新型コロナはアスリートの心臓に後遺症を残すかもしれない
血液を全身に送り出すポンプのような器官である心臓の強さは、アスリートに必須ともいえる能力です。そんな心臓に関して、アメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長が、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が心臓に後遺症を与える可能性がある」という最新の研究結果について報告しています。
Cardiovascular Magnetic Resonance Findings in Competitive Athletes Recovering From COVID-19 Infection - PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32915194/
COVID-19 Can Damage Hearts of Some College Athletes – NIH Director's Blog
https://directorsblog.nih.gov/2020/10/01/covid-19-can-damage-hearts-of-some-college-athletes/
コリンズ所長が報告したのは、オハイオ州立大学のSaurabh Rajpal氏率いる研究チームが発表した、COVID-19から回復したアスリートの心臓に関するMRI検査についての論文です。Rajpal氏らは、COVID-19から回復したアメリカンフットボール、サッカー、ラクロス、バスケットボール、トラック競技などの学生アスリート26人を被験者として、MRI検査を行いました。
被験者は新型コロナウイルスに対して「陽性」と診断されていましたが、COVID-19の重症度については「軽度」ないし「無症状」と診断されていました。また、MRI検査は隔離が終了してからおよそ11日~53日後に実施されています。
MRI検査の結果、被験者26人のうち4人で心筋炎の症状の一種である心臓の腫れと組織の損傷が確認されました。この結果を受けて、Rajpal氏らがMRI造影剤を使って心臓の詳細なMRI検査を行ったところ、さらに8人で心筋損傷の痕跡が見られたとのこと。
この結果について、コリンズ所長は、「心筋炎は軽度ならば時間の経過によって快癒することが多い病気ですが、重度ならば心筋の能力が低下する可能性があります。そしてさらに、心臓を酷使するアスリートの場合は死につながる場合すらあります」と言及。今回の結果が、ドイツのフランクフルト大学病院の研究チームが2020年7月に発表した研究結果と一致していると指摘して、「これらの結果はCOVID-19がアスリートの心臓に損傷を与えるという懸念を引き起こしています」とコメントし、COVID-19が人体に与える長期的な影響に関する研究を引き続き行うべきという見解を示しました。
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