コストコが「自社ブランド」として他のブランドの商品を売ることに成功した戦略とは?
by Open Grid Scheduler / Grid Engine
コストコは「カークランド」というプライベートブランドを展開していますが、カークランドの製品は、実は大手ブランドが製造しています。ブランド側は自社製品より安い価格がつけられるとわかっていて、なぜコストコに商品を流通させるのか、戦略的金融コンサルタントのアダム・スリーキングさんが解説しています。
How Costco Convinces Brands to Cannibalize Themselves - Napkin Math
https://napkinmath.substack.com/p/how-costco-convinces-brands-to-cannibalize
会員制の倉庫型店舗であるコストコは、主に低価格商品を売っていますが「低価格でも質が良い」ことが人気の秘訣になっています。他社のプライベートブランドも安価ですが、「カークランド」には「タトゥーのデザインになるほど熱烈なファンを抱えている」という違いがあります。
コストコやカークランドは「安ければ質が落ちる」という既成概念を打ち破っていますが、なぜこれが実現できるのかというと、カークランドの製品は一流メーカーが作っているため。
カークランド製品の製造元は明らかにされていませんが、マーケティング職につくRedditユーザーによると、コストコはブランドに対し、「カークランドラベルを付ける製品はブランドの製品よりも品質を1%よくすること」を求めるとのこと。この説は未検証ですが、戦略的金融コンサルタントのスリーキングさんは納得に値するものとしています。
by Diana Susselman
例えば、ブランドがコストコに対して1つの商品を95円で販売した時、コストコは一般消費者に対して100円で販売します。この時、5%にあたる部分がコストコのマージンです。
95円がブランド側に入ってくる収入ですが、一般的に消費財(CPG)ブランドは商品価格の平均24%をマーケティング予算、売上総利益を40~50%としています。一方で、「カークランド」の製品として販売する場合、すでにコストコという販売経路が確立しているため、ブランド側はマーケティング費用を5%前後にまで抑えることが可能です。ゆえに、ブランド側はコストコに本来なら95円で販売すべき製品をもっと安く販売しても、利益が見込めるとのこと。コストコ側も、ブランドの本来の価格より安く「カークランド」製品として販売できるわけです。
別ブランドで同一製品が販売されているとお互いに食い合いが発生するようにも思えます。しかし、両者は異なるブランディングやマーケティングリサーチを行っているので、こうした販売方法が成立しているとのこと。また、ブランド側からすれば、2019年実績で収益1490億ドル(約15兆円)超という、世界最大級の販売チャネルであるコストコで製品を販売できるという大きなメリットがあります。
カークランドの「絶対的な低価格」はコストコがプライベートブランドで成功した大きな理由です。そして、これに加えて、コストコはプライベートブランドというものがほとんど存在しなかった1992年に「カークランド」ブランドを始めたという点も、成功の理由。プライベートブランドは店舗の外で販売されないため、顧客が製品を購入し、気に入り、リピートしていくほかブランドを構築する方法はありません。カークランドは28年の歳月をかけて、ブランドを確立させていきました。
カークランドの成功から学べることとして、「流通を利用する」「サプライヤーに対するインセンティブを提供する」「時間をかけてブランドを確立する」の3つが挙げられるとスリーキングさんはまとめています。
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