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なぜ知的で用心深い人でも電話で詐欺にかかってしまうのか?


ビジネス誌The Hustleのシニアライターであるザカリー・クロケット氏の父親は、30年間にわたり教育者を勤め上げた人物でしたが、電話を通じて3000ドル(約30万円)を詐取される被害に遭ってしまったとのこと。父親の証言をくわしく聞いたクロケット氏が、詐欺師の巧妙な手口や被害を未然に防ぐための方法を分析しています。

How my dad got scammed for $3,000 worth of gift cards
https://thehustle.co/phone-scam-gift-cards/

クロケット氏の父親が詐欺の被害に遭ったのは、ある日の午後2時30分にかかってきた1本の電話が発端でした。「FBI捜査官のデビッド・ホワイト」を名乗るその人物は、クロケット氏の父親に向かって「あなた名義でレンタルされた車に、コカインや現金が満載されているのが見つかりました。捜査に協力していただけない場合、銀行口座が凍結され、刑事責任に問われるおそれがあります」と告げました。


クロケット氏の父親は低所得層が多い地域の出身者で、生き馬の目を抜く世界の中で世渡りしながら育った人物とのこと。また記事作成時点で66歳と、既に一線を退いているものの、30年間高校生の教育に携わってきたキャリアの中で「1マイル(約1.6キロメートル)先からうそを見抜く」と評される用心深さを培っていました。

しかし、最終的に3000ドル(約30万円)相当のギフト券を購入し、詐欺師にギフト券の番号を話してしまいました。その時のことを、クロケット氏の父親は「相手との電話が終わってホッとした瞬間は、まるで呪文が解除されたようだった。その時、私の脳のスイッチが入り、私は自分が詐欺にあったことにようやく気付いた」と述懐したとのことです。

普段からロボコール詐欺に取り合わず、怪しい連絡は徹底して無視していたというクロケット氏の父親が詐欺師にだまされてしまったのは、詐欺師が人の心理に精通し、その上でリアリティを追求した手口を取ったためです。

by Cindy Shebley

最初に電話でクロケット氏の父親を脅した「デビッド・ホワイト」は、さらに「カイル・ウィリアムソン」と「プレストン・グラブス」という2人の捜査官に電話を転送しました。この2人も当然「デビッド・ホワイト」の共謀者だったわけですが、2人が名乗った名前や職名は実在する捜査官のもので、電話機に残っていた電話番号も正しい捜査機関の連絡先のものだったとのこと。

「デビッド・ホワイト」から電話を引き継いだ偽の捜査官は、「あなたの社会保障番号が悪用されただけなのは間違いないので、本当に犯罪の責任があるとは考えていない」と話してクロケット氏の父親を安心させた上で、捜査のためやむを得ず銀行口座を9年ほど凍結しなければならないと告げたとのこと。そして、口座凍結から生活資金を守るための回避策として「銀行口座の中身を政府公認の商品券に換えること」を提案しました。これを信じたクロケット氏の父親が、言われるがままに市販のギフト券を購入し、その番号を詐欺師に伝えてしまったというのが、今回の詐欺の一部始終でした。


この事例からクロケット氏は、詐欺師の手口の要点を以下の5点にまとめました。

・情報ブローカーから詐欺を行う相手の電話番号を入手する。
・政府機関の捜査に関する資料を入手し、実在の人物を装いつつ、精巧な筋書きを作る。
・発信者番号のなりすまし技術を駆使して、政府機関からの連絡に偽装する。
マインドコントロールと、恐怖とパニックの感情を誘発するような話術を用いて被害者の論理的な思考を奪った上でギフト券を購入するよう誘導し、ギフト券のコードを聞き出す。
・「ランナー」と呼ばれるグループを使って、素早くギフトカードを現金化する。

またクロケット氏は、父親と共に連邦取引委員会(FTC)や警察に赴いた中で得られた「被害を防ぐためのヒント」を次の4つにまとめています。

・政府機関が市民に連絡をする際は書面を用いるため、何の前触れもなく政府機関から電話がかかってくることは絶対にない
・電話番号が実在する政府機関のものでも信用してはならない
・どうしても確認する必要がある場合は、実際にその電話番号にかけて、自分への連絡が本当に政府機関からのものか確認する
・政府機関がギフト券や電信送金により金銭を要求することは絶対にない

なお、日本での振り込め詐欺(特殊詐欺)についての情報や、被害についての相談窓口は、以下の警視庁のサイトに掲載されています。

警察庁振り込め詐欺対策HP
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/1_hurikome.htm

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in メモ, Posted by log1l_ks

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