メモ

幼い子どもは「恩返しより先に報復を習得する」という研究結果

by mohamed Abdelgaffar

誰かから親切にされた経験がある場合、その相手が困っている時に今度は自分が相手を助けて「恩を返す」ことは、多くの社会において基本的な道徳観念となっています。「人は生まれつき親切にされた相手に好意を返す考えを持っている」と思う人もいるかもしれませんが、「子どもは受けた恩を相手に返すという考えよりも先に、悪意を向けてきた相手に報復することを習得している」という研究結果が発表されました。

PsyArXiv Preprints | Paying back those who harmed us but not those who helped us: Direct negative reciprocity precedes direct positive reciprocity in early development
https://psyarxiv.com/vjb6q/

Grudges come naturally to kids – gratitude must be taught
https://theconversation.com/grudges-come-naturally-to-kids-gratitude-must-be-taught-119732

多くの昔話には、「困っている相手に対して親切にしたら、相手から大きな恩を返された」という教訓が込められており、恩に報いることは人間の生得的な行動だと思われがちです。カリフォルニア大学やボストン大学の研究チームは、ポジティブな相互関係が人間社会の発展に寄与してきたのであれば、幼い子どもでさえも生まれつき恩に好意を返す行動を取るのではないかと考え、実験を行いました。

研究チームは実験に参加する4~8歳の幼い子ども向けに、シンプルなコンピューターゲームを開発しました。参加者の子どもたちはこのゲーム画面の中でその他の4人のアバターと交流し、簡単なタスクを実行しました。なお、その他のアバターについて研究チームは「同年代の子どもたちが操作している」と参加者の子どもに教えましたが、実際に他のアバターを操作していたのは同年代の子どもたちではありませんでした。

by Alexander Dummer

1つ目の実験では、まず最初に「参加者の子ども以外の4人」に対してステッカーが配られ、参加者の子どもだけがステッカーを持っていない状態が作り出されました。しかしその後、他のアバターが参加者の子どもにステッカーを与えました。これによって、参加者の子どもはステッカーを持っていますが、ステッカーを与えてくれたアバターは何も持っていない状態になります。

次の段階で、参加者の子どもは2枚目のステッカーを受け取り、他のアバターに与えるように指示されました。「受けた恩を返す」という発想に基づけば、先ほど自分にステッカーをくれた相手にステッカーを与えるはずだと予想されましたが、研究チームの予想を裏切って、子どもたちはランダムな相手にステッカーを渡したとのこと。この現象は特定の子どもたちだけに見られたものではなく、特に幼い子どもたちは一様にステッカーをランダムな相手に渡しました。

子どもたちは決して誰が自分にステッカーをくれたのかを忘れていたわけではなく、研究チームが「さっきステッカーをくれたのは誰でしたか?」と尋ねると、ほとんどの子どもは正しい相手を答えたそうです。つまり、幼い子どもたちはそもそも「受けた恩を返す」という発想を持っていなかったことになります。

by samer daboul

ところが、決して子どもたちが「相手との相互的な関係を築かなかった」というわけではないと、研究チームは指摘しています。2つ目の実験では、参加者の子どもとアバターの全員にステッカーが配られた後で、アバターの1人が参加者の子どもからステッカーを「奪った」とのこと。

その後、参加者の子どもはどれか1つのアバターから、ステッカーを奪うことが許可されました。すると、子どもたちは高い確率で「自分からステッカーを奪ったアバター」から、ステッカーを奪い返しました。つまり、「相手の酷い仕打ちに対して報復する」という点に関しては、子どもたちは意識的な相互関係を築いたといえます。

by Alexander Dummer

一体なぜ子どもたちが好意に対して恩を返すことなく、悪意に対して報復することにだけ意欲的だったのかは不明ですが、研究チームは「恩に報いなかった子どもたちは、単に『好意を向けてくれた相手にはこちらも好意を返す』という規範を知らなかった可能性がある」と考えました。

そこで、研究チームは子どもたちを2つのグループにわけて、それぞれに「シンプルな物語」を聞かせてから1つ目と同様のタスクを行わせました。1つのグループでは、「ある日、ステッカーを持っていたA君が、何も持っていなかったB君にステッカーをあげました。翌日、B君は新たにステッカーを手に入れました。B君は、昨日のA君がステッカーをくれたことを覚えているので、A君に新しく手に入れたステッカーをあげました」という、非常にシンプルですが「相手の恩に報いる」形式の物語が伝えられました。もう1つのグループでは、子どもが相手に親切にするものの、好意を相互にやり取りするという形ではない物語が伝えられました。


その後、1つ目の実験と同じ状況で子どもたちがほかのアバターにステッカーを渡すように指示されると、「相手の恩に報いる」物語を聞かされたグループはもう1つのグループと比較して、自分にステッカーをくれた相手にステッカーを渡す割合が明らかに高くなりました。つまり、親切にしてくれた相手に好意を返すという規範を伝える簡単な物語を伝えるだけで、子どもたちは相手の好意に報いるという社会規範を学習し始めることができたとのこと。

研究チームは、相手への恨みは相手への感謝より先に習得される可能性があると認めつつ、子どもたちが感謝の気持ちを習得することも簡単であると指摘。古くから「相手に親切にしたら、自分に親切が返ってきた」という類の子ども向けの物語が多く伝えられているのは、子どもたちに「受けた恩を返す」という社会的規範を教えるためだったのかもしれないと、研究チームは述べました。

by Naomi Shi

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
なぜ子どもは「うそ」をつくのか? - GIGAZINE

子どもの将来は「幼少時の会話」で決まるという研究 - GIGAZINE

なぜ子どもには「遊び」が必要なのか? - GIGAZINE

子どもの自制心が将来を左右するという「マシュマロ実験」が再現に失敗、自制心よりも大きな影響を与えるのは「経済的・社会的環境」 - GIGAZINE

「子どもが将来社会的な成功を収める」ために必要なこととは? - GIGAZINE

「現代っ子は我慢ができない」は間違いだとマシュマロテストで判明 - GIGAZINE

「親が子どもにうそをつく」ことは成人後まで悪影響を及ぼすかもしれない - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.