生き物

「植物は意識を持たない」と科学者がわざわざ論文で主張する理由とは?

By Annie Spratt

「植物は意識を持つのか」という議論は昔からあるものです。しかし2006年、生物学に「Plant Neurobiology(植物神経科学)」という「植物の持つ意識」に関する新たな学問分野が登場し、「植物は意識を持つ派」が本格的に台頭してきました。そんな中、植物は意識を持たない派から反論となる論文が発表されています。

Plants Neither Possess nor Require Consciousness: Trends in Plant Science
https://www.cell.com/trends/plant-science/fulltext/S1360-1385(19)30126-8

Plants don’t think, they grow: The case against plant consciousness
https://news.ucsc.edu/2019/07/plant-consciousness.html

研究を発表したのは、大学の教科書としても使われることのある「植物生理学・発生学」などの著者でもあるリンカーン・テイツ教授率いる生物学者のグループです。発表された論文「植物は意識を持たない、持つ必要もない(Plants Neither Possess nor Require Consciousness)」と題され、その内容は「植物神経科学」に対する「反論」です。

植物神経科学者の主張としては、「植物の電気信号伝達機能と動物の神経系に類似点があるので、植物は思考をしている」というものが主流です。

植物に「意識」はあるのか? - GIGAZINE


植物は電気信号を活用して、イオンチャネルを使って細胞膜を透過する荷電分子を選別したり、植物の内部を通じて枝葉の末端に命令を下したりしています。荷電分子を選別することによって、体外に水分を排出して葉を丸めたり、内部の電気信号伝達を活用して、たった1枚の葉が虫に食べられたとしても木全体で防御反応を取ったりすることができるわけです。

By manfredxy

しかし研究グループは植物の電気信号伝達機能は隣接細胞と伝達があるわけではなく、あくまで「他の細胞とコミュニケーションをしているわけではない」と主張。「植物の神経伝達は自然淘汰を経た遺伝的なプログラムで、動物の脳と比較することは脳機能の本質である驚くべき複雑さを無視している」と非難しています。

哺乳類は痛みを受けると体性感覚や、大脳新皮質・扁桃体・視床下部・脳幹などの大規模なネットワークを活性化させ、感覚的・認知的・感情的なさまざまな反応を引き起こします。一方で、「植物が痛みを感じるのか?」というトピックにおいては、植物も刺したり切ったりといった刺激に対して反応を示すといわれますが、これは「痛み」を感じているわけではなく、あくまで生物の有する基本的な特性で、意識とは関連性がないと研究グループは主張しています。

By vlad_star

また、刺激に対して葉を閉ざす性質を持つオジギソウを低い位置から何度も落下させると、次第に「落とされても害はない」と学習して葉を閉ざさなくなるという2014年の研究について、実験において、揺らすことによって葉に伝わる刺激は落下の衝撃よりもかなり強いため、「オジギソウが落下から学習している」という主張するには実験手法に問題があると指摘しています。

テイツ教授は、「植物と動物は非常に異なる生存戦略を発展させました。脳は非常に高コストの器官であり、動物のような神経系を有することは植物にとって利点がありません」と語っており、植物神経科学に対して「公的に取り扱うには、あまりにも多くの問題について未解決のままです」と指摘しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
植物に「意識」はあるのか? - GIGAZINE

動物に「意識」はあるのか? - GIGAZINE

「意識」とは一体なんなのか? - GIGAZINE

「木々は会話し複雑な社会生活を送っている」と専門家、私たちは木々の言葉を理解できるのか? - GIGAZINE

植物は音を「聞く」ことが可能と判明 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.