サイエンス

「核融合発電」が実現に向けて大きな一歩、レーザー核融合が中間マイルストーンに近づく


核融合発電はクリーンなエネルギーを作り出す未来の技術と言われてきましたが、近年はその研究開発に大きな進展がみられます。レーザーを使った核融合発電の中間マイルストーンは「プラズマの燃焼」にあるといわれていますが、アメリカの国立点火施設(NIF)が新たに、この中間マイルストーンに到達しつつあると発表しました。

Laser fusion reactor approaches ‘burning plasma’ milestone | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2020/11/laser-fusion-reactor-approaches-burning-plasma-milestone


2020年時点において、地球上のエネルギーはほぼ化石燃料によってまかなわれていますが、化石燃料は有限であることに加え温室効果ガスを多く排出するため、代替となる持続可能エネルギーの開発が急がれています。この可能性の1つとして考えられているのが核融合エネルギーです。

核融合エネルギーは水素やヘリウムのように軽く小さな原子核を持った原子や同位体の原子核同士を融合することで得られるエネルギーを言います。そして核融合発電は大きく分けると、強い磁力線を発生させてプラズマを閉じ込める「磁場閉じ込め方式」と、強力なレーザーを燃料に照射することで核融合を起こさせる「慣性閉じ込め方式」が存在します。複数の研究機関がこれら方法での開発を進めており、フランスで建設予定の国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」は磁場閉じ込め方式を採用していますが、建造は開始したもののまだ目標とするエネルギー効率の実現には遠いとのこと。

一方、慣性閉じ込め方式での核融合発電を行っているのが、NIFです。


慣性閉じ込め方式は、燃料の表面にレーザーを照射することでプラズマを発生させ、それと同時に膨張するプラズマをレーザーの力で抑え込んで爆縮を発生させます。これにより発生した高い温度と圧力により燃料内部で軽元素を核融合させる仕組みです。この方法を実現するためには非常に強力なレーザーをあらゆる方向から高精度で燃料に照射する必要があるとのこと。

レーザーを使った核融合発電にはレーザーを直接燃料に照射する方法をありますが、NIFはホーラムと呼ばれる小さな金属を熱し、その際に発生するX線のパルスにより燃料カプセルが加熱され、核融合が起こるという間接的な仕組みを採用しています。

NIFは2010年から核融合発電の実験を行っていますが、最初の3年間では一度のレーザー照射で約1kJのエネルギーしか得られず、目的からほど遠い状態でした。当時の状況について研究者は「シミュレーションに過度に依存していた」と語っています。

その後、研究者はテストの機器をアップグレードし、中性子検出器を追加し、核融合反応が起こっている場所の3Dビューを可能にしました。また研究チームはエネルギー漏れを追跡して問題を特定・解決。加えて、初期のレーザー照射では温度の上昇がゆっくりで圧縮が困難だったとして、研究者は温度を上げ、X線のエネルギーを燃料カプセルがより多く吸収できるようにしたとのこと。そして、より燃料を効率的に燃焼できるように、カプセルの素材はプラスチックから密度の高いダイアモンドに変わりました。


何年にもわたってこれらの変更を重ねてきたところ、NIFは一度のレーザー照射で60kJ近いエネルギーを生み出せるようになりました。NIFのディレクターであるマーク・ハーマン氏によると、NIFは近い内に「NIFがどれほどプラズマ燃焼に近づいたか」を確かめるために、レーザーを連続照射し測定を行う予定とのこと。この測定では一度当たりのエネルギー量が100kJ近くなると期待されています。NIFが一度しきい値に達すると、核融合がより簡単になるとハーマン氏は語りました。

核融合発電が現実のものとなるかどうかはまだ未知数ですが、そのために試してみるべきことはまだいくつも残っているとのこと。ハーマン氏は「私は楽天主義者であり、可能な限りNIFを押し進めていきます」と述べており、ホーラムの形状や種類を変更することや、X線エネルギーをより効率的に閉じ込める二重壁の燃料カプセルなど、さまざまなアイデアに挑戦していくと述べています。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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