ZFS on Linuxから新生した「OpenZFS 2.0」リリース、pL2ARCやZstandard圧縮などを搭載
2020年12月1日、サン・マイクロシステムズによって開発されたファイルシステム・ZFSのオープンソース実装「OpenZFS 2.0」がリリースされました。プロジェクト名を「ZFS on Linux」から「OpenZFS」へと変更したメジャーアップデートで、LinuxとFreeBSDのサポート統合やL2ARCの永続化(pL2ARC)、Zstandard圧縮といった新機能を搭載しています。
Release OpenZFS 2.0.0 · openzfs/zfs · GitHub
https://github.com/openzfs/zfs/releases/tag/zfs-2.0.0
(PDF)OpenZFS DevSummit 2019
https://drive.google.com/file/d/197jS8_MWtfdW2LyvIFnH58uUasHuNszz
ZFSはSolarisで採用されていたUnix File Systemの後継で、スナップショットやコピーオンライト、RAID機能を搭載した先進的なファイルシステム。ZFSのオープンソース実装はライセンスの問題からLinuxカーネルにマージすることができず、外部のカーネルモジュール「ZFS on Linux」として開発されてきた経緯があり、今回のメジャーアップデートと同時に「OpenZFS」へと名称が変更されました。
サポートするOSは、Linux 3.10~5.9、FreeBSD 12.2、stable/12、13.0となっており、OpenZFS 2.0からはLinuxとFreeBSDをサポートするリポジトリが統合されています。OpenZFS 2.0で追加された主な機能は以下の通り。
・連続的な再同期処理:従来の再同期処理と比較して、破壊されたミラーリング仮想デバイス(vdev)の再構築が高速になりました。
・永続的なL2ARC:ZFSはキャッシュ機能のL2ARCを利用して読み込み速度を向上させることができますが、従来のL2ARCはPCの電源を落とすとデータが消失する揮発性のものでした。OpenZFS 2.0からは、再起動後もデータを保持できる永続的なL2ARCが搭載されており、キャッシュのウォームアップ時間を短縮できるとされています。
・Zstandard圧縮:GZIPやLZ4、ZLEといった圧縮方式に加えて、Facebookが開発した高パフォーマンスな圧縮形式「Zstandard」を利用できるようになりました。
・zfs send/receiveを行う際のストリーム編集機能:zfs send/receiveでデータの送受信を行う際にデータストリームを編集し、不要なデータや機密情報を除外して送信できる機能が加わりました。
・コマンドのパフォーマンス改善、変更:zfsコマンドのパフォーマンスが改善され、一部オプションについて変更が行われています。
ZFSはUbuntu 20.04 Desktopで試験的ながらもrootパーティションとして利用することが可能になるなど、Linuxでの利用が進んでいます。しかし、Linux開発者のリーナス・トーバルズ氏はZFSをLinuxカーネルにマージしない姿勢を取っており、LinuxカーネルはZFSをサポートしていません。その理由はZFSの従うライセンスがLinuxと同じGNU GPLではなく、サン・マイクロシステムズによって規定されたCDDLであるため。LinuxでZFSを利用する場合は、外部のモジュールであるZFS on Linuxを利用する必要がありました。
ZFS on Linuxと同じくオープンソースのZFS実装として知られていたOpenZFSは、illumosというSolaris系のOS開発を通じて多数の改善がなされ、FreeBSDなどに組み込まれていました。
しかし、illumosにおけるZFS開発の大部分を担っていたDelphixが自社OS「DelphixOS」のZFS開発ベースをillumosからZFS on Linuxへと移行したため、OpenZFSプロジェクトは停滞。illumosやFreeBSDでは、ZFS on LinuxをベースとしたZFS開発が進められていました。
そうした流れを受けて、ZFS on LinuxはFreeBSDのサポートを行うと同時に、プロジェクト名称を「OpenZFS」へと変更した、というのが今回のメジャーリリースのいきさつ。なお、2021年に予定されているメジャーアップデート「OpenZFS 3.0」では、macOSのサポートが目標とされています。
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