新型コロナウイルスにかかるとどんな「せき」が出るのか?
新型コロナウイルスがまん延する中、ついせきやくしゃみが出てしまって心配になったり、周囲からの目が気になったりした経験がある人も多いはず。そこで、オーストラリアにあるビクトリア大学の医学の専門家らが、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が原因と疑われるせきは一体どんなせきなのか?」をまとめています。
Dry, wet, barking, hacking: a guide to coughs in the time of coronavirus
https://theconversation.com/dry-wet-barking-hacking-a-guide-to-coughs-in-the-time-of-coronavirus-136048
ビクトリア大学で医学講師を務めるMaja Husaric氏と同学の副学長であるVasso Apostolopoulos氏らによると、COVID-19の主な症状は発熱と疲労で、せきはCOVID-19に感染した患者の半数でみられるとのこと。また、両氏は「COVID-19が肺に損傷を与えることを考えると、COVID-19が原因で出るせきは長く続く乾いたせきで、息切れや筋肉痛を伴います」と述べました。
Husaric氏が「乾いたせき」と呼んでいるのは、いわゆる「からせき」と呼ばれるたんがからまないせきのことで、一般に「コンコン」「ケンケン」と表現されるもののことです。かぜやインフルエンザで出るせきも、この乾いたせきだとされています。また、たんが出ない乾いたせきでは気道がきれいにならないため、患者はしばしば「すっきりしないせき」と表現することもあるそうです。
反対に、たんが出るようなせきは「湿ったせき」と呼ばれていて、「ゴホンゴホン」といった表現をされます。Husaric氏らによると、湿ったせきが出る下気道は鼻や喉などの上気道より分泌腺が多いため、下気道感染症は湿ったせきを引き起こすとのこと。
しかし、Husaric氏らは「COVID-19は、最初は乾いたせきが出ますが、最終的には湿ったせきになることもあります」と指摘しています。例えば、一般的な感染性肺炎も初期の症状としては乾いたせきが出ることが多いとのこと。しかし、症状が進行すると、肺胞が間質液や血液などで満たされてしまい、湿ったせきが出るようになります。
肺胞がつまってしまうメカニズムについては、以下の記事を読むと良く分かります。
「新型コロナウイルス感染症が進行すると息ができなくなって死に至る」というメカニズムを分かりやすく解説したムービーが登場 - GIGAZINE
世界保健機関(WHO)が2020年2月に発表した(PDFファイル)調査結果でも、COVID-19患者の約33%でたんがみられたとのこと。
ほかにも、百日咳菌を原因とする百日咳でもせきが発生します。この時のせきの特徴としては、「せきが大きく息をすいこむ音で終わる」ことが挙げられます。この時の音は「ゼーゼー」といった音を出すほか、空気を求めてあえぐこともあるとのこと。また、しばしば粘液を吐き出すこともあります。
また、せき自体は呼吸器から異物を排出しようとする正常な反応ですが、あまりにも長期間にわたり強くせき込むと、気道が損傷したり、あばら骨の骨折や筋肉の裂傷を引き起こしたりするおそれもあります。そのため、Husaric氏らは「いつ医療支援が必要になるかを見極めることが重要になります」と述べました。
その上でHusaric氏らは、「せきが出たら、よく注意して下さい。もし治らない場合や悪化した場合は、直接診察を受けたりインターネットを介した遠隔医療の予約をとったりして、医師の診断を受けてください」と述べて、ただのせきと侮るべきではないことを強調しました。
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