血液型でノロウイルス感染症のかかりやすさが異なる
by derneuemann
乾燥しやすい冬を中心に猛威を振るうノロウイルスはウイルス性胃腸炎を引き起こすことで知られています。その感染力は高く、ウイルスに対する免疫もすぐに失われてしまうことから、予防手段は「徹底した衛生管理」のみ。そんなノロウイルスの感染症に血液型によっては耐性をもつ場合があると、インディアナ大学の生物学者であるパトリシア・フォスター氏が解説しています。
Your blood type may influence your vulnerability to norovirus, the winter vomiting virus
https://theconversation.com/your-blood-type-may-influence-your-vulnerability-to-norovirus-the-winter-vomiting-virus-129125
感染すると12時間~72時間という潜伏期間を経て、おう吐・下痢・発熱という症状が1日~2日間表れます。短時間で回復するので致死性は高くありませんが、子どもや高齢者が感染すると重症化することがあり、発展途上国では毎年およそ5万人がノロウイルスによって命を落としているといわれています。
ノロウイルスの3Dモデルが以下。ノロウイルスは「エンベロープ」と呼ばれる脂質と糖タンパク質による殻を持たず、「カプシド」と呼ばれるタンパク質の殻だけでRNAを包む構造となっています。ノロウイルスのようにエンベロープを持たないウイルスはアルコールや洗剤の耐性が強いため、手に吹き付けて使うアルコールベースの消毒剤を使っても完全に感染を食い止めることはできないとのこと。2008年の研究によれば、ノロウイルスはわずか10個のビリオンで感染症を引き起こすそうです。
by CDC
そんなノロウイルスは培養が難しく、研究がそれほど進んでいないため、具体的にどうやって腹痛や下痢を引き起こすのかはいまだによくわかっていません。ただし、ノロウイルスは小腸内膜の細胞に感染することは知られており、フォスター氏によると、感染者の血液型がノロウイルスにかかるかどうかを左右することがあるそうです。
H1抗原と呼ばれる糖鎖が小腸内膜の細胞表面にあると、多くのノロウイルス株が付着しやすくなります。フォスター氏によれば、ヨーロッパ由来の人口の20%は小腸内膜の細胞でH1型糖鎖が発現しないため、ノロウイルスに耐性があるとのこと。
そして、いわゆるABO式血液型は、赤血球の表面にある糖鎖(表面抗原)の構造で分類するものです。細胞表面にどんな抗原が発現するかは遺伝によって決定されるため、小腸内膜の細胞の表面抗原と赤血球の表面抗原には大きな関係があります。フォスター氏によれば、一般的に「血液型がB型の人」は主流なノロウイルス株への抵抗性を示す傾向があるそうです。ただし、ヒトに感染するノロウイルスには29種類もあり、ノロウイルスの株によってはB型でも感染症を発症する可能性はあります。
by InvictaHOG
それでも、フォスター氏はこのことは非常に重要だと述べ、「たとえば、船の中でノロウイルスのアウトブレイクが発生すると、およそ3分の1の乗客がノロウイルスの感染を免れる可能性があります。感染しなかった人は抗原による耐性を知らないので、『ぶどうジュースをたくさん飲んだから病気にならなかった』などといった呪いじみた考え方をしがちです」と語りました。
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