iPhoneを製造するFoxconnがアメリカ国内のビルを1年以上も放置していると判明、ずさんな経営状況も指摘される
任天堂のNintendo SwitchやソニーのPlayStation、AppleのiPhoneなどの生産を請け負う台湾の電子機器メーカー・Foxconnが、アメリカ国内のビルを1年以上も放置していることがわかりました。この一件を報じたニュースサイトThe Vergeは、同社のずさんな経営状況についても言及しています。
Foxconn’s buildings in Wisconsin are still empty, one year later - The Verge
https://www.theverge.com/2020/4/12/21217060/foxconn-wisconsin-innovation-centers-empty-buildings
事の発端は1年前、2019年4月10日にThe Vergeが報じた「ウィスコンシン州に複数存在するFoxconnの『イノベーションセンター』は、予定されていたリノベーションが行われずに放置された状態にある」というニュースです。このニュースに対して、Foxconnアメリカ事業部のアラン・イェン局長は2日後の4月12日に反論を発表。「The Vergeの報道は正しくありません」「木に登って窓越しに中を確認されたようですが、『ビルの中が空っぽ』というのは事実ではありません。今も中にモノは運び入れられていますし、将来的にも空になることはありません」と語っていました。
イェン氏の発言から1年が経過した2020年4月12日、The Vergeはウィスコンシン州オークレア市にあるFoxconnのイノベーションセンターがいまだに空のまま放棄されていると報告しました。以下の写真は、2020年4月10日に撮影された同イノベーションセンターの内部です。わずかばかりの建材が壁際に置かれていますが、ほぼほぼ空っぽといえる状態です。
The Vergeによると、Foxconnはウィスコンシン州オークレア市に「オフィス用」「研究施設用」としてビルを2棟用意すると発表していました。しかし、2棟のうち1棟は上の写真のように建築許可も得られないまま放棄されており、もう1棟は購入すらされていません。Foxconnに内定が決まっていたウィスコンシン大学オークレア校のマット・ジュエル教授は、「何の連絡もない」と報告。さらに、2020年2月に同校で開催された就職説明会にもFoxconnは出展しなかったことがわかっています。
放棄されているのはオークレア市の建物だけではありません。ウィスコンシン州グリーンベイ市のFoxconnのイノベーションセンターも、2019年末に改築の申請を却下されて以来、音沙汰がなくなったとのこと。グリーンベイ地域経済開発局のウェンディ・タウンセンド氏は「近頃Foxconnのチームからは何の連絡もありません」とコメントしています。ラシーン市のビルは2019年1月に改築が完了する予定でしたが、2019年末に改築許可を取得。その後、改築が実際に行われたかは不透明な状況です。
以上のように、ウィスコンシン州においてFoxconnは複数のビルを放置している状況です。The Vergeの取材に対して、Foxconnの元従業員の1人は「私がFoxconnに在籍していた間、収益を生み出していたのは所有していた物件の賃貸事業だけでした」「Foxconnがどのようにイノベーションセンターを活用する予定だったのかはわかりませんが、イノベーションセンターはウィスコンシン州における事業の要になる予定でした」とコメントしています。
また、The VergeはFoxconnのずさんな事業計画についても言及。Foxconnは2017年の段階で「ウィスコンシン州内に180万平方メートルの液晶ディスプレイ工場を建設し、1万3000人の雇用を創出する」として、45億ドル(約4900億円)の助成金を受け取る予定でした。しかし、Foxconnはこの事業計画を変更。雇用予定人数は1万3000人から5200人、そして1000人へと順次削減され、180万平方メートルの液晶ディスプレイ工場も、約20分の1の広さである約9万平方メートルのものに変更されました。
iPhoneを製造するFoxconnが「アメリカにLCD工場を作る」という計画の変更を検討中 - GIGAZINE
The Vergeによると、この事業計画の変遷は今も続いているとのこと。2020年4月頭には、Foxconnはウィスコンシン州に事業計画を改めて提出し、「550人の従業員を雇用する予定で、助成金を受ける資格がある」と主張。そして、4月の第2週には「医療機器メーカーのメドトロニックと提携し、4~6週以内には人工呼吸器の工場を建造する」という計画を発表しました。
Foxconnは189人のフルタイム労働者をすでに雇用したと主張していますが、その後の監査によって契約基準を満たしていることが確認できたのはそのうち113人のみとのこと。この工場は2020年5月に操業開始される予定ですが、The Vergeは「何が生産されるかは、いまだに不透明な状況のまま」だと報じています。
The VergeはFoxconnにコメントを求めましたが、Foxconnは声明を発表していません。
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