サイエンス

4万4000年前に描かれた壁画には人類最古の「物語」が記録されている可能性


インドネシアのスラウェシ島にある洞窟で発見された、約4万3900年前に描かれたとされる壁画について、「『架空の物語』を記録したものとしては地球上で最古のものであるかもしれない」とグリフィス大学の考古学者マキシム・オーベール氏率いる研究チームが発表しました。

Earliest hunting scene in prehistoric art | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1806-y

A 43,900-year-old cave painting is the oldest story ever recorded | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/12/a-43900-year-old-cave-painting-is-the-oldest-story-ever-recorded/

壁画では、濃い赤で描かれた小さな狩人(Ther)が、アノアと呼ばれる水牛(Anoa)や豚(Pig)と向き合っています。壁画の端には、古代の芸術家がサインしたかのような手形(Hand stencils)がありました。


壁画に堆積した鉱物から、壁画は少なくとも4万3900年前に描かれたものと推定されています。槍などの武器を持った狩人が集団で獣と戦っている絵は、一見すると狩猟の記録を記しているように思われますが、オーベール氏らの研究チームは「壁画は狩猟の記録以上のものを意味している」と推測しました。

「壁画の大部分は、現実に起きた出来事ではない可能性があります」とオーベール氏は述べています。壁画に描かれた狩人は人間の容姿とはかけ離れ、動物の口や鼻を連想させる奇妙に細長い顔や、尾やくちばしがあるように見える狩人も描かれていることから、半人半獣の狩人ではないかという見方もされています。


さらに、狩人と戦う獣も現実とかけ離れた容姿をしています。約4万3900年前、アノアの身長は約100cm、インドネシアに生息していた野生の豚の身長は約60cmと考えられています。しかし、壁画に描かれた動物は、狩人よりも何倍も大きく描かれていることから、壁画は現実のものではなく「架空の物語」を描いたものであると推測されています。


壁画が発見された洞窟の周辺では、石器や骨、火の跡など、人間が生活していた痕跡が発見されませんでした。また、洞窟が谷底から約20m上の崖に位置し、人間が簡単には出入りできない場所にあったことから、オーバート氏らは、壁画が発見された洞窟は、周辺に住んでいた人々にとって神聖、または重要な場所であった可能性があったと推測しました。


壁画に描かれた狩人や巨大な獲物が何を意味するのか、壁画がスラウェシの人々にとってどんなものであったかを明確に知る方法はありません。当時の指導者が描いた未来像や、当時の人々が信じていた伝説を記していたという説、人間と動物、または捕食者と被食者の関係について重要な何かを伝えていたという説も考えられます。

最も有力なのは、「壁画が描かれた当時は、人類が物理的に存在しない自然の力について考え、話す能力が発達する段階にあったことを示唆している」という仮説です。見たことがあるものだけでなく、巨大な野生動物など、誰も見たことのないものについて説明して想像するためには、当時の人類が「フィクションの概念が生まれる段階」に進化している必要があります。オーバート氏は「架空の物語を生み出す能力の進化は、人類の言語および認知の進化における最も重要な段階であったかもしれない」と述べました。


この説は、かつて一部の人類学者が提唱していた「芸術や神話といった物語が、ヨーロッパを起源として世界に広がった」という説が間違いであるということを示しています。世界最古の洞窟壁画はスペインのネアンデルタール人が約6万5000年前に描いたとされる抽象画ですが、何らかの絵であることが明らかに分かる最古の壁画は、約4万年前に描かれたカリマンタンの牛の絵とされています。スラウェシ島にある別の洞窟で豚を描いた壁画も、約3万5400年前の時に描かれたと推測されています。

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by Erich Ferdinand

スラウェシ島の洞窟内では、少なくとも242の壁画が発見されていますが、記事作成時点で多くは未調査のままであるため、調査が進めばより古い壁画が発見される可能性もあるとのこと。オーバート氏は「我々はスラウェシ島と、より広い地域をさらに探求し続けます」と語りました。

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in サイエンス,   アート, Posted by log1m_mn

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