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建設的な議論を行うための初歩的なテクニックとは?


何かを議論する際、互いの主張が対立して一向に結論が出なかったり、一方が意見を聞かずに主張を押し通したりと、なかなか双方が納得いく議論ができないことがあります。論理的な議論というものに慣れていない初心者でも、互いに納得し、建設的な議論を行うためのテクニックを起業家のリアム・ローゼン氏が解説しています。

Beginner's Guide to Arguing Constructively
http://liamrosen.com/arguments.html

◆3つの原則
ローゼン氏は、「真の議論は協力関係の上に築かれるものです。双方が『なぜ自分が間違っているのか』を考え、時には信念を曲げる必要もあります」と述べ、建設的な議論を行うための3つの原則を挙げています。

1:自分の間違いを認めること
議論の中で、「何かを深く信じていたのに、少しずつ自分が間違っていることに気づく」ということが起こる可能性があるため、「自分は間違っているかもしれない」という前提で議論に臨むことをローゼン氏は提案しています。「もし自分が間違っていることを認めることに成功すれば、それは進んで考えを変えなければならないということになります。自分の考えが変わったことを認める謙虚さは、誠実な議論において最も名誉ある考え方の一つです」とローゼン氏は述べています。

2:不必要な批判をしない
「相手の主張が自分の主張と異なり、かつ相手の主張が正しいと思えたら、それに同意することを恐れてはいけません。また、相手の主張が理不尽だった場合、自分の主張の正しさを不必要に強調してはいけません」とローゼン氏はコメント。反対に、不必要な賛同や過剰な称賛もすべきではないとローゼン氏は指摘しています。

また、1つの意見だけで議論する相手の善悪を判断すべきではないともローゼン氏は述べています。つまり、相手に1つを否定されたからといって「全てを否定されている」と勘違いせず、1つを否定されたら「それ以外は肯定されている」という前提で議論に臨む心構えが重要とのこと。

3:反対意見を言う人は必ずいる
ローゼン氏は「スター・ウォーズ」を例に挙げ、「議論の中では、ほとんどの人が『自分はジェダイの騎士である』と考え、宇宙における善のすべてのために戦っていると考えています。しかし、どんなジェダイの騎士に対しても、『ジェダイは間違っており、ダークサイドこそが善である』と主張するシスのような存在が現れます。このシスが自分自身かもしれないことを肝に銘じる必要があります」と語りました。

自分は完全な善ではなく、議論の相手も完全な悪ではなく、「自分にとって悪と思える考えを善だと思っている人もいる」という視点が議論においては重要であるとローゼン氏は指摘。また、議論の目標は「悪を打ち倒すこと」ではなく、「真実を明らかにすること」であり、常に異なる視点を考えながら議論に臨むことの重要性をローゼン氏は説いています。


◆頭の再構築
建設的な議論をするためには、まず時間をかけて頭全体を再構築する必要があるとローゼン氏は述べています。頭の再構築とは、「認知バイアス」「論理的誤り」2つの認識と回避を指しています。

ローゼン氏によると、「人が理性的に行動することを妨げる人間の判断の限界と誤り」のことを認知バイアスと呼ぶそうです。認知バイアスは人間の生活のあらゆる面に存在し、議論のような緊迫した状況では、感情が高まり脳が過負荷になるにつれて、より頻繁に認知バイアスが表れる傾向があるとのこと。


論理的な誤りは、議論の余地がない点を無駄に議論に発展させてしまうという誤りで、認知バイアスや不注意、無知によって意図せず引き起こされるものであるとローゼン氏は述べています。議論のジレンマや論点のずれなども論理的な誤りに含まれます。

議論において、自分にも相手にも「認知バイアス」「論理的誤り」の2つが存在することを認識し、それらをできる限り回避するよう立ち回ることが議論を円滑かつ建設的にするということです。


