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「彼氏がいないのでゲイではない」という理由で68歳の亡命希望者が国外追放されかける


イスラム教の影響が強いマレーシアでは、同性愛は法律で明確に禁じられた犯罪で、違反者にはむち打ち刑などの刑罰が科されることもあります。こうした状況から逃れようと、マレーシアからイギリスへの亡命を希望していた68歳の男性に対し、イギリス当局から亡命を認める決定が下されたと報じられています。

Home Office gives man asylum after accepting people can be gay and single | UK news | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2019/dec/23/home-office-gives-man-asylum-after-accepting-people-can-be-gay-and-single

Asylum court told me because I didn't have a boyfriend I wasn't gay - Liverpool Echo
https://www.liverpoolecho.co.uk/news/liverpool-news/asylum-court-told-because-didnt-17625441


マレーシア人だったイー・フック・サム氏が旅行ビザでイギリスに入国したのは、2005年のこと。それ以来イギリス南西端にあるコーンウォールの中華料理店で働いていたサム氏ですが、2015年にイギリス内務省の職員に摘発され、拘置所に入れられた後リバプールに移送されました。

サム氏はマレーシアからイギリスに来た理由について、「30歳の時に女性と結婚し2児をもうけましたが、私がタイでレディーボーイとセックスしたことからゲイであることが明るみに出ると、妻は子どもを連れてアメリカに行ってしまいました。マレーシアではゲイとして公然と生きていくことができないので、イギリスで安息を見いだそうとしたのです」と説明しています。

もしイギリスから国外追放されてマレーシアに帰国することを余儀なくされた場合、同性愛を理由に投獄されるおそれがあったことから、サム氏は自身がゲイであることを主張し、イギリス内務省に対し亡命を希望しました。亡命申請の適否を争う裁判の中でイギリス当局は、サム氏が入国してから逮捕されるまでの間に誰かと同性愛的な関係を結んだ形跡がないことを指摘。また、サム氏が入国審査官に対し、2011年ごろにイギリスの売春宿で女性とセックスしたと認めていたことも問題視しました。

これに対し、サム氏は「私は目下、亡命希望者に支給されている1日当たり5ポンド(約700円)の費用で生活しており、食べるにも事欠いています。当然、デートに行く余裕もありません。それに、私は背も低いし太っている上に、ボーイフレンドを見つけるには年を取りすぎています」と訴えました。


また法廷にはサム氏の友人として、マンチェスターのクリスティー病院施設付の聖職者を務めているニック・キャンベル氏も出廷。移民担当判事に対して「私はサム氏がゲイであることを確信しています。彼はその人生の大半を、性的指向を公表していないクローゼットとして過ごしてきた男性に特有の特徴を数多く持っています」と証言しました。

最終的に、裁判所は8度にわたる裁判の末「サム氏が同性愛者であるという主張には多くの矛盾がある」として、出国まで5年間の猶予を与えつつも亡命申請は認めないとの判決を下しました。サム氏はその時のことを「同性愛者ではないといわれ、私はとても落ち込みました。もうセックスはしないのに、どうすれば同性愛者だと証明すればいいのか分かりませんでした」と述懐しています。

遠からずイギリスを去らなければならなくなったサム氏の支えになったのが、リバプールに到着した時から通っているセント・ブライズ・チャーチ主催のOpen Table LGBTQIA+グループです。Open Table LGBTQIA+がサム氏を国外追放しないよう求めるオンライン請願を展開すると、5000人近い署名が集まったとのこと。


こうした支援を受けて、サム氏は2019年2月に再度亡命申請を行うことを決意。「逮捕されるまではきちんを働いて生計を立てていたので、同性愛を理由とした亡命申請をしなかった」という主張の根拠資料となる納税記録や国民保険の記録を提出しました。その結果、同年12月に内務省からサム氏に「亡命申請を受諾する」との連絡が入ったとのこと。

その時のことをサム氏は「人生で最高のクリスマスプレゼントでした。移民担当弁護士からこの知らせを受けたとき、私はちょうどシティ・オブ・リバプールカレッジで勉強していましたが、うれしさのあまり歓声を上げてしまったので、クラスメートが不思議そうな顔をしていました」と振り返っています。


イギリス当局の広報担当者は、イギリスの大手新聞社The Guardianの取材に対し「我が政府は、性的指向や性自認を理由に迫害されている亡命希望者を保護するという、輝かしい実績を持っています。亡命の申請については、適切な証拠や情報をもとに、経験豊富なケースワーカーが個人の利益について慎重に検討します」と回答しました。

晴れてイギリスに受け入れられることになったサム氏は今後、ツアーガイドとしてリバプールを訪れるアジア人旅行者を案内するつもりだとのこと。「私は以前にも、オーストラリア・日本・韓国・香港・中国・タイ・シンガポールでガイドをした経験があります。リバプールの人々は誰もが親切ですてきな街なので、私はリバプールが大好きです」とサム氏は語りました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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