「シェイクスピア」の時代、16世紀の人々はこのように食べ物を捉えていた

By Hans Splinter

食と健康に関するテーマは現代人にとっても大きなテーマの一つであるわけですが、その考えは16世紀にも人々の強い関心を抱いていたようです。しかし、当時考えられていた「常識」は、現代の私たちが考えているものとは大きく異なることもあったようです。

Shakespeare: The strange way people looked at food in the 16th Century - BBC News
http://www.bbc.com/news/magazine-36072989

16世紀の時代では、一般的に肉を食べることは野菜を食べることよりも健康的であると宗教家や食の専門家によって教えられていました。さらにそこで興味深いことは、人柄や職業、国籍によって合うとされる肉の種類が決まっていたこと。例えば、ベーコンは労働者や体を動かすことに従事する人によいとされました。これは、ベーコンは消化されにくい食べ物であり、活発に体を動かすことが消化を助けると信じられていたためと言われています。

また、鶏肉はベーコンなどよりも好意的に捉えられる食べ物で、病人によいと考えている人もいたとのこと。しかし、鶏肉はシェイクスピアの時代には高価な食べ物であり、裕福な人しか食べることができないものだったそうです。特にカポン(去勢されたおんどり)は、宗教上の贖罪のために使われたもので、シェイクスピアの作品に多く登場する大食漢の登場人物サー・ジョン・フォルスタッフの大好物として描かれています。シェイクスピア作品「ヴェローナの二紳士」では、物語に登場する犬「クラブ」がカポンの脚を登場人物「シルヴィア」のテーブルから盗むシーンが描かれています。

By Sofi

16世紀に食に関する著書を記したAndrew Boordeの本では、「牛肉はイングランド人によい食べ物」とされていましたが、これはローマ帝国時代の医者ガレノスが「牛肉は冷たくで重い肉であり、憂うつな気持ちを引き起こすとされていたことに反するものでした。当時の人は、気温が低いイングランドに住むイングランド人の胃は地中海地方に住む人よりも温度が高く、牛肉をより良く消化すると考えられていました。

シェイクスピア時代には、牛肉は勇気を奮い立たせると考えられており、史劇「ヘンリー五世」ではイングランド人の兵士について「彼らに素晴らしき肉である牛肉と鉄鋼を与えよ。さすれば、彼らは狼のように食べ、悪魔のように戦うであろう」とする一節が登場しているほどとのこと。その一方で、牛肉は愚かさを引き起こす食べ物であるともされていたようで、シェイクスピアは喜劇「十二夜」のサー・アンドルー・エイギュチークに「私はクリスチャンや普通の人よりもウィットに欠けると思っておる。しかし私は牛肉好きだ。そしてそれが私のウィットに害を与えていると思う」と喋らせたり、悲劇「トロイラスとクレシダ」にも牛肉を揶揄(やゆ)する一節が登場しています。

牛肉はパイ料理やパスティとして提供されることが多く、イングランド人は特にこれが好物であったと言われています。喜劇「ウィンザーの陽気な女房たち」では、ウィンザーに住む紳士ページが登場人物のスレンダーとフォルスタッフにパスティを勧めていたり、悲劇「ロミオとジュリエット」にもパスティが語られるシーンが登場します。

By Jennifer C.

現代では、健康のためには赤身の肉よりも魚を多く食べるように勧められることが半ば常識となっていますが、シェイクスピア時代では魚は肉よりも劣るものと考えられていたとのこと。栄養価が低いと考えられていたことと、金曜には肉を食べないとするカトリックの慣習に関連づけられたものでした。魚の消費を増やして肉の価格を下げるために「Fish Day」が当時の政府によって作られましたが、カトリック時代を思い起こさせるとしてイングランドのプロテスタントは魚を嫌がるという背景があったためだそうです。しかし、そんな中でフォルスタッフは魚を多く食べるという設定で、彼のポケットには「アンチョビとスペインの白ワインを夕食の後に食べた」と書かれた領収書が入っていたりします。

魚よりも好まれていたことに加え、動物の肉は「フルーツ」よりも健康的であるとも考えられていたとのこと。ただしここで言う「フルーツ」とは今日で言うところのフルーツ(果物)に加え、野菜を一括りにした言葉だったそうです。「フルーツ」は水分ばかりを含み、体によくない不均衡を引き起こすと考えられていました。

これは、聖書に登場する「大洪水」にも関連があるもので、大洪水の後に神が人類に動物の肉を食べることを定めたと書かれているとのこと。当時の食事学者は「フルーツ」を時おり食べるだけにとどめ、しかも食前に食べるように勧めていたとのこと。これは、フランス人が食後にデザートとしてフルーツを食べる習慣を避けるという意味合いもあったようです。

By Lisa Pinehill

しかし、現代人にとって最も奇妙に感じられそうなのが、「母乳」の扱いだったそうです。現代ではほとんど考えられないことですが、当時の書物では女性の母乳が子どもと同じく大人の男性にも推奨される飲み物として紹介されていました。当時の書物を記したBulleinは「衰弱に対する最もふさわしい牛乳は、女性の母乳である」と記しており、これはシェイクスピア作品で母乳や乳製品が登場することが多い背景になっているとのこと。

また、シェイクスピア時代には、砂糖は体に良いものとされており、胃薬などの薬の一種として使われることもあったとのこと。Boordeは書物で砂糖を多く含む飲み物を勧めており、特に年配の人たちが砂糖入りの飲み物を多く求めていたとのこと。

このように、中には現代とは正反対とも言える考え方で食べ物が理解されていたこともあったようですが、いつの時代も健康を求めて食べ物に考えを巡らすということは人類の永遠のテーマになってきたようです。

By Kayla Seah

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in , Posted by darkhorse_log

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