しているとのことで、支払い総額は6億ドルに達するとみられています。

パーデュー・ファーマはオキシコンチンについて、「その他の薬剤と比較して致命性や乱用性、依存性が低い」と主張するキャンペーンを行って売上を伸ばしました。ところが、実際のところオキシコンチンは乱用や依存のリスクが高い薬剤であり、2007年には「誤解を招くようなブランド戦略を行った」として、パーデュー・ファーマには6億ドル(当時のレートで約700億円)の罰金が科されています。


ところがマッキンゼー・アンド・カンパニーは、こうした事態が発生してオキシコンチンの危険性を認識した後も、パーデュー・ファーマに対し「収益性の高いオキシコンチンの販売に注力するべき」「医師のターゲティングと処方者への具体的なアドバイスを通じてオキシコンチンの売上を伸ばすことができる」とアドバイスを行っていたとのこと。また、他のオピオイド系鎮痛剤を製造するメーカーと結託することで、アメリカ食品医薬品局(FDA)からの厳しい対応を逃れられるともそそのかしたそうです。

マッキンゼー・アンド・カンパニーへの調査を最初に始めたマサチューセッツ州の司法長官であるMaura Healey氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーの不正行為に関する無数の文書やメールがあるとして、「オピオイドの流行を作り出して利益を得た者には常に説明責任があります」と述べました。


今回の和解では、マッキンゼー・アンド・カンパニーが不正行為をしたと認めるわけではないものの、今後は5年間にわたり電子メールを保持し、州の契約に入札する際には潜在的な利益相反を開示する必要があるとのこと。和解金のうち4億7800万(約505億円)ドルは60日以内に支払わなくてはならず、支払われた和解金はオピオイド危機の影響に苦しんでいる地域社会を支援するために使用される予定です。

マッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバルマネージングパートナーであるKevin Sneader氏は、「私たちはコミュニティにおけるオピオイドの流行がもたらす悲劇的な結果について、十分に認識できていなかった点を深く後悔しています。今回の合意により、私たちがアメリカにおけるオピオイド危機の解決策の一部になることを願っています」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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