サイエンス

隕石の中から自然界では非常に珍しい超伝導物質が発見される


超伝導とは、特定の金属や化合物を極度に冷やした時に電気抵抗が急激になくなる現象のことであり、超伝導を示す物質のことを超伝導物質と呼びます。超伝導物質が自然界で見つかることは非常にまれですが、なんと宇宙から地球へ飛来した隕石の中から超伝導物質が発見されたとアメリカの研究チームが報告しました。

Superconductivity found in meteorites | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2020/03/17/1918056117

Scientists Find a Superconductor in Bits of Meteorite | Gizmodo UK
https://www.gizmodo.co.uk/2020/03/scientists-find-a-superconductor-in-bits-of-meteorite/

Superconductivity Has Been Discovered in Meteorites For The First Time
https://www.sciencealert.com/superconductivity-has-been-discovered-in-meteorites-for-the-first-time


超伝導物質は磁気測定装置や核磁気共鳴画像法(MRI)などの測定機器で既に活用されているほか、リニアモーターカーや量子コンピューターでの利用も期待されています。その一方で、超伝導物質が自然界から発見された事例はほとんどなく、既知の超伝導物質もほぼ全てが人工的に生成されたものでした。

そんな中、さまざまなサンプルから超電導物質を発見しようと試みていたカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、「宇宙の極端な環境では、信じられないほどの高温と圧力が発生する可能性を持つ天文学的イベントにより、地球上では見られない物質が現れるかもしれない」という発想に基づき、宇宙から飛来した隕石の中から超伝導物質を探す研究を行ったとのこと。

過去にも隕石の中から珍しい物質が発見された事例はいくつか報告されており、地球外のタンパク質地球上には存在しない鉱物太陽系よりも古い物質など、さまざまな物質が隕石から発見されています。しかし、隕石の中に超伝導物質が含まれているという報告はこれまでのところありませんでした。

by Graeme Churchard

研究チームは「magnetic field modulated microwave spectroscopy(磁場変調マイクロ波分光法)」という手法を用いて隕石サンプルを調査し、隕石の内部に超伝導物質が存在するかどうかを調べたとのこと。この分析手法は、マイクロ波と振動磁場で満たされた穴にサンプルの破片を入れ、次第に温度を下げていくことで物質が超電導を示すかどうかを見極めるというもの。サンプルが導体から超電導に移行すると、サンプルがマイクロ波を吸収する方法が劇的に変化するそうです。

15個の異なる隕石から採取したサンプルについて分析を行った結果、研究チームは1911年にオーストラリアで発見された史上最大の隕石の一つ「マンドラビラ隕石」と、1995年に北極で発見された「GRA 95205」という隕石の中から超伝導物質を発見しました。サンプルが地球の物質で汚染されていた可能性も考慮し、研究チームはサンプルを外部機関に送って電子顕微鏡を用いた検査を実施してもらいましたが、隕石に含まれる超伝導物質が地球外に由来するものであると確かめられたとのこと。

振動試料型磁力計による磁気測定やエネルギー分散型X線分析による測定の結果、2つの隕石から発見された超伝導物質はインジウムスズの合金だと判明。この超伝導物質の組成自体は既に発見されていたものでしたが、「自然界に存在する超伝導物質は珍しく、これらの材料は地球外の環境で実際に超電導を示す可能性があるため、非常に重要です」と論文の筆頭著者であるJames Wampler氏は述べています。


今回、2つの異なった隕石から採取された小さなサンプルからそれぞれ超伝導物質が発見されたという事実は、超伝導物質が宇宙空間に多数存在している可能性が高いことを示しています。また、宇宙空間には極度に温度が低い環境も存在することから、研究チームは「温度が極端に低い領域に存在する超伝導物質は、恒星などの天体における構成に影響を与えるかもしれません」とコメント。極度の低温状態で超伝導性を帯びた超伝導物質が周囲の磁場に影響を与え、さまざまな影響を与えている可能性があると示唆しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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