メモ

SF小説やファンタジー小説が新型コロナウイルスのパンデミックを経験する若者に精神的な強さを与えるとの主張


SF小説やファンタジー小説はあくまでも非現実的なフィクションに過ぎず、このようなフィクションに傾倒することは好ましくないと思っている人々も少なくありません。ところが、クラーク大学で英語学の准教授を務めるエスター・ジョーンズ氏は、「SFやファンタジー小説を読むことが、若者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるストレスや不安に対処することを助ける」と主張しています。

Science fiction builds mental resiliency in young readers
https://theconversation.com/science-fiction-builds-mental-resiliency-in-young-readers-135513


歴史的に親世代が「若者にとってよい作品」と見なしてきた文学作品は、親世代の道徳的な価値観を反映した作品だったとジョーンズ氏は指摘。望ましい道徳観に沿っていないとされる書物は検閲や発禁の対象となることが多く、たとえば1885年に出版された「ハックルベリー・フィンの冒険」は少年に悪態や喫煙、家出などを教えるとして、アメリカで発禁処分を受けました。また、20世紀後半には作中で使用されるNワードが人種差別的な問題を含んでいると非難され、2011年にはNワードを別の言葉に置き換えた改訂版が出版されました

同様に、SF小説やファンタジー小説などに対しても、現実逃避的でナンセンスなものだとの批判が根強く存在します。たとえば「SF小説を読む人は現実的な問題に対処できない」との主張もありますが、これに対してジョーンズ氏は、「2016年に学術誌のSocial and Personality Psychology Compassに発表された論文は、『物語世界に接続することは、キャラクターが困難な問題を解決する激しい個人的なプロセスと、キャラクターの感情への共感を含み、これらの両方が読者にメリットを与える』と主張しています」と述べています。

「多くの人々はSFやファンタジー、スペキュレイティブ・フィクション(思弁小説)などを『文学』と見なさないかもしれませんが、全てのフィクションが若い読者に対して批評的思考や感情的知性のスキルを生み出すことが研究によって示されています」とジョーンズ氏は指摘。また、ジョーンズ氏は特に科学的な空想に基づいたSF小説が、COVID-19のパンデミックを経験する若い世代にとって大きな力になり得ると考えているとのこと。


SF小説に対する批判の多くは、小説中では現実の人間が抱えるジレンマについて描かれていないため、作品自体の価値が低いというステレオタイプが関与しているとジョーンズ氏は指摘。このようなステレオタイプは、「若者は読んだり見たりしたものに描かれた内容をそのまま鏡像のように現実問題に反映させることでしか、人間のジレンマについて学ぶことができない」という想定に基づいているとのこと。

しかしジョーンズ氏は、SF小説やファンタジー小説を読んだ若者たちは決して小説に描かれた内容をそのままうのみにするのではなく、世界をよりよく理解できると主張しています。既成の概念を超えた創造的な物語に触れることにより、科学に基づいて現実の問題に対処する能力を拡張することができるとジョーンズ氏は述べています。

また、SF小説やファンタジー小説の愛好家は決して「特定の狭い範囲にしか興味のないオタク」ではない点もジョーンズ氏は指摘。2015年の調査では、SF小説やファンタジー小説の読者が、ほかの幅広い書籍やメディアの消費者でもあることが判明しています。


「SF小説やファンタジー小説は、深刻な社会問題や政治問題について注目するべき物語を提供するために、現実の鏡像を提供する必要がありません」「『ハリー・ポッター』『ハンガー・ゲーム』『Parable of the Sower』『Parable of the Talents』『ベガーズ・イン・スペイン』などの小説から、若者は深刻な社会・経済・政治的問題と戦う若者たちの姿を目にします」とジョーンズ氏は述べています。

これらの小説で描かれる世界は現実と違うものですが、フィクションの設定によって現実との距離感が生まれることで、読者が自身の想像力を使ってさまざまな問題を検討できるそうです。SF小説やファンタジー小説を読むことで、若者たちはCOVID-19のパンデミックのような不確実な世界を生き抜くために必要な、精神的な回復力や独自の対処法を身に付けることができるとジョーンズ氏は主張しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルスの感染拡大が「まるでスティーヴン・キングの物語に住んでいるよう」という意見 - GIGAZINE

小説家の多くが「自分が書いている作品の登場人物の声」を聞いているとの調査結果 - GIGAZINE

「父親が娘に性的暴行するシーン」を書いた小説家が「児童ポルノ製造容疑」で逮捕される - GIGAZINE

小説を書き上げるために役立つ5つのポイント - GIGAZINE

スティーヴン・キングが語る「小説家として成功するために知るべきすべてのこと」 - GIGAZINE

簡単に「ベストセラー小説」を書くための文章テクニックとアドバイスを集めた「How to Create an Instant Bestselling Novel」 - GIGAZINE

男の子がもっと本を読むようになるための「6つのポイント」とは? - GIGAZINE

たくさんの本に囲まれて育った子どもにはどのようなメリットがあるのかを6000人を対象に研究 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.