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次世代通信規格の5Gは「政治の道具として過剰に宣伝されている」という批判


第5世代移動通信システム(5G)は、従来の無線通信に比べて高速大容量・低遅延・多数同時接続をうたう次世代の通信規格で、日本では既に通信試験サービスが実施されており、2020年には商用サービスの提供が始まります。しかし、そんな「5G」が政治家や通信業界のロビイストによって過剰な扱いを受けていると、技術系メディアのTechdirtが批判しています。

The 'Race To 5G' Is A Giant Pile Of Lobbyist Nonsense | Techdirt
https://www.techdirt.com/articles/20200116/08134343743/race-to-5g-is-giant-pile-lobbyist-nonsense.shtml


スマートフォンの急速な普及とインターネット技術の進歩によって、大容量のデータを高速で通信できるシステムが求められるようになりました。2015年頃から普及している第4世代移動通信システム(4G)は500Mbps~1Gbpsの通信速度が理論上可能とされていますが、5Gでは最高速度が約10Gbpsと、およそ10倍にまで速度が向上するといわれています。また、遅延は1ミリ秒程度で、1平方キロメートル辺り100万台の同時接続も理論上可能になると、総務省は(PDFファイル)展望の中で述べています。

by Jens Johnsson

Techdirtは「5Gで重要なことは、より高速でより耐障害性の高いネットワークが提供できるという点です。しかし、『この技術が社会を変えるほどの影響力を持つ』というように過剰に宣伝されていて、より高速な通信規格を導入しようとする国際的な取り組みとは別に、過度に競争的になっています」と指摘しています。

例えば、5G関連技術については中国企業のHuaweiが一歩リードしており、アメリカはこれに対抗するために各通信会社やソフトウェアベンダーにオープンソースで関連システムやソフトウェアを開発するよう強制したと報じられています。Techdirtは「5GはブロックチェーンやAIのように、国会議員をびっくりさせようとするロビイストやシンクタンクによってばらまかれる『政策のゴミ』のようなものです。5Gが過熱した国家安全保障問題とくっつくと、さらに訳がわからなくなります」と述べています

アメリカ政府が「オープンソースの5G対応技術」を通信機器メーカーに求めている - GIGAZINE


2020年1月に、元下院議員のマイク・ロジャーズ氏は「5G Action Now」というロビー活動団体を立ち上げました。5G Action Nowの具体的な事業としては、規制緩和や補助金の増額を政府に訴えたり、連邦通信委員会に周波数割当を要求したりするなど、一般的なロビー活動が予定されています。しかし、「これは消費者利益のための競争ではなく、政府による保護を求める競争であり、収益拡大のための競争です」とTechdirtは指摘。

また、ウェブサイトでは5G Action Nowの目的は「アメリカの国家安全保障に関する議論を盛り上げ、5Gイノベーションにおける中国との戦いに勝利し、経済的利益を高めること」と明言しており、中国への対抗意識を一切隠していません。

しかし、5Gを過剰に持ち上げるというやり方を行うロビー活動団体やメディアは、アメリカが4Gの導入で世界的に先行していたことを「忘れている」とTechdirtは批判しています。第3.9世代移動通信システム(LTE)が登場した時でも、前世代に比べてより大容量のデータをより高速に通信できることがポイントとなりましたが、実際のところはアメリカにおける実測のLTEネットワークの平均速度は低いことが判明し、Wi-FiでパブリックLANにアクセスして通信する人も多いのが現状。

by Jack Sloop

5Gと同じように「前世代よりも高速大容量」をうたい文句に登場したLTEサービスがいまいちになったのは、規制当局による取締りや通信企業の合併など、さまざまな事情が複雑に絡み合った結果であり、これを解決するのはかなり時間がかかる、とTechdirtは指摘し、各通信会社間の競争や政治的な優遇措置の要求などといった政治的な動きが事態をややこしくしていると批判。「5Gは業界のジャーナリストやエバンジェリストが褒めたたえるほど神秘的な万能薬ではありません」と述べています。

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in モバイル, Posted by log1i_yk

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