1本の苗木から2万平方メートルの巨大な森を作り出した83歳の女性
たった1人の女性が1本の苗木から、1本、また1本と庭に植える木の数を増やし、ついには2万平方メートルを越える巨大な森を作ったとして話題となっています。40年にわたる活動で「人々の意識を高めた」として環境への貢献がたたえられ、インド大統領から表彰されるまでとなった人物について、YouTubeでドキュメンタリームービーが公開中です。
A grandmother made a forest on her own: National and State award winning documentary. - YouTube
ムービーに映し出されたうっそうとした森は、「母なる大地」ならぬ「祖母の森」(Grandma’s Forest)と呼ばれています。なぜ祖母の森と呼ばれているのかというと……
1人の女性が40年かけてこの森を作り上げたから。
孫たちと一緒に森に入っていくのが83歳のデヴァキ・アンマさん。
アンマさんの夫の家族は何世代にもわたり農産業に携わってきました。男性は企業での仕事、女性は水稲栽培を行ってきており、アンマさんも結婚後に水稲栽培を行うようになったのですが、1980年に事故で足を負傷します。アンマさんは医者から「数年は歩かない方がいい」と言われたそうです。
幼い頃、父親と一緒に苗を植える作業をしていたというアンマさんは、もともと植物に親しみを感じていました。水稲栽培を行えなくなったアンマさんですが、事故から3年たったある日、自宅の裏庭に苗木を1本植えたとのこと。苗木は1本、また1本と増え、ついには2万平方メートルを超える大きな森が生み出されました。
1本の苗木が森になる過程で、アンマさんは子どもたちや親戚たちに苗木を植える手伝いをしてもらったそうです。
「私が木々を植えたのは自分の幸福と静穏のためですが、母なる地球は私にこの森を授けてくれました」「地球は人間だけのものではなく、全ての生き物のためのものです。毎日私は愛しい木々だけでなく地球上全ての生き物たちのために祈ります」とアンマさん。
祖母の森があるケララはもともと乾いた土地であり、木々を育てるには向いていません。しかし、アンマさんが40年にわたり木々を大切に育てたことにより、2020年時点で1000本近くの木が植わっています。
アンマさんの娘も植物への愛を引き継ぎ、インドのエンジニアリング・トリバンドラム大学で環境学部長を務めています。ムービーにはD Thankamani教授として登場し、「木々は自分の重量の半分に等しい炭素を蓄えています。木々は二酸化炭素を吸収し、それを炭素として蓄えているのです。木々が死ぬと炭素は土へと預けられます」と解説。
祖母の森にはさまざまな果実が実を付け……
花が咲き……
魚が泳ぎ……
珍しいカメまで生息します。
「木によって好みがあり、一緒になって育つのが好きな木があれば、そうではない木もあります」と語るアンマさん。
アンマさんの子どもや孫たちも植物に対する関心が高く、「近年、自然は搾取対象となっています。私たちの多くは環境の日にしか環境について考えませんが、偉大な祖母の活動を目にすることで、毎日環境について考えるようになりました」と孫である少女たちは語っています。
ウニクリシュナ・ピライ教授は多様な植物が森に存在することの重要性を強調。「単一栽培は生物の多様性を破壊します。私たちは異種の木々を植える必要があるのです。これは地域の生物多様性を保存するのに役立ちます」とコメントしました。
「母が私に環境エンジニアリングについて学ぶというインスピレーションをくれました。そして勉強を終えた後に、われわれの祖先が家の敷地内で自然を保存する知恵を持っていたということに気づいたのです」と語るThankamani教授。
「多くの来訪者が森を見にやってきて、インスピレーションを受けて自分の家に木を植えます。今日の若者世代は自然についてしっかりと気付きを持っていますよ。彼らは植物を世話していくと思います」「私が死んでも、孫たちやその子孫たちは私を覚えてくれるでしょう。『ひいおばあちゃんがこの森を作ったんだよ』と語ってくれるでしょう」とアンマさんは語りました。
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