自分たちのうんちで大量死した氷河期の巨大ナマケモノの化石が発見される
エクアドルのサンタエレナ半島にある後期更新世の遺跡から、古代のオオナマケモノの一種であるエレモテリウム22頭分の化石が見つかりました。化石の詳細な調査結果から、この大量死の原因はエレモテリウム自身の排せつ物だった可能性が高いことが明らかとなっています。
A monodominant late-Pleistocene megafauna locality from Santa Elena, Ecuador: Insight on the biology and behavior of giant ground sloths - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S003101821930447X
Ice Age giant sloths died in a 'death pit' from poo-tainted water | Live Science
https://www.livescience.com/giant-sloths-died-in-poop-pit.html
Mass Grave of Elephant-Sized Sloths Poses Murky Mystery
https://gizmodo.com/mass-grave-of-elephant-sized-sloths-poses-murky-mystery-1843135679
Tar Pit Discovery Shows Ancient Giant Sloths May Have Died From Their Own Poop
https://www.sciencealert.com/these-ancient-giant-sloths-might-have-died-from-their-own-poop
エレモテリウムとは、更新世時代の北アメリカ大陸と南アメリカ大陸に生息していたとされるオオナマケモノの一種です。樹上で暮らす現代のナマケモノとは違い、地上で暮らすエレモテリウムは体長6メートル、体重は3トンと非常に巨大で、後ろ足で立ちあがると人間の大人をはるかに上回る高さになったと考えられています。しかし、約1万1000年前に絶滅したこと以外、詳しいことはほとんど何も分かっていません。
by Kim F
そんなエレモテリウムの生態の一端を知るきっかけとなったのが、エクアドルのタンケ・ロマ遺跡で発見された22頭分のエレモテリウムの化石です。「タンケ・ロマ」はスペイン語で「油槽の丘」を意味しています。また、化石が発見されたのは現地の石油会社が掘削を行ったからだとのこと。
研究チームが本格的な発掘調査を行ってみると、天然のタールで覆われたエレモテリウムの化石が合計575個出土しました。この化石は、成体から胎児の可能性もある小さな個体まで少なくとも22頭分のエレモテリウムのものだとされていますが、各個体の化石の間に堆積物がなかったことから、22頭のエレモテリウムはほぼ同時に死んだとされています。
しかし、化石があった地層全体がタールに覆われているわけではないことから、研究チームはエレモテリウムがタールの池に足をとられて死んだのではなく、エレモテリウムの死後にタールが地層に染みこんだと考えています。
エレモテリウムの死因を突き止めるため、研究チームが化石があった地層を詳しく調べたところ、その地層は付近の生き物の水飲み場になりそうな沼地だったことが判明しました。また、エレモテリウムの化石の周りには植物片の化石もありましたが、それらのほとんどは咀嚼(そしゃく)されたり、半ば消化されたりした状態でした。
このことから、研究チームは「エレモテリウムの大量死は自らの排せつ物で汚染された水を飲んだため」だと推測しました。同様の事例は、現代でも観察されています。例えば、2018年には、アフリカのマラ川で「カバの排せつ物により魚が大量に死ぬ」という事例が発生しています。
カバのうんちが魚を大量死させる原因になることが明らかに - GIGAZINE
また、アフリカ東部のタンザニアでは、水飲み場がカバの排せつ物で汚染されたことが原因で、140頭いたカバの群れが40頭にまで減ってしまった事例も報告されています。こうした事例では、排せつ物の影響でしばしば水が無酸素状態になることが知られていますが、タンケ・ロマからも低エネルギーの無酸素水生環境を示唆する堆積物が発掘されたとのこと。
研究チームは「タンケ・ロマで見つかったエレモテリウムの群れは、熱、太陽光、昆虫などから身を守るために1日の大半を水の中で過ごすカバに近い生態を有していた可能性があります」と述べて、太古のエレモテリウムと現代のカバの類似性を指摘しました。
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