なぜ炎は熱いのか?
「ものが燃える」とは、可燃物が酸素と反応して生じる激しい酸化反応のことを指します。有機分子が燃える際には「例外なく熱を発する」という事実について、ブランダイス大学のKlaus Schmidt-Rohr氏が説明しています。
Why Combustions Are Always Exothermic, Yielding About 418 kJ per Mole of O2 | Journal of Chemical Education
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jchemed.5b00333
炎が人の社会的進化に急激な影響を与えたという説も唱えられるほど、炎は人類において重要な意味を持っています。大人から子どもまで「炎が熱を発する」というのは常識ですが、「そもそもなぜ炎が熱を発するのか?」については、教科書どころか技術文献にも説明がないとSchmidt-Rohr氏は指摘しています。
炎が発する熱を知る方法の1つが「生成熱から燃焼反応のエネルギーを割り出す」というものです。しかし、生成熱は実際の燃焼反応から計測された燃焼熱から算出される数値であるため、Schmidt-Rohr氏は「生成熱から燃焼反応のエネルギーを割り出す試みは循環論法に当たり、何の説明にもなっていません」と述べています。
Schmidt-Rohr氏によると、炎が熱を発する理由とは、「酸素分子(O2)内の二重結合が異常なまでに結合強度が弱い」ため。実際に、O2内の二重結合の結合解離エネルギーは498kJ/molである一方、単結合であるH-H結合の結合解離エネルギーは436kJ/mol、C−H結合は410kJ/mol、C-C結合は350kJ/molと、O2内は二重結合であるにも関わらず結合解離エネルギーが単結合よりもわずかに上回る程度です。Schmidt-Rohr氏は500種以上の有機化合物の燃焼を比較することで、燃焼に用いられる有機化合物によらず、O2が1mol反応するごとに、およそ418kJの熱量が放出されると算定しています。
このように、燃料などの有機物の分子構造が分からなくても、元素組成さえ分かればその燃焼熱が推定できることから、Schmidt-Rohr氏は「炭化水素やエタノール、水素、グルコースなどの燃料はしばしば『エネルギーに富む』といわれますが、実際には酸素分子こそエネルギーに富む分子だといえます」と述べました。その上で、Schmidt-Rohr氏は「炎はなぜ熱いのか?」という重要な問いについて、「O2の二重結合が他の二重結合と比較して異常に弱いため、より強い結合を持つ水(H2O)や二酸化炭素(CO2)などの分子が燃焼で発生すると、それらの分子のポテンシャルエネルギーが減少します。これが、熱の放出や気体分子の熱運動の増加、つまり炎の熱さにつながります」と説明しています。
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