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植物に「意識」はあるのか?

by - bjornsphoto -

「植物は意識や知性を持たない」と一般には考えられているものの、植物学者や哲学者らの間では「植物には意識があるのではないか」と真剣に議論されているようです。

A debate over plant consciousness is forcing us to confront the limitations of the human mind — Quartz
https://qz.com/1294941/a-debate-over-plant-consciousness-is-forcing-us-to-confront-the-limitations-of-the-human-mind/

1880年、進化論を唱えたチャールズ・ダーウィン氏は「植物の運動力」という本を発表しました。「植物に意識や知性はあるのか?」という疑問を学会に投げかけたダーウィン氏の研究結果は大きな議論を巻き起こし、1世紀以上が経過した21世紀でも、植物に意識があるのかという議論が続いています。

植物学者は植物が根・枝・葉を介して化学物質を伝達してお互いに会話しており、非常に複雑な生態を持っていると主張しています。また、植物は互いに情報を伝達するだけでなく、栄養が不足している近くの植物に栄養を与えるなど、利他的な行動をとる場合もあるとのこと。

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さらに、植物には水に向かって根を伸ばしたり、音を聞いたりすることもできるほか、自らを防御するメカニズムまで持っています。進化生態学者のモニカ・ガリアーノ氏がオジギソウを使用して行った2014年の実験では、非常に低い高さから鉢植えのオジギソウを落下させ、オジギソウの葉がどのような防御反応を取るのかについて研究しました。すると、オジギソウは最初のうちこそ落下に対して葉が防御するように反応していたものの、次第に「落とされたところで害はない」ことを学習していき、落下に対しての防御反応を取らなくなっていったそうです。

by James Petts

以上の研究から、「植物には学習機能があるのではないか」という推察がなされていますが、それを「意識」と呼ぶのかどうかは人間の認識次第だとのこと。植物学者のデヴァン・メータ氏は「遠慮なく言わせてもらえば、植物に知性や意識といったものはありません」と、植物に意識があるという意見に強く反対しています。

メータ氏は2017年、「麻酔によって植物の動きを止める」という実験を行いました。麻酔薬によって植物から動きが失われたという実験結果を受けて、ニューヨーク・タイムズが「植物には意識がある。なぜなら、麻酔によって植物の意識が失われたということは、失われる前には意識があったことになるからだ」という趣旨の記事を書きました。

ニューヨーク・タイムズの記事に対してメータ氏は、「自分が発表した実験結果から記事の間で論理の飛躍が起きている」と反対する意見を発表しています。「第一に、人間と動物の話をしている時でさえ、『意識』についての定義は揺れています。第二に、植物には少なくとも動物にあるような神経系がありません。第三に、麻酔薬が人間や動物に作用するメカニズムの多くは謎に包まれていますが、麻酔薬が植物に化学的な作用をもたらしてはならないという理由にはならないのです」とメータ氏は述べており、植物の複雑さに尊敬の念を抱くことは間違っていないものの、あえて擬人化して語る必要はないとの見解を示しています。

by Takayuki Miki

テルアビブ大学の植物研究センター所長であるダニエル・シャモヴィッツ氏はメータ氏と同様、植物は非常に複雑な機構を持っているものの、意識や知性を持っているわけではないと語りました。「細菌を含むすべての生物は、生き残るために驚くべき機能を有しています。植物は自己を認識をすることもなければ、私たちが他の人間を気にするように、植物が他の植物を気にすることもありません」とシャモヴィッツ氏は述べました。

一方で、バスク大学の哲学教授であるマイケル・マーダー氏は、「人間は植物を過小評価しています」と語り、植物は周囲を気にすることもあれば、知能も有していると主張しています。マーダー氏によれば植物は周囲の環境に関する情報を集め、気温などの変化に対応して開花時期を調節する機能を持っているため、「知識を持っていることが意識を持っていることと定義するならば、植物は意識を持っているといえます」とのこと。

マーダー氏は植物が互いにコミュニケーションをとり、集団としての意思決定を行うと主張。植物は個々の個体がそれぞれ別の意識を持っているのではなく、ある程度の範囲に分散して存在しているものだとマーダー氏は考えており、人間の「意識は個人のうちに存在する」という観念が、植物意識の存在を許容しづらくしているとしています。

by Miguel Vicente Martínez Juan

オジギソウの学習機能についての実験を行ったガリアーノ氏はマーダー氏と同じく、「植物は人間や他の動物のような中枢神経系を持たないが、知能を持つ生物と同様に行動します」と主張しています。ガリアーノ氏は、研究者らが植物を擬人化して語ることの危険性については承知しているものの、植物の意識のありようが人間の意識とは大きく異なるため、擬人化して主張しなければ人々が理解できないのだとしています。

「植物には意識がある」と認めることは、「サラダを作ったり、家を建てるために木を伐採したりすることも一種の殺生である」という主張につながりかねず、ある意味では非常にデリケートな問題です。しかし、それ以上に意識と知能の定義を植物にまで拡大していくことは、これまでの一般認識が限定的だったことを自覚し、新たな発見につながることだともいえます。

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in メモ,   生き物, Posted by log1h_ik

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