MicrosoftのAIが「高品質のチートス」を製造するために活用されようとしている
by Mike Mozart
ペプシコのお菓子ブランド・フリトレーが製造・販売するスナック菓子の「チートス」は、世界40カ国以上で販売される人気のお菓子です。ペプシコはチートスの品質を保つプロセスを効率化するため、Microsoftの産業向けAI開発プラットフォーム・Project Bonsaiを用いています。
Microsoft Customer Story-PepsiCo leverages AI to create an intelligent monitoring system that improves Cheetos consistency
https://customers.microsoft.com/en-us/story/858753-PepsiCheetos
AI-Enabled Cheetos Offer the Promise of the Perfect Puff
https://eminetra.co.za/ai-enabled-cheetos-offer-the-promise-of-the-perfect-puff/117380/
多くの人はチートスを食べる時にいちいち形状や密度に注意を払わないかもしれませんが、工場ではチートスの品質を一定に保つために製造プロセスを監視しています。チートスの製造には材料や水の配合、生地の切断といったさまざまな工程が必要であり、複数のプロセスのうちどこかに異常があればチートスの品質が落ち、出荷できなくなってしまうとのこと。
ペプシコは数年前からさまざまな事業にAIを導入する動きを進めており、この取り組みの一環としてチートスの品質チェックにMicrosoftのProject Bonsaiソリューションを導入することにしました。Project Bonsaiは産業用に開発されたAI開発プラットフォームであり、エンジニアがデータサイエンスの高度な知識を持っていなくても、テンプレートと直感的なエクスペリエンスを通じてAIを作成できるそうです。
AIを開発するには訓練に必要なトレーニングデータを収集する必要がありますが、いきなり実際の製造プロセスを用いてAIを訓練することは、安全性や生産スケジュールの問題から不可能でした。そこで開発者は現場で品質管理を行うオペレーターと協力し、製造ラインを可能な限り忠実に再現するシミュレーターを構築したとのこと。このシミュレーターを用いてAIを訓練し、その過程でもオペレーターによるフィードバックを取り入れて学習効率を上げたと開発者らは述べています。
また、製造プロセスをAIが制御する際に極端な動作をしないように、開発者は専門家からの指示に基づいたいくつかの安全ルールをAIにプログラムしました。実際の現場に即したルールを設けることで、AIが材料を型に押し込む速度などを段階的に調整するようになり、押し込み速度の急変によってマシンが損傷するといったリスクが減るとのこと。こうした制限をAIに取り入れる上で、現場を知るオペレーターの存在が重要だとMicrosoftは指摘しました。
シミュレーションを繰り返して開発されたチートスの品質監視AIソリューションには、「推奨モード」と「閉ループ制御モード」の2種類のモードがあります。どちらのモードでもAIは継続的にチートスの品質を測定し続けますが、推奨モードでは品質が基準から外れるとオペレーターに警告し、品質を戻す上で必要と思われる調整を「推奨」します。オペレーターはこの推奨内容を見て、マシンにどのような調整を行うかを決定します。一方、「閉ループ制御モード」ではオペレーターに対する推奨プロセスをスキップし、製造プロセスの仕様を直接調整するとのこと。
これまでの製造プロセスでは、オペレーターが一定の間隔でチートスをサンプリングして品質を測定し、問題があればマシンの仕様を調整するという仕組みでした。この方法ではサンプリングの頻度に制限があるため、前回のチェックから最新のチェックまでの間に、品質が基準に満たないチートスを長時間製造し続けてしまう可能性があります。一方、AIソリューションは継続的な品質の監視が可能なため、品質が基準を外れるとすぐに対応することが可能です。
今後、ペプシコはProject BonsaiのAIソリューションを製造工場に導入する予定であり、トルティーヤチップスを含むチートス以外の製造プロセスにも、同様のAIを適用する方法を模索しているとのこと。ペプシコの上級主幹エンジニアであるSean Eichenlaub氏は、「チートスの成形ラインは私たちの原理実証でした」「これは製造プロセス制御の未来です。私たちはAIベースの自動化を使用して、製品の一貫性を向上させています」とコメント。
また、ペプシコのグローバル食品研究開発担当副社長のDenise Lefebvre氏も、「私たちの最も愛されているブランドの1つであるチートスは、22カ国で製造されており50種類以上のフレーバーがあります。Project Bonsaiテクノロジーはそれぞれのチートスが完璧であることを保証する役に立ち、この可能性に興奮しています」と述べました。
by Mike Mozart
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