セキュリティ

国際的な暗号機メーカーがアメリカとドイツの諜報機関と協力して通信を傍受していたと判明

by ☰☵ Michele M. F.

スイスに本拠を置く国際的な暗号機メーカーのクリプトという企業が、アメリカの諜報機関である中央情報局(CIA)とドイツの諜報機関である連邦情報局(BND)によって運営され、暗号機を使った通信を傍受していたことが判明して大きなスキャンダルとなっています。

How the CIA used Crypto AG encryption devices to spy on countries for decades - Washington Post
https://www.washingtonpost.com/graphics/2020/world/national-security/cia-crypto-encryption-machines-espionage/

CIA controlled global encryption company for decades, says report | US news | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2020/feb/11/crypto-ag-cia-bnd-germany-intelligence-report

Swiss investigate report that firm helped CIA break codes - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-swiss-cyber/swiss-investigate-report-that-firm-helped-cia-break-codes-idUSKBN2051X2

Swiss probing alleged CIA, German front company linked to breaking nations' codes for decades | The Japan Times
https://www.japantimes.co.jp/news/2020/02/12/business/swiss-probing-alleged-cia-german-front-company-linked-breaking-nations-codes-decades/


クリプトは1920年に設立された暗号機メーカーであり、1925年にロシア生まれのスウェーデン人であるボリス・ハーゲリンによって買い取られました。第二次世界大戦が始まるとハーゲリンは中立国のスイスへと移り、高性能なポータブル暗号機をアメリカ軍に対して14万台も販売して会社の規模を拡大したそうです。

スイス政府は2020年2月11日、スイスのツークに本拠を置く暗号機メーカーのクリプトがCIAとBNDによって運営されており、クリプト製暗号機を通じて諜報機関が外国の通信を傍受することを可能にしていた疑惑があるとして、調査を開始したと発表しました。ワシントン・ポストなどの報道によると、クリプトは自社の暗号機に設けられたバックドアを通じてCIAやBNDが外国の通信を傍受することを可能にしただけでなく、暗号機の販売で得た利益の一部を受け取っていたとのこと。


CIAとBNDは1970年ごろから、スタッフの雇用・暗号技術の設計・暗号機の販売といった、クリプトのほぼ全ての業務を支配するようになったそうです。冷戦当時にアメリカと敵対していたソ連や中国はクリプトの暗号機を購入していなかったものの、イランやインド、パキスタン、ラテンアメリカの軍事政権、バチカン市国などを含む100カ国以上の国々が、クリプトの暗号機を購入していました。

また、アメリカとドイツ以外の政府機関がクリプトの暗号機を用いた通信内容にアクセスすることを許可されるケースもあったそうで、少なくともイスラエル、イギリス、スウェーデン、スイスの4カ国は傍受された通信内容のいくつかにアクセス可能だったとのこと。

クリプト製暗号機による通信を傍受することで、アメリカは1979年に発生したイランアメリカ大使館人質事件においてイラン側の動向を監視し、フォークランド紛争においてアルゼンチン軍に関する情報をイギリス側に提供し、1986年にベルリンのディスコで発生した爆弾事件においてリビア当局の関与を確認したと報じられています。「これは世紀の諜報的成功でした」と、CIAのレポートには記されていたそうです。

by Mike Holmes

今回の報道以前から、クリプトが西側諸国の諜報機関とつながっているという疑惑はあったとのこと。1994年にはクリプトと諜報機関にまつわる疑惑について、クリプトが「信じられない陰謀論です」と述べて、疑惑を否定していました。

冷戦後にドイツはクリプトの運営から手を引いてCIAがクリプトを引き取ったそうで、2018年にはCrypto InternationalとCyOne Security AGという2つの企業に分割され、CIAもクリプトから手を引いたと報じられています。今回の報道を受けたCrypto Internationalは「現在は新しい所有者の元にあり、CIAやBNDと関係ありません」と主張し、CyOne Security AGも「現在はスイス国内の公共部門に対するソリューションに重点を置いており、クリプトからは完全に独立しています」とコメントしました。

スイス国防省の広報担当者であるCarolina Bohren氏は、2019年11月にスイス国防総省は内閣へとクリプトの疑惑について通知しており、Niklaus Oberholzer前スイス最高裁判所裁判官を中心として捜査が行われていると認めています。一連の疑惑に関するレポートは2020年6月末までにまとめられる予定ですが、「議論の的となっているイベントは1945年にまでさかのぼり、現時点で再構築することは解釈することは困難です」と、Bohren氏は述べています。

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in ハードウェア,   セキュリティ, Posted by log1h_ik

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