サイエンス

「木々は会話し複雑な社会生活を送っている」と専門家、私たちは木々の言葉を理解できるのか?

by Sebastian Unrau

これまで多くの人が「木々は光や場所を求めて生存競争をしている」と考えてきましたが、近年の研究によって木々はハブとネットワークから構成される複雑な社会生活を持っており、互いにコミュニケーションを取り協力しあって生きていることがわかってきました。木々が使う「言葉」とはどういうもので、どうすれば人間が理解することはできるのか?を複数の科学者や専門家が説明しています。

A biologist believes that trees speak a language we can learn — Quartz
https://qz.com/1116991/a-biologist-believes-that-trees-speak-a-language-we-can-learn/


言葉を話すのは一部の限られた生き物だけであるとこれまでは考えられてきましたが、近年になって「木々は会話を行っており、人間はその言葉を学ぶことができる」という主張が生物学者や生態学者から主張されるようになりました。例えば、「ミクロの森: 1m2の原生林が語る生命・進化・地球」の著者であり生物学者のデヴィッド・ジョージ・ハスケル氏は「木々のネットワークつながりはコミュニケーションを必要とし、言葉を生み出すものです。そして自然のネットワークを理解するにはまず、木々のおしゃべりに耳を傾ける必要があります」と語っています。

上記のような概念は都会で生まれ育った人々には理解が難しいところですが、ハスケル氏によると、エクアドル・アマゾンに住むワオラニ族には、自然のネットワークの特性や生きとし生けるものはコミュニケーションを取っているという発想は当たり前のことだとのこと。そのため、ワオラニ族の言葉の中にも木々と周囲のものとの関係が反映されているそうです。

例えば、多くの人は「セイボの木」を見た時に「セイボの木」として表現しますが、ワオラニ族は「セイボの木が枯れている」という言葉の使い方をしません。彼らは木々について表現する時に「あのツタに覆われているセイボの木」「黒いキノコと藻が多いセイボの木」という言葉を使い、単なる「セイボの木」という言葉遣いは存在しないのです。個々の「種の名前」が存在せず、周囲の草木との関わりあいなど、生態学的な背景なしに名前を呼ぶことがないので、言語学者はワオラニ族の言葉を翻訳する時に苦労するとのこと。このように、木々が生き物として周囲の人間や他の生き物たち密に関わっていると認識しているワオラニ族は「木は切られる時に叫び声をあげる」「木々を痛めつけると人類によくないことが起こる」という、私たちの多くが否定してしまうであろう考えを自然に受け入れることができます。

また、森について30年間研究し続けてきた生態学者のスザンヌ・シマード氏も「木々は言語を持つ」というコンセプトを当然のものとして受け止めています。

2016年6月にシマード氏はTED Talkに出演して木々の会話について語っており、ムービーはYouTubeで25万回、TED Talkの公式サイトでは250万回も再生されています。以下のムービーから日本語字幕付でプレゼンの内容を見ることが可能です。

How trees talk to each other | Suzanne Simard - YouTube


シマード氏はカナダ・ブリティッシュコロンビア州の森の中で育ち、大学で森林学を学び、卒業してからは伐採産業で働いていました。しかし、木々を伐採することに抵抗を感じだしたことから大学に戻って木々のコミュニケーションについての研究を開始。2017年現在はブリティッシュコロンビア大学で生態学を教えつつ、「木々は地面の下で菌類によるネットワークを作り、互いにコミュニケーションを取り影響しあっている」という内容の研究を行っています。

シマード氏の研究で明らかになったのは、木々の根には特有の構造を持った菌根という共生体が存在し、この菌根によってネットワークを形成することで同種の樹木だけではなく異なる樹木間でもコミュニケーションが取られているということ。科学的に説明すると、木々は炭素・窒素・リン・水・防御信号・アレル化物質・ホルモンなどを言葉として「会話」をしているとシマード氏は語っています。木々が生存競争を行っていることは明白ですが、競争だけでなく「お手伝いしましょうか?」「少し炭素をわけてくれませんか?誰かが私の上に布をかぶせて日陰になっているのです」といったような協力もしているのです。

by mali maeder

そして木々の集合体にはハブとなる「母なる木」が存在し、ハブとネットワークによって森林は複雑なシステムを形成しています。ほ乳類の母親と同じように、「母なる木」は子どもたちを自分の保護下に置き、菌根ネットワークを広げ、自分の子どもたちには地下で多くの炭素を送ります。また、自分の根が広がりすぎないようにして子どもたちが根を伸ばせる場所を作るとのこと。そして、この「母なる木」が何らかの理由で痛手を負うと森は元に戻れなくなります。森の複雑なシステム自体が崩壊してしまうのです。

シマード氏はムービーの中で「森についての考え方を変えて欲しいと思っています。地面の下は別世界になっていて、木々をつなげ、コミュニケーションを可能にし、森を1つの有機体のように活動させています。まるで知性を持った有機体みたいに」と語りました。

山林学の専門家であり世界的ベストセラー「樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声」の著者でもあるペーター・ ヴォールレーベン氏はドイツの古いカバ森林を管理していて、シマード氏らと同様のことに気づいたといいます。The Guardianのインタビューによると、ヴォールレーベン氏も500年以上続く森を管理することで、木々が複雑な社会生活を送っていることに気づいたとのこと。樹木が根を介して砂糖液を隣の木に送っている様子を見て「私は『木々は光や空間を求めて互いに競争している』と学びましたが、正反対のことを目にしました。樹木はコミュニティーのメンバーを生かそうとしているのです」と語っています。

食べ物を確保し、住む場所を提供し、きれいな水と空気を与えて、多様性を生み出しくれ、貧困を撲滅し、気候変動を緩やかにしてくれるなど、数々の問題にとって森は重要な要素です。ハスケル氏は木々のことを「生態学の哲学者」と呼んでおり、複雑なネットワークを管理するコミュニケーションとつながりの達人である木々の会話に人々は耳を傾けるべきだという考えを示しました。

歴史的に見て文学や音楽はマツの木のささやき、枝の落ちる音、木々のさざめきなどを反映しており、多くのアーティストたちは「木々の言語」という言葉を使わずに根本的なレベルで木々の会話を理解してきました。私たち人間が木々の言語を理解することは可能であり、もし理解することができれば「自分のいる場所から動かずして地球上に種を繁栄させる方法」を木々から学べるはずです。

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