新型フォードF-150には「移動式溶接工場が32時間稼働できるほどの電力を供給できる発電機」が搭載される
2020年6月25日、自動車メーカーのフォードが販売するピックアップトラック「F-150」がフルモデルチェンジすることが発表されました。2020年秋に登場する予定の新型F-150では、従来の車を5倍以上も上回る強力な発電機が搭載され、複数の電動工具や冷蔵庫、スピーカーなどに電力を供給することができるとされています。
Built for Getting Things Done, Ford Reveals the Toughest, Most Productive F-150 Ever and Most Powerful in Its Class | Ford Media Center
https://media.ford.com/content/fordmedia/fna/us/en/news/2020/06/25/built-for-getting-things-done-ford-f150.html
How the 2021 Ford F-150's Onboard Generator Works
https://www.roadandtrack.com/new-cars/car-technology/a32970167/f-150-generator-pro-power-onboard/
家庭用のコンセントが搭載されている量産車は珍しいものではなく、スマートフォンやPCといった電子機器に電力を供給できるミニバンやトラック、ファミリーカーが市場に出回っています。しかし、これまでの車では消費電力の大きな機器に電力を供給することはできず、車内や出かけた先で大量の電力を使いたい場合は、個別のバッテリーやガソリン式発電機を持ち運ぶ必要がありました。
実際にフォードが市場調査を行った結果、F-150のユーザーはガソリン式発電機を積載して出かけた先で電力を確保していることがわかったそうです。そこでフォードは、新型のF-150に「Pro Power Onboard」というガソリンを使った発電機システムを搭載し、ガソリン式発電機を持ち運ばなくても電動工具や冷蔵庫、巨大なスピーカーなどを動かせるほどの電力を供給できるようにしたとのこと。
F-150で利用可能な車載発電機の出力はガソリンモデルで2キロワット、新型F-150で登場するハイブリッドモデルでは2.4キロワットとなっており、オプションで48ボルトリチウムイオンバッテリーパックを使用した出力7.2キロワットの発電機が利用可能。Pro Power Onboardを担当するエンジニアのNigar Sultana氏は、「現在のところ、従来の車載コンセントは150~400ワットの電力を供給しています。私たちは基本的にその5倍以上の電力を供給します」と述べています。
ガソリンモデルに搭載可能な出力2.0キロワットのタイプでは、電動ノコギリや作業用BGMを流せるポータブルスピーカーに電力を供給してフェンスの修繕作業をしたり、テレビやヒーターなどに電力を供給してスポーツ観戦をしたりできます。
また、出力2.4キロワットのタイプでも最大で85時間にわたって、電動ノコギリや空気圧縮機を同時に稼働させたり削岩機を使用したり、プロジェクターやスピーカー、ポップコーンマシンを備えたミニシアターを実行したりできるとフォードは主張しています。
最もハイスペックな出力7.2キロワットのタイプでは、プラズマカッターやTIG溶接機、電導の丸ノコギリ、空気圧縮機、アングルグラインダー、作業灯へ同時に電力を供給できるとのこと。ガソリンが満タンの状態であれば、この移動式溶接工場とも言える設備一式を最大で約32時間連続で稼働させることができるそうです。2キロワットまたは2.4キロワットモデルでは120V/20Aコンセントから電力を供給できるほか、7.2キロワットモデルでは240V/30AのNEMA L14-30R規格のコンセントも利用可能。
フォードは新型F-150の売上にハイブリッドモデルが占める割合を10%と予想していたため、大多数を占めるガソリンモデルでPro Power Onboardを実現することが重要な課題だったとのこと。標準の12ボルトアーキテクチャでは十分な電力を供給することができなかったため、Sultana氏らの開発チームは12ボルトアーキテクチャを2つ接続することで、全く新しい24ボルトの電気システムを設計したと述べています。
これらのバッテリーに加え、Pro Power Onboard搭載のガソリンモデルには2つ目のオルタネーター(発電機)が付属しており、従来の車では実現できないほどの電力供給を可能にしたとのこと。Pro Power Onboardの発電システムは他の電気系統から完全に分離されているため、Pro Power Onboardに問題が発生してもF-150の運転性能には問題が及ばないようになっているそうです。
Pro Power Onboardは、スマートフォンアプリや車載インフォテインメントシステムを介して有効/無効を切り替えたり、動作を監視したりできます。また、過電流が流れた場合には自動でシステムが停止し、通知を送るブレーカー機能も搭載されています。
ガソリンモデルではPro Power Onboardを使用するためにガソリンエンジンをオンにする必要があるほか、バッテリーを搭載しているハイブリッドモデルでも、バッテリーの消耗を防ぐために必要に応じて自動でガソリンエンジンがオンになるとのこと。Pro Power Onboardは走行中も使用可能であり、移動中に車内の電子機器に電力を供給したり、電動工具を充電したりすることが可能です。
新型F-150は2020年秋に登場する予定となっており、Pro Power Onboardはガソリンモデルではオプションで搭載可能、ハイブリッドモデルでは標準搭載されるとのこと。ガソリンモデルとハイブリッドモデルを含めて、販売される新型F-150の17%がPro Power Onboard搭載モデルになるとフォードは見込んでいます。
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