◆議論の戦略
議論をできるだけ建設的なものにするための戦略として、ローゼン氏は6つの戦略を挙げています。

1:確率の割り当て
誰もが100%信じていない、確信が持てないテーマについて議論をするときは、相手に自分がそのテーマをどれだけ強く信じているかを正確に伝えることが効果的な戦略として挙げられています。例としてローゼン氏は「教師を武装させることで学校での銃による暴力を減らすことができるか」というテーマを挙げ、このテーマに100%賛同できないとしたら「教師の武装化が学校での銃暴力を減少させる可能性は約70%だと思います」のように、反対意見にも譲歩した意見を述べる方法を提案しています。

2:意見の取り下げ条件
議論を円滑に進めるには、議論が平行線に陥ったときの回避方法を見つけておくことも必要です。例えばAという人物が「リンゴは木に生える」、Bという人物が「リンゴは木に生えない」と主張が対立した場合、互いの主張が一点張りになると議論は平行線に陥りかねません。

そこで、Aは「世界中の木を調べてみてもリンゴが生えていないと分かったら、私は考えを変えます」、Bは「実際にリンゴが生えている木が1本でも見つかったら、考え方を変えます」というように、あらかじめ「どんな事実が証明されたら主張を取り下げるか」を互いに明示することで平行線を避ける方法を提案することで、議論を円滑に進めることができます。

3:意見の再確認
議論で出した意見を相手に述べさせたり、相手の意見を自分が述べたりすることで、意見が正しく理解されているかどうかを再度確認することも重要。そうすることで、自分の意見をしっかり聞いてもらえていることを確認するだけでなく、自分の考えを明確にすることができます。


4:引き下がる余裕を与える
「議論において、誰もメンツを失いたくないし、議論から簡単に身を引く選択肢を誰にも与えないことは、ひどい結果につながる可能性があります」とローゼン氏は指摘。相手に引き下がる余裕を与える簡単な方法として、ローゼン氏は「議論において礼儀正しくすることを忘れず、どんなに間違っていると思っても、意見が合わなくても、相手にも敬意を持って接することです」と述べています。

5:感情と議論を分離する
感情は議論に大きな影響を与えるものですが、「誠実に議論するということは、感情を持たずに、完全に理性的な存在になるということではありません」とローゼン氏はコメント。感情を排除するのではなく、感情が自分の意見に影響を与えている可能性があることを内省し、客観性を保つために最善を尽くすことが必要であるとのこと。また、議論中の相手の感情や、相手の感情が主張にどのような影響を与えているかに注目することも同様に価値があるとローゼン氏は述べています。

6:意見の抽出
相手が自分の反対意見を主張した際、全てを否定するのではなく、相手の主張に耳を傾けて最も合理的な内容を抽出し、両者が合意に達するまでその内容が理にかなっているかどうかを確かめ議論の糧にする、というテクニックをローゼン氏は挙げています。なお、合意に至らなかった場合は、曖昧な内容は相手の理解に合わせた上で議論を再構築するとのこと。

「私たちは。自分の意見に反対する議論をすべて無視するようにプログラムされているので、このテクニックは初心者には難しいかもしれませんが、実践すれば改善できます」とローゼン氏は語りました。

相手の意見を抽出するトレーニングとして、ローゼン氏は「相手の議論に耳を傾け、その人が言っていることを批判的に考える時間をとること」「相手の言葉だけでなく、背景や信念、問題に対する理解についても考えること」「相手の意見を、もっとも合理的なものからもっとも不合理なものへと並べ替えながら、議論の解釈を頭の中で整理すること」を挙げています。


ローゼン氏は「このガイドを1行に要約すると『議論は真実を見つけるための2人の協力である』となります。たとえこのガイドが提供する細かい信条や戦略を忘れても、与えられた議論を『真実を求める共同作業』として扱う限り、間違うことはないでしょう。より効果的に主張するには、伝統的な意味での勝利という考えから自分を切り離す必要があります。勝利を宣言したいなら、善意で議論し、相手が心を開いたときにこそ勝利とすべきです」とコメントしています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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