サイエンス

相対性理論の「時間の遅れ」はたった30cmの高さでも発生する


一般相対性理論の1つである「時間の遅れ」は、ある2地点にかかる重力が異なる場合、2地点の時間がそれぞれ異った進み方になるという現象です。「重力が異なる」と言うと、地球上と宇宙くらいの差が必要なように思えますが、実際には地球上でもわずか33cmの高低差で時間の遅れが観測できることが明らかになっています。

NIST Pair of Aluminum Atomic Clocks Reveal Einstein's Relativity at a Personal Scale | NIST
https://www.nist.gov/news-events/news/2010/09/nist-pair-aluminum-atomic-clocks-reveal-einsteins-relativity-personal-scale

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の研究チームが2010年に行った実験によって、わずか33cmの高さでも時間の遅れが発生することが明らかになりました。実験では、原子などのスペクトル線を用いて時間を計る原子時計が使われています。原子時計は数ある時計の中でも非常に正確な時間を刻むことが可能な時計で、動作中に生じる誤差は精度の高いものだと3000万年に1秒ほどであるとのこと。


NISTの研究チームは、2010年時点で世界最高レベルの性能を持った原子時計2台の動作を比較することで実験を実施しました。時計はどちらも、帯電したアルミニウム原子のエネルギーレベルが変わるときに発生する1000兆回以上の振動を利用して時間を測定する時計です。2つの時計はそれぞれNISTの別の研究室に置かれ、長さ約75mの光ファイバーで接続されていました。

実験では、まず原子時計の1つを研究室の床に置き、もう1つを床から約33cm高い位置に置くことで、それぞれの時間の進み方に差が生じるかを測定。その結果、非常にわずかな差で高い位置にある時計は時間の進みが早く、低い位置にある時計は時間の進みが遅いという結果が得られ、たった33cmの差でも時間の遅れが生じていることが明らかになりました。

なお、実験で観測された時間の遅れは人間が知覚できないほど非常に小さなものでした。研究チームによると、「人間が地球上で一生のうちに経験する時間の遅れは人生を約80年とした場合、約900億分の1秒ほどである」とのこと。NISTの研究員で、論文の筆頭著者であるジェームズ・チンウェン・チョウ氏は、アルミニウムを用いた原子時計が極めて高い精度を持っていたことから、時間の遅れを実証する小さな変化を検出することができたと述べています。


2020年においては、時間の遅れを検出するために原子時計の一種である光格子時計などを使った実験が行われており、日本でも東京スカイツリーの展望台と地上の間で発生する時間の遅れを観測することに成功したことが、東京大学の研究チームによって報告されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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