「睾丸」が原因で男性の新型コロナウイルス感染症が重病化しやすいという仮説
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、女性よりも男性の方が重症化しやすいという特徴を持っています。「なぜ男性はCOVID-19が重症化しやすいのか?」という疑問に対し、アメリカとインドの医師たちが「新型コロナウイルスが睾丸に隠れることが原因」という仮説を発表しました。
Delayed clearance of SARS-CoV2 in male compared to female patients: High ACE2 expression in testes suggests possible existence of gender-specific viral reservoirs | medRxiv
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.16.20060566v1
Do testicles raise coronavirus risk for men? - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/science/story/2020-04-18/do-testicles-make-men-more-vulnerable-to-coronavirus
COVID-19が重症化するかどうかは、感染した人の年齢や持病に大きく関わりがあることが判明しています。免疫力は加齢とともに低下するため、「高齢者が重症化しやすい」というのはうなずける内容ですが、COVID-19は「女性よりも男性が重症化しやすい」という性別による差があることも判明しています。
COVID-19が重症化しやすい条件は、以下の記事で詳しく解説しています。なお、以下の記事は中国伝染病予防・管理センターの研究に基づいていますが、「高齢者、既往歴を持つ人、男性の重症化リスクが高い」という事実は世界中で確認されています。
新型コロナウイルスの致死率は2.3%で80%以上は軽度症状、ただし致死率は年齢で大きく差が出る - GIGAZINE
男性はCOVID-19の重症化と関連している高血圧、冠動脈疾患を患う率が高く、さらに重症化に大いに関係していると指摘があるタバコを吸う人が多いことから、男性が重症化する割合が高くなっていると考えられていました。しかし、アメリカのアルベルト・アインシュタイン医学校やインドのトピワラ・ナショナル・メディカル大学の医師たちは合同で「男性の重症化は睾丸が原因である」という仮説を2020年4月16日に発表しました。
証拠が発見されたわけではなく、記事作成時点では論文の査読も行われていません。しかし、この仮説を報じたロサンゼルス・タイムズによると、この仮説は2つの重要な事実に基づいているとのこと。
1つ目の重要な事実は、「ある種のウイルスは体の免疫機能を回避するために体内の一部に隠れる性質を持つ」という事実。エボラウイルスはこの性質によって、網膜内の色素細胞に隠れることが知られています。この性質によって、エボラウイルスはエボラ出血熱を完治した患者の網膜に残留し続けます。
2つ目は、「新型コロナウイルスはヒトの細胞内に侵入する際、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と呼ばれる酵素を利用する」という事実です。ACE2は人体に広範囲に存在していますが、特に肺・胃腸・心臓に豊富に存在します。そして、女性の卵巣にはACE2がほとんど存在していない一方で、男性の精巣には、ACE2が高い割合で存在しているとのこと。
この論文の筆頭著者を務めたアルベルト・アインシュタイン医学校のアディティ・シャーストリー氏は、COVID-19に男女差が存在することを確認するため、2日ごとに検査を行って「体内のコロナウイルスがどれだけ迅速に除去されたか」を計測しました。被験者となった女性患者20人の体内から新型コロナウイルスが除去されるまでにかかった時間の中央値は4日でしたが、同じく被験者となった男性48人の体内から除去されるまでにかかった時間の中央値は6日でした。この傾向は、COVID-19を発症した患者本人だけではなく、発症はしなかったもののウイルスに感染した家族にも見られたとのこと。
仮に新型コロナウイルスが精巣が隠れている場合、「精子にも新型コロナウイルスが分泌される可能性がある」とシャーストリー氏は述べて、COVID-19が性感染する可能性を示唆しました。
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