サイエンス

体内でのおならの変化をスマホからトラッキングできる錠剤型デバイスが登場


腸は「第2の脳」と呼ばれ、人が何を食べたいと思うのかをコントロールするといわれているほか、不安やうつとも関連しているといわれており、腸内環境をモニタリングすることは健康上の大きな利益が得られると考えられています。そんな中、大きめのビタミン剤のようなカプセルを飲み込むことで、スマートフォンで腸内のガスの変化をモニタリングできる技術が開発されました。

A human pilot trial of ingestible electronic capsules capable of sensing different gases in the gut | Nature Electronics
https://www.nature.com/articles/s41928-017-0004-x

Swallowable sensors reveal mysteries of human gut health | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-01/ru-ssr010218.php

With ingestible pill, you can track fart development in real time on your phone | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2018/01/with-ingestible-pill-you-can-track-fart-development-in-real-time-on-your-phone/

オーストラリア・ロイヤルメルボルン工科大学のKourosh Kalantar-Zadeh氏とモナシュ大学のPeter Gibson氏が率いる研究チームが開発したのは、腸内のガスのレベルをモニタリングするカプセル型デバイス。ポケットサイズのレシーバーとスマートフォンアプリの2つと連動しており、カプセルを摂取すると、胃から腸に至るまでの体内の状況をリアルタイムで示してくれるとのこと。

カプセル型デバイスは2018年時点で小規模な臨床試験を終えた段階で、研究者らは「我々の臨床試験は、腸そのものや、健康におけるマイクロバイオームの機能、食生活の変化に対して体がどう反応するのかなどを理解する上で、ガスを検知する電子デバイスに大きな可能性があることを示しました」と語っています。

消化器官の各部で何が起こっているのかという情報は複雑で、これまでは「どの細菌が増えているのか」「何の食べ物が問題を引き起こしているのか」というようなデータを集めるのは困難とされていた部分。これまでは「チューブを使ってガスを採取する」という方法などで行われており、ライバルとなる存在が少ないことからも、研究者らは同デバイスに大きな可能性を見いだしているようです。

ブタを使った動物試験では、研究者らは全長26mm、直径9.8mmのカプセルを利用しました。このカプセルは、温度・二酸化炭素・水素・酸素に対するセンサーや酸化銀電池、伝送システムを搭載。また、外側はポリマー製のシェルが用いられました。カプセルの片側にはガスが浸透する膜が使われていて、腸内のガスをいち早く拾えるようになっています。今回の臨床試験では動物実験で用いたカプセルを改良したものを使ったとのこと。


これがカプセル型デバイス。


本体デバイスとポリマー製のシェルは分離できるようになっています。


レシーバーはこんな感じ。


6人の健康な人にカプセルを使用してもらいモニタリングした結果、カプセルが胃に滞在したのは4.5時間、小腸に滞在したのは2.5時間、大腸に滞在したのは13時間で、合計20時間の旅になったそうです。そして、研究者らが超音波を使って「カプセルが腸のどの部分に位置しているのか」と、その場所のガスの情報を結びつけていったところ、「二酸化炭素と水素のレベルは大腸に届いてすぐのところでピークを迎える」「酸素のレベルは大腸全体を通して低い」ということが判明。これは、嫌気性の細菌が腸内に多いことと一致します。


別の臨床試験では1人の被験者に2度、カプセルを飲んでもらいました。この被験者には1回目のカプセルを飲む前の2日間に食物繊維の多い食事をしてもらい、その2週間後、食物繊維の少ない食事を2日間続けた後に2回目のカプセルを飲んでもらいました。

食物繊維の多い食事をした際、カプセルが被験者の体を通過するまでにかかった時間は23時間。食物繊維が多い食事は一般的には推奨されていますが、この時の被験者は大量に食物繊維を摂取したために腹痛を起こしていました。カプセルで消化器官内をモニタリングしたところ、腸内の酸素レベルが上昇しており、本来であれば嫌気性の環境であるはずの腸内を乱していたとのこと。後でふん便のバクテリアを分析したところ、腸内の健康によくないとされる種が増加していたことも判明しました。


一方で、食物繊維が少ない時も問題が確認されました。第一に、カプセルが体外に排出されるまでに3日を要しました。このとき、胃にカプセルが滞在した時間は13時間、小腸が5.5時間、大腸が54時間でした。あまりにカプセルが動かないため、被験者はカプセル摂取から36時間後に食物繊維を大量摂取したほど。食物繊維の追加摂取を行うまで、大腸内の水素レベルは極めて低く、発酵作業はうまく進んでいなかったものと見られています。


3つ目の臨床試験では4人の健康な被験者のうち2人に食物繊維の多い食事をしてもらい、残りの2人には食物繊維が少ない食事をしてもらいました。その結果、デバイスが示す消化器官内のデータは2番目の臨床試験と似た内容であることが示されました。

なお、研究者らは記事作成現在においてさらなる臨床試験やデバイスの開発を行うべく、協力企業を探しているところ。人間の腸に存在する微生物群「マイクロバイオーム」は健康に大きな影響を与えるものと見られているため、同研究は大きな可能性を秘めているとして評価されています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by logq_fa