アート

絶滅した巨大動物などが描かれた1万2000年前の壮大な壁画がアマゾンの熱帯雨林で発見される

by Marie-Claire Thomas/Wild Blue Media

コロンビア南東部に位置するアマゾンの熱帯雨林で、およそ1万2000年前に先住民が描いた膨大な数の壁画が発見されました。3つの遺跡にまたがる壁画は合計で数万点に及び、その中にはすでに絶滅した巨大動物の姿も描かれていると研究者らは報告しています。

Colonisation and early peopling of the Colombian Amazon during the Late Pleistocene and the Early Holocene: New evidence from La Serranía La Lindosa - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1040618220301907

Research news - Newly discovered Amazon rock art show the rainforest’s earliest inhabitants living with giant Ice Age animals - University of Exeter
https://www.exeter.ac.uk/news/research/title_829032_en.html

Sprawling 8-mile-long 'canvas' of ice age beasts discovered hidden in Amazon rainforest | Live Science
https://www.livescience.com/ice-age-rock-art-amazon.html

'Sistine Chapel of the ancients' rock art discovered in remote Amazon forest | Archaeology | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2020/nov/29/sistine-chapel-of-the-ancients-rock-art-discovered-in-remote-amazon-forest


イギリスとコロンビアの合同研究チームが調査したのは、コロンビア南東部にあるチリビケテ国立公園内の、アマゾン川の北端に当たる遺跡です。チリビケテ国立公園の一帯は武装した反政府ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)の拠点となっており、危険のため長らく立ち入り調査ができませんでしたが、2016年にコロンビア政府とFARCが内戦の終結に合意したことを受け、2017年から遺跡の調査を始めたとのこと。

研究チームが発見した遺跡は張り出した岩盤を屋根代わりに利用した岩陰遺跡であり、発掘調査で見つかった骨や植物の残骸などから、遺跡に住んでいた先住民はヤシや果物、ピラニア、ワニ、ヘビ、カエル、カピバラ、アルマジロなどを食べていたことがわかっています。先住民はアマゾンに到達した初期の人々であると考えられており、狩猟採集生活を送っていたと見られています。

そして先住民は、3つの岩陰遺跡にまたがる全長およそ8マイル(約13km)の岩壁をキャンバスとして、顔料に黄土を用いた数万点に及ぶ壁画を描いたことも判明しています。壁画の規模が非常に大きい点から、研究チームは壁画が数世代~数十世代にわたって描かれたと予想しているそうです。

これまでの調査で確認された図柄は非常に多様であり、幾何学的な模様や人物、手形、植物に加え、シカ・バク・ワニ・コウモリ・サル・カメ・ヘビ・ヤマアラシといった小型の動物、さらに絶滅したラクダ科動物・巨大ナマケモノ・ウマ・マストドンなどの巨大動物の姿も描かれていました。南アメリカでは1万2000年前に絶滅したとされるマストドンの姿が描かれているといった点から、壁画は1万2600年~1万1800年前に描かれたとみられています。

by Ella Al-Shamahi

エクセター大学の考古学者であり壁画の調査に参加したマーク・ロビンソン氏は、「これはアマゾン西部に住んだ初期の人々によって描かれた、本当に素晴らしい絵画です。彼らは、植生と森林構成の変化を引き起こした極端な気候変動の時期にこの地域へ移り住みました」とコメント。壁画が描かれたのは最終氷期が終わりかけていた時期であり、当時は壁画のある一帯が熱帯雨林に覆われておらず、サバンナのような平原や森が混在する風景だったとみられています。

この気候変動や人間による狩猟の影響によってマストドンなどの大型動物は絶滅したとされており、壁画に描かれた動物の姿は当時の様子を伝える貴重な手がかりとなるとのこと。「絵画は先住民のコミュニティの生活を鮮やかで刺激的に見せてくれます。今日の私たちにとって、彼らが小型車ほど大きな草食動物に囲まれて暮らし、狩りをしていたとは驚きです」と、ロビンソン氏は述べました。

絵画には動物を狩る人間の姿だけでなく、大きな動物の周囲で手を挙げて崇拝しているかのように見える様子や、鳥のようなクチバシがあるマスクを着用した人の姿など、人間と動物の相互作用も描かれています。壁画の一部は人間の背よりも高い場所に描かれており、研究チームは壁画の中に見られる「バンジージャンプの台のような木組みの塔」を使い、岩壁の高い部分に絵を描いたと推測しています。

by Marie-Claire Thomas/Wild Blue Media

壁画には幻覚を誘発する植物の絵もあったそうで、先住民がさまざまな儀式を行った形跡もうかがえるとのこと。エクセター大学の考古学者であるホセ・イリアルテ氏は、アマゾンの人々は人でない動植物にも魂があると考えており、壁画に見られるような儀式やシャーマニズムを通してコミュニケーションを図っていたと主張しています。

イリアルテ氏は、「これらの壁画は人々がどのように土地に適合し、狩猟や耕作、漁業を行ったかを示す壮大な証拠です。芸術は文化の強力な一部分であり、人々が社会的につながる方法だったようです」と述べました。

by Marie-Claire Thomas/Wild Blue Media

なお、コロンビアの現地メディアは、エクセター大学が新たに発見したと主張する壁画は数十年前から知られていると指摘。「新発見」という見出しは海外メディアの誇大広告だと反論しています。

El polémico “descubrimiento” de pinturas rupestres en Guaviare | EL ESPECTADOR
https://www.elespectador.com/noticias/medio-ambiente/el-polemico-descubrimiento-de-pinturas-rupestres-en-guaviare/

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in サイエンス,   生き物,   アート, Posted by log1h_ik

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