かつて「王の料理」だったマカロニ・アンド・チーズはいかにしてアメリカ人のソウルフードになったのか?


映画「ホーム・アローン」を見たことがある人の中には、主人公のケビンが「この栄養たっぷりなインスタントマカロニ・アンド・チーズの夕食に、そしてこれを販売してくれた人たちに、祝福を。アーメン」と言いながらおいしそうにマカロニ・アンド・チーズを食べていたシーンが印象に残っている人も多いはず。アメリカ人のソウルフードともいえるマカロニ・アンド・チーズですが、かつてはイギリス王室の食卓にのぼった高級料理だったとされています。

A Gooey and Delicious History of Mac and Cheese
https://melmagazine.com/en-us/story/history-of-mac-and-cheese


マカロニ・アンド・チーズの歴史は古く、その記録をたどると14世紀のヨーロッパにまでさかのぼります。中世ヨーロッパ最古の料理本の1つとされる「Liber de Coquina(ラテン語で『料理本』という意味)」には、パルメザンチーズとパスタを使った料理のことが記されており、これが後のマカロニ・アンド・チーズの原形だとされています。

また、14世紀のイングランド王リチャード2世に仕えた宮廷料理人によって書かれたとされる「The Forme of Cury」という本にも、同様の料理の作り方が記載されていたことから、当時のイギリスの王族もマカロニ・アンド・チーズを食べていたことが分かっています。

当時のイギリスでは、あらゆる種類のパスタを「マカロニ」と呼んでいたため、リチャード2世らが食べていたマカロニ・アンド・チーズでは、ラザニアのように平たいパスタも使用されていたそうです。また、材料はほぼマカロニとパルメザンチーズとバターだけだったため、味や見た目も現在のものとはかなり違っていたと考えられています。

by Emily

映画「ホーム・アローン」に登場するような、チーズソースが使用されたマカロニ・アンド・チーズが作られるようになったのは、1600年代のフランスでベシャメルソースが生まれてからのこと。これがさらにアメリカに伝わったのは、1780年代後半のフランスでアメリカ公使を務めていたトーマス・ジェファーソンが、ベルサイユ宮殿で出されたマカロニ・アンド・チーズを口にしたのがきっかけです。

フランスで食べたマカロニ・アンド・チーズがやみつきになってしまったジェファーソンは、アメリカに帰ってからもヘミングスという奴隷の料理人によくマカロニ・アンド・チーズを作らせていたとのこと。また、ホワイトハウスで催された食事会でも、ジェファーソンがマカロニ・アンド・チーズを食べていたという記録が残っています。このころのマカロニ・アンド・チーズは、しばしば「マカロニプディング」とも呼ばれていたそうです。


アメリカの食文化史研究家であるエイドリアン・ミラー氏は「当時のマカロニ・アンド・チーズは高級料理でした。なぜなら、マカロニを作るには当時イタリアでしか栽培されていなかったデュラムコムギが必須だったからです。またイタリア産パルメザンチーズも輸出が制限されていたため、一般にはほとんど出回っていませんでした」と述べています。

状況が変わり始めたのは、19世紀に入ってデュラムコムギがイタリア以外の地域でも栽培されるようになってからのこと。また、イギリスのサマセット州チェダーで作られたチェダーチーズがアメリカに入ってくると、マカロニ・アンド・チーズは一気に身近なものとなりました。

さらに、1937年にはアメリカの食品会社Kraft Foodsが出来合いのマカロニ・アンド・チーズを開発。ほどなくして第二次世界大戦が始まり、多くのアメリカ人が節制を強いられるようになると、安価に大量生産されて作るのも簡単なマカロニ・アンド・チーズは、瞬く間にアメリカの一般的な夕食メニューとなりました。

by Mike Mozart

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in , Posted by log1l_ks

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