「ノーブランド」のNICは何者なのか、果たして使い物になるのか検証してみた
コンピューターを構成するパーツのひとつである「NIC」は、主にEthernetで使用するRJ45コネクタを搭載した拡張カードのことを指すのが一般的です。高性能なNICは数万円と値が張るパーツですが、そうした高性能なNICと同じチップを搭載していると説明があり、しかも格安で販売されている「ノーブランド」のNICが存在します。実際にノーブランドのNICを購入して、その正体と性能を確かめてみました。
・目次
◆購入経路と外観
◆「ノーブランド」の正体
◆「ノーブランド」の性能
◆購入経路と外観
今回はオリオスペックで2ポートのNIC「NB-INT-I350T2-S」を税込3850円で購入。仮想化技術のひとつであるSR-IOVに対応している「Intel I350-AM2」コントローラーを搭載したノーブランドのNICを選びました。
ノーブランド NB-INT-I350T2-S Intel I350-AM2 搭載 1GbE RJ-45 2ポート | ストレージ,ネットワーク,ネットワークカード ギガビット,NB Intel | OLIOSPEC
https://www.oliospec.com/shopdetail/000000008827/ct1320/page1/order/
ちなみに、同等のコントローラーを搭載している2ポートのIntel純正品は希望小売価格128ドル(約1万4000円)~138ドル(約1万5000円)なので、ノーブランドのNICは純正品のおよそ4分の1の価格で販売されていることになります。
インテル® イーサネット・サーバー・アダプター I350-T2V2 製品仕様
https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/84804/intel-ethernet-server-adapter-i350-t2v2.html
購入したNICは装飾のない段ボールに入った状態で届きました。
内容物はNIC本体、ロープロファイルブラケット、取扱説明書、ドライバーインストール用CDです。
NIC本体はこんな感じ。
基板のはんだ割れなどは見られません。
NICの裏面はこんな感じで、MACアドレスが記載されたシールが貼られていました。
1GbE対応のLANポートが2つ搭載されています。
◆「ノーブランド」の正体
ノーブランドのNICは一体どこで製造されているのか気になったので、MACアドレスから製造元を検索してくれるサイト「MACアドレス検索」でNICの製造元を調べてみることに。
MACアドレス検索 - UIC
https://uic.jp/mac/
さっそくNICのMACアドレスを入力し検索してみると、「IEEE Registration Authority」がヒットしました。これは製造元ではなく、MACアドレスを登録する管理機関の名称です。
MACアドレスで製造元を特定できなかったので、今度は外箱に記載されていたプロダクトネーム「SE-LGI350A-2BT」をGoogleで検索してみると、AliExpressでも販売されていることがわかりました。
今回購入したNICと同じシグナルトランス「Pulse H5007NL」が使用され、プリント基板のパターンやヒートシンクの形状が酷似しているNICが販売されていました。
SE LGI350A 2BT PCI E X4 2 ポートギガビット用イーサネット NIC ネットワークカードインテル (R) i350AM2 ギガビットイーサネットネットワークカード - AliExpress | Alibaba グループ上の パソコン & オフィス からの ネットワークカード の中
https://ja.aliexpress.com/item/33052442097.html
対応OSが「勝利 7/server 2012 の/server 2008 の/勝利 8/勝利 8.1/server 2016 の/勝利 10」となっており、若干翻訳が怪しいものの、AliExpressにはオリオスペックよりもNICの仕様が詳しく記載されていました。製造元の手がかりがつかめるかと思いましたが、製造元の情報はありませんでした。
製造元を調べるため、海外のECサイトを片っ端から調べていると、韓国の大手ECサイト「Gmarket」に、購入したNICと非常によく似た製品が販売されているのを発見。「NEXT NETWORK」という会社が製造しているようです。
M[넥스트네트워크] 오늘출발 NEXT-462DCP EX/랜카드/인텔/듀얼/기가비트
http://item.gmarket.co.kr/Item?goodscode=1626676578
NEXT NETWORKのホームページにアクセスすると、スイッチなどのネットワーク機器やPCの周辺機器を製造・販売している会社だとわかります。
NEXT NETWORK
http://ez-net.co.kr/new_2012/main/main.php
ページ内を探すと、AliExpressで販売されていたものと同じ製品を発見しました。
以前オリオスペックで購入したノーブランドの4ポートNIC「NB-INT-I350T4-S」とまったく同じ製品も発見。
ページを下に進めると、今回購入したNICに同封されていたCDの画像を見つけました。NEXT NETWORKがNICを別会社から購入し、自社製品として販売していることも考えられますが、今回購入したノーブランドのNICはNEXT NETWORK製である可能性が高いことがわかりました。
◆「ノーブランド」の性能
「ブランドがよくわからなくても使えればOK」ということで、さっそく性能を確認するため、NICをサーバーに取り付けます。今回はUbuntu 18.04をインストールしたサーバーを使用。
まずはiPerfを使用して帯域を測定します。サーバーとして使用するPCとクライアントとして使用するノートPCをLANケーブルで直結し、IPアドレスやネットマスクを設定しておきます。
準備ができたら、サーバー側でiPerfをサーバーモードで起動しておきます。
クライアント側でiPerfをクライアントモードで実行すると、結果が表示されました。1GbEの最大速度である1Gbpsをおおよそ維持しているので、帯域については問題ないことがわかりました。
続いて仮想化機能のSR-IOVが使えるか確認します。SR-IOVを使用するためには、マザーボードがSR-IOVに対応している必要があります。SR-IOVを有効にする方法については、下記のサイトを参考にしました。
OpenStack Docs: SR-IOV 機能を使用する
https://docs.openstack.org/mitaka/ja/networking-guide/config-sriov.html
BIOS上でVT-dとSR-IOVを有効にした後、OSを起動して「/etc/default/grub」に下記の記述を追記します。
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="nomdmonddf nomdmonisw intel_iommu=on"
追記したら、設定を適用するため、下記コマンドを実行。
sudo update-grub sudo reboot
再起動が完了したら、1つの物理インターフェースにつき何個仮想インターフェースが作成可能かを調べるため、下記コマンドを実行。
cat /sys/class/net/eth2/device/sriov_totalvfs
今回購入したNICは物理インターフェースが2つあるので、それぞれの物理インターフェースに対しコマンドを実行したところ、1つの物理インターフェースあたり7個の仮想インターフェースを作成できることがわかりました。
仮想インターフェースを作成するため、rootユーザーで下記コマンドを物理インターフェースごとに実行。echoの後に続く数字を変更することで作成する仮想インターフェースの数を変更できます。
echo '1' > /sys/class/net/eth2/device/sriov_numvfs
実行後、lspciコマンドを実行すると、仮想インターフェイスが作成されているのが確認できました。ノーブランドのNICでもSR-IOVが使用できるようです。
純正品に比べて格段に安い「ノーブランド」のNICでしたが、表記されている性能や機能はきちんと備えていることがわかりました。
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