格闘技の判定勝ちは「とにかくたくさん攻撃を繰り出した方が有利」と判明
ボクシングやレスリング、総合格闘技(MMA)などの格闘技では、相手を打ち倒す「ノックアウト」の他に、「判定」で勝敗を付けることがよくあります。プリマス大学生物海洋科学部の研究チームが、人間はスポーツの勝敗を判定する時、「どれだけ正確に攻撃しているか」という技術よりも「どれだけ積極的に攻撃しているか」というモチベーションを重視しがちだという研究結果を発表しました。
Perceived and actual fighting ability: determinants of success by decision, knockout or submission in human combat sports | Biology Letters
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2020.0443
Judges' decisions in sport focus more on vigour than skill
https://phys.org/news/2020-10-decisions-sport-focus-vigour-skill.html
プリマス大学の研究チームは、アメリカの総合格闘技団体・Ultimate Fighting Championship(UFC)で2019年2月から2020年3月までに開催された、のべ550人の選手による試合のデータを分析。試合のデータには相手にしっかりヒットした攻撃の割合、1秒あたりに繰り出された攻撃の頻度、試合結果などが含まれていました。
もちろん格闘技では、相手にしっかりと攻撃をヒットさせる精度が高ければ、ノックアウトなどで勝利する確率は上がります。しかし、分析の結果から、勝敗がなかなか決まらず判定に持ち込まれた場合、判定員は攻撃の精度よりも攻撃の頻度を重視することがわかりました。
つまり、判定勝ちの審判員は「相手にいかに正しく攻撃を叩き込むか」よりも「どれだけ相手に攻撃を繰り出したか」を重視しがちであることが判明したというわけです。
研究チームの1人で論文の筆頭著者であるサラ・レーン氏は「私たちの研究から、試合の判定員は攻撃スキルよりも攻撃のモチベーションを評価しやすいことが示唆されました。MMAはペースの早いスポーツですが、戦っている選手の片方が早く疲れてしまい、攻撃回数に大きな差が生まれてしまった場合、この差が判定を下す際に大きく評価されることになってしまいます」と説明しています。
また、レーン氏は「現代はその場ですぐに試合の録画を再生できるように技術が進歩しており、将来的に攻撃精度が攻撃回数よりも判定に影響を及ぼす可能性もありますが、しばらくは攻撃回数が判定勝ちのための最も重要なパフォーマンス特性であるといえます」と述べています。
人間の格闘技は、参加者と観察者の両方がスキルやモチベーションなどのパフォーマンス特性をどのように認識しているかを調査できるユニークな対象です」とコメント。
ブリファ氏はさらに「動物は将来の交尾相手を選んだり、敵対する相手を避けたりするために、相手の戦闘能力を観察して評価しているということがわかっています。人間が戦闘能力を評価する上で、攻撃回数を重視するという傾向は、他の動物でも見られる可能性があるといえます」と論じました。
・関連記事
ジャッキー・チェンが格闘技のコツをちょっとだけ教えてくれるQ&Aムービー - GIGAZINE
ブルース・リーの格闘戦略は「OODAループ」で説明できる - GIGAZINE
400人の孤児に格闘技術をたたき込んで過酷な戦いをさせる中国のMMAクラブとは? - GIGAZINE
新日本プロレスのアメリカ進出興行「G1 Special in USA」がTwitterトレンド全米1位を獲得する大成功 - GIGAZINE
プロレスの「お約束」や「ストーリー」とは何なのかを解説したムービーが公開中 - GIGAZINE
・関連コンテンツ