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議論の質を高めるために重要な3つの要素とは?

By monkeybusiness

論理的に意見を述べ合う「議論」は、参加者が納得できるような結論や互いの理解が得られることがある一方で、聞くに堪えない罵り合いに終始することもあります。オーストラリアのクイーンズランド大学で哲学を教えるルーク・ザフィルさんが議論の質を高めるポイントを解説しています。

How to make good arguments at school (and everywhere else)
https://theconversation.com/how-to-make-good-arguments-at-school-and-everywhere-else-121305

◆1:合理性
理屈と論拠を意見と結びつける「合理性」は議論において重要なファクターで、合理性を重視することには2つの目的があります。その1つは「自分自身の考えを明確にする」ということ。人間は自分自身の考えと身の回りの出来事を関連させて理解するため、合理性を意識することは自分自身の考えを整理するために役立ちます。

By stokkete

目的の2つ目は、「他人に自分の理屈を評価してもらう」ということ。ザフィルさんは「議論に臨むときには相手を尊重するために、自分の理屈を理解してもらうための機会を提供する必要があります。さもなければ、相手を欺いて同意させているだけです」と語っています。

ザフィルさんは、オーストラリアで行われている「感情的な言葉を使って説得力のある文章を書く」という授業は生徒の議論の質を低下させていると指摘。生徒に対して、感情に訴えるのではなく根拠と理屈を説く方法を教えるべきだと主張しています。

By Pixabay

ザフィルさんは「同性婚に反対する文章を書け」という例を挙げ、「『公序良俗に反する』といっただけでは不十分で、主張を裏付けるために『公序良俗に関するどのようなモラルが低下すると考えられるか』『モラルが低下すると市民がどのように苦しむ結果となるのか』に焦点を当てて論じた後、主張を『歴史上の、または現代で起きている実例を示して』補強するといった、合理的な論旨が重要です」と解説しています。

◆2:思いやり
「議論の中で最も見過ごされがちなポイント」としてザフィルさんが挙げたのが「思いやり」です。「相手の意見の核心部分を理解する」というのが議論では重要になりますが、議論相手が自分の意見をまとめるのに苦しんでいたりするのを見て楽しむ人もいます。

ザフィルさんはそのような行為を非難して、「人はみな自分の意見をわかりやすく述べたり終始一貫した主張したりすることに失敗する場合がありますし、まとまりきっていない意見でも価値がある場合があります。他人が言ったことを解釈する際には寛大であるべきです」と述べています。

By Prostock-studio

例として「オーストラリアにおける移民は暴力犯罪を引き起こしたり、雇用を奪ったりする」と誰かが発表した場合では、「人種差別的だ」といった反応を返すのではなく、思いやりを持って解釈を行って、議論参加者の家族の雇用が実際に確保されているのか、経験上の治安はどうなのかに目を向けた議論を行うべきだとザフィルさんは主張しています。

◆3:可謬主義
「可謬主義」とは、どれほど正しいと思われている理論でも、将来的に誤りとなる立証がなされる可能性があるという主義です。大人ですら自分が間違っていることを認めることは困難ですが、間違いを認めることは学習にとって特に重要だとザフィルさんは主張しています。

By tommyandone

間違いを認めることで得られるメリットの1つとして、ザフィルさんは「学習意欲の向上」を挙げています。ザフィルさんによると、1度目で失敗しても別に構わないとされている場合、子どもの参加意欲ははるかに高まることが研究で示されているとのこと。ザフィルさんは「失敗と学習は関係しています」と述べています。

ザフィルさんが挙げた間違いを認めるもう1つのメリットは、「この結果は正しい」という予断を持っていない場合は、意義が大きい研究結果になりやすいということです。

ザフィルさんは生徒に間違いを認めることを教える例として、「宿題をする必要はない」と議論させることを挙げています。この議論を進めていくと、「宿題が嫌い」といった「自分自身の意見」と、「より良い大学に入れるようになる」といった「宿題をすることで得られる実際的な利益」を分離して考える必要が出てきます。その結果、「自分自身の意見」に限界が存在することに気づけるようになるとザフィルさんは解説しています。

By NomadSoul1

ザフィルさんは議論の質を高める訓練として、「金魚鉢」という名前のついた議論の練習法を勧めています。

「金魚鉢」では、学生を2グループに分けて、輪になって座らせたグループを残りのグループで取り囲むように座ります。内側のグループは議題に対して自由に議論を行い、外側のグループは、議論を聞いて自分の前に座っている人の意見の誤謬(ごびゅう)を探します。議論終了後、外側のグループは「自分が担当した人の理論が合理的だったか」について意見を述べます。さらにその後、内側のグループは外側のグループの批判に対して「指摘に思いやりがあったか」についてコメントしていきます。

ザフィルさんによると、この訓練方法は先に挙げた議論の質を高める3つのポイントをすべて学ぶことが可能とのこと。「金魚鉢」に参加した学生は他人が間違いを指摘されているのを見て、「人間は誰でも間違う」ということを実感できるようになるそうです。

By Prostock-studio

ザフィルさんは「『勝ちたい』『聞いてもらいたい』と思うのは当然の欲求です。しかし、子どもたちには、『議論に勝つこと』よりも『誰にとっても価値のある議論にすること』が重要だと教えるべきです」とコメントしています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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