サイエンス

レム睡眠とノンレム睡眠では「見る夢の内容」が違うとの研究結果


寝ている時に見る夢の中には、情景がはっきりとしてまるで映画のような物語を伴ったものもあれば、一瞬を切り取ったショートムービーのように前後関係がないものもあります。目を覚ました直後の人に尋ねて聞き取った夢の内容を分析した新たな研究により、レム睡眠ノンレム睡眠の違いによって見る夢の内容が変わることが示されました。

Structural differences between REM and non-REM dream reports assessed by graph analysis
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0228903

Word graph analysis confirms that dream report structure varies according to sleep stage | AGÊNCIA FAPESP
https://agencia.fapesp.br/word-graph-analysis-confirms-that-dream-report-structure-varies-according-to-sleep-stage/34395/

Your Dreams Are More Complex Depending on What Stage of Sleep You're In, Study Finds
https://www.sciencealert.com/the-complexity-of-our-dreams-changes-with-our-stage-of-sleep-reveals-analysis


20世紀には「夢を見るのはレム睡眠の時だけ」といわれたこともありましたが、近年ではノンレム睡眠の時でも夢を見ることがわかっています。夢について調べている研究者はさらに踏み込んで、レム睡眠の時に見る夢とノンレム睡眠の時に見る夢の違いについて明らかにしようと試みています。

レム睡眠とノンレム睡眠の際に見る夢の内容については、それぞれの睡眠段階にある人を無理矢理起こし、「今どんな夢を見ていたのか?」と尋ねるという手法で調査されています。いくつかの研究では、レム睡眠中に目覚めた人は一般的に「鮮やかで精巧かつ感情的な、物語に似た夢」を報告する傾向があった一方で、ノンレム睡眠中に起きた人は夢の内容をあまり覚えておらず、物語よりも思考に近い内容の傾向があると示されています。

しかし、この調査結果はいずれも被験者の主観的な報告に基づいたものであり、睡眠の段階による夢の違いに関する定量的な測定は行われてこなかったとのこと。そこでブラジルや南アフリカ、ドイツの研究者によって構成された研究チームは、被験者が夢について説明した言葉をグラフ化するツールを開発し、文章の長さや言語のバイアスを抑えて夢の内容について客観的に分析する研究を行いました。


研究チームが今回の研究で利用したのは、2013年に南アフリカのケープタウン大学で行われた、22人の大学生を対象にした夢の聞き取り調査のデータです。この調査は、被験者らに研究所の一室で数日間にわたって寝泊まりしてもらい、被験者の睡眠段階を観察しながら、レム睡眠とノンレム睡眠のいずれかで被験者を起こし、さっきまで見ていた夢の内容について聞き取るというもの。なお、被験者の睡眠段階は脳波や眼球運動に基づいて診断されたとのこと。

実験全体で198回もの中途覚醒および聞き取り調査が実施され、そのうち146回で夢の内容を聞き取ることに成功しました。今回の研究チームはこのデータを基にして、報告全体の単語数が30個を下回った13件を除外し、合計で133件の「レム睡眠またはノンレム睡眠中に見た夢のレポート」を抽出しました。

これまでの研究は、被験者が報告した単語の意味を分析することに依存していましたが、今回の研究では単語をグラフ化して各単語のつながりなどを分析。すると、レム睡眠中の夢がノンレム睡眠中の夢と比較してはるかに複雑であり、各単語の接続がより強いという傾向が報告の語数とは無関係にみられたとのこと。対照的に、ノンレム睡眠中の夢は短く、印象が薄く、より思考に近いものだったそうです。


睡眠の段階がレム睡眠とノンレム睡眠に分かれている理由は、今のところよくわかっていません。しかし、今回の研究が示唆するように睡眠段階によって夢の内容が違う場合、レム睡眠とノンレム睡眠が生物の体で別個の役割を果たしており、根本的なメカニズムが異なる可能性があるとのこと。

論文の筆頭著者であるJoshua Martin氏は、「今回の研究はグラフ理論を使用して、レム睡眠中の夢のレポートがノンレム睡眠中の夢のレポートと比較して、より構造的なつながりがあると示した最初の研究です」とコメントしています。

また、研究チームのNatalia Mota氏は、「私たちは言葉の意味を分析したのではありません。被験者が何を言ったのかではなく、被験者が言った方法について扱っています」と述べ、定量的な測定には従来の研究とは違う意義があると主張。意味ではなくグラフ理論に基づいたアプローチを行うことで、言語によるバイアスを避け、あらゆる種類の文化と国を対象にした調査が行うことができるとMota氏は述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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