キツツキの一種は数日にわたる「大規模な戦争」を繰り広げる、戦争の成り行きを観戦する個体も
by Carla Kishinami
北アメリカから中央アメリカにかけて分布するドングリキツツキは群れを形成して森林に生息し、枯れ木や電柱に大量の穴を開けて、エサとなるドングリを1個ずつ貯蔵する習性で知られています。そんなドングリキツツキが、数日間~1週間にわたる「大規模な戦争」を繰り広げており、さらに他の群れの個体が戦争の成り行きを観戦することもあると研究者が報告しています。
Tracking the warriors and spectators of acorn woodpecker wars: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(20)31098-8
Acorn Woodpeckers Have Multi-Day Wars, and Birds Come From All Around to Watch - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/acrorn-woodpecker-wars
オークの森林に住むドングリキツツキは最大で16羽の群れを形成して社会的な行動を取る鳥です。それぞれの群れには複数のオスとメスのつがいが存在し、お互いのヒナを育てる「ブリーダー」となってお互いに協力して子育てを行います。ドングリキツツキの成鳥は直接自分が生んだヒナでなくても群れの一員が生んだヒナならば世話をするそうで、まだ自分の群れを持っていない子どもたちも親の子育てを手伝うとのこと。
また、ドングリキツツキの名前の由来にもなっているのが、エサとなるハエや昆虫が不足している時の非常食としてドングリを貯蔵する習性です。ドングリキツツキはオークの木や電柱にくちばしで穴を空け、その中にドングリを差し込んで貯蔵しており、時には数百個~数万個ものドングリを自分たちの領土内に保存するケースもあります。そして、この「穀倉」を巡って、ドングリキツツキは群れ同士で激しい戦争を繰り広げること場合があります。
by sgrace
アメリカのスミソニアン国立自然史博物館に所属する博士研究員のSahas Barve氏らの研究チームは、カリフォルニア州に住むドングリキツツキの群れが繰り広げる「戦争」の観察研究を行いました。ドングリキツツキの戦争は、「ドングリキツツキをよく見ると、羽に血がついています。戦っている最中には、2羽がお互いの足をつかんで地面に落ちることもあります」とBarve氏が述べるほど激しいものとのこと。
複数の群れが入り乱れたドングリキツツキの戦争を目視で観察し、実際に何が起きているのかを理解することは困難なため、研究チームは無線タグをドングリキツツキに取り付けて戦争の様子を観察することにしました。
戦争が発生するのは、ある群れの「ブリーダー」に当たるオスあるいはメスがすべて死亡したり、群れから姿を消したりした場合だとのこと。群れから個体が消えたわずか数分後には、いなくなったのと同じ性別の個体が近隣の複数の群れから2羽~3羽ずつやってきて、それぞれの連合と1つの勝者が決まるまで激しい戦いを繰り広げます。
ドングリキツツキの戦争は非常に激しいものであり、1日に最長10時間ほど戦い続けることもあっただけでなく、豊かな穀倉を巡って12もの連合が5日~1週間も入り乱れて交戦することもあったそうです。戦いは非常に騒がしいそうで、戦場から離れたサッカー場でもドングリキツツキの鳴き声を聞くことができるとBarve氏は述べています。
by Dagny Gromer
また、ドングリキツツキの戦争に直接参加する個体だけでなく、戦争の成り行きを見守る「観戦者」もいることが研究によって判明しています。観戦者の中には、およそ2マイル(約3.2km)離れた場所からわざわざ飛んできて、1時間以上にわたって観戦し続ける個体もいたとのこと。
自分たちの領土から離れてまで戦争の行方を見守ることのメリットについては、完全には明らかになっていません。しかし、研究チームは観戦によってドングリキツツキが有用な情報を得ている可能性があると考えています。
ドングリキツツキは自分たち以外の群れの関係性について認識し、他の群れでどのような構成員の入れ替えがあったのかを把握していることが知られています。ドングリキツツキは定期的に他の群れの偵察を行っており、平均して1日当たり6個の群れを観察していることがわかっているとのこと。
Barve氏は、「ドングリキツツキは誰がどこに住んでいるのか、どのような関係なのか、どこに住んでいるべきなのかといった全ての事柄と密接な関係を持っています」と説明。他の群れの様子を観察することで、近隣の群れのバランスが崩れた際にすぐさま連合を組んで集まり、戦争を開始するのだろうと主張しました。
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