生き物

イヌは人間が話す単語の細かい違いを理解できないことが判明


イヌは古くから人間のパートナーとして世界各地で飼われてきた動物であり、ペットとしてかわいがられているだけでなく、盲導犬や麻薬探知犬など人間の役に立つ賢いイヌもいます。ところがハンガリーの研究チームが行った新たな研究により、「イヌは人間が話す単語の細かい違いを理解できない」ことが判明しました。

Supplementary material from "Event-related potentials reveal limited readiness to access phonetic details during word processing in dogs"
https://figshare.com/collections/Supplementary_material_from_Event-related_potentials_reveal_limited_readiness_to_access_phonetic_details_during_word_processing_in_dogs_/5221448

Dogs may never learn that every sound of a word matters
https://phys.org/news/2020-12-dogs-word.html

Dogs will never speak human. Here's why. | Live Science
https://www.livescience.com/dogs-word-processing.html

Pet dogs and babies share one frustrating trait, study reveals
https://www.inverse.com/science/dogs-babies-share-one-frustrating-trait


イヌは高い社会的認知能力やコミュニケーション能力を持っており、人間の指示を聞いてある程度の協調作業を行うことも可能です。しかし、一般的にイヌが認識できる人間の言葉はそれほど多くはないため、人間とイヌがまるで会話するように意思を疎通させることはできません。

イヌが優れた聴力を持っているにもかかわらず人間の言葉を十分に理解できない理由について、「イヌが人間の言葉を処理する脳の活動にヒントがあるのではないか」と考えたハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームは、人間の言葉を聞くイヌの脳波を電極で測定する実験を行いました。


実験では17頭のイヌを飼い主と共に研究室に誘導し、イヌが部屋や研究者に慣れてから飼い主と一緒にマットレスに座らせて、イヌがリラックスしてから頭部に電極を装着したとのこと。論文の筆頭著者であるLilla Magyari氏は、「脳波検査は脳の活動だけでなく筋肉の動きにも敏感です。そのため、測定中はイヌの筋肉活動をできるだけ少なくする必要がありました」とコメントしています。

また、実験に参加したイヌはいずれも特別な訓練を受けておらず、中にはじっと落ち着いてくれずに実験が上手く行えなかったイヌもいたそうです。しかし、訓練されていないイヌでも実験の離脱率は想定ほど多くなく、人間の乳児を対象にした実験と同レベルの離脱率しかなかったとMagyari氏は述べています。


続いて研究チームは、イヌに「sit(座る)」のような知っている単語や、「sut」のように知っている言葉に似ているけれど微妙に違う単語、そして「bep」のように全く似ていない単語を聞かせ、認知や思考の結果として現れる事象関連電位を測定しました。

実際に電極を取り付けられたイヌがさまざまな単語を聞く実験の様子は、以下のムービーで見ることができます。

Dogs may never learn that every sound of a word matters - YouTube


単語はいくつかの音によって構成されており……


どこか1つの音が変化すると全く違う意味の単語になったり、意味がない単語になったりします。


イヌは一生のうちに多くの単語を飼い主やその他の人々から聞かされますが、学習できる単語の数は多くありません。


この理由について調べるため、研究チームはイヌと飼い主を研究室に招き、リラックスさせてから電極を取り付けて実験を行いました。電極はテープで取り付けられたため、イヌが傷つくことはなかったとのこと。


電極を取り付けられたイヌは、「知っている単語」「知っている言葉に似ているけど1つの音だけ違う単語」「全く違う単語」の3つを聞かされ、それに反応する脳波を測定されました。


それぞれの単語について脳波を調査したところ……


イヌは「知っている単語」と「全く違う単語」をちゃんと識別できることが判明。イヌは聞き始めてからわずか200ミリ~300ミリ秒後にそれぞれの単語を識別し、人間と同等の識別速度を持つことが示されたとのこと。


ところが、「知っている単語」と「知っている単語に似ているけど1つの音だけ違う単語」の場合、イヌは両者をはっきり識別していないことがわかりました。これは、イヌがいくつかの単語を大まかに識別できるものの、単語全体がどのように聞こえるかについて、それぞれの音にまで詳細に注意を払っているわけではないことを示唆しています。


このパターンは生後14カ月未満の人間の乳児と類似していると研究チームは指摘。乳児は生後数週間のうちに言葉を理解できるようになりますが、最初のうちは各単語の詳細な違いを識別することができないそうです。乳児が単語を構成するそれぞれの音を詳細に識別できるようになるのは生後14カ月~20カ月ごろのことであり、これは乳児が多くの語彙(ごい)を獲得する上で重要な変化だとのこと。


研究チームのAttila Andics氏は、「人間の乳児の場合と同様に、知っている命令の言葉と似ている単語に対するイヌの脳活動の類似性が、知覚的な制約ではなく注意力や処理のバイアスを反映していると推測されます。イヌは言葉を聞く時に音声全ての詳細に注意を払っていないのかもしれません。今後の研究では、これがイヌの語彙力を低下させる原因かどうかが判明する可能性があります」と述べました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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