サイエンス

「運動するとやせる」「妊婦に運動は無理」など本当は間違っている9つの「運動の常識」

by Trust "Tru" Katsande

「運動は体にいい」ということは十分に理解している一方で、日常生活の忙しさにかまけてつい運動をさぼりがちという人も多いはず。そんな現代人が日常的に運動しようとする上でしばしば誤解される9点について、ダブリン大学トリニティカレッジの准教授で理学療法士のジュリー・ブロデリック氏が開設しています。

Things people say about exercise that aren't true
https://theconversation.com/things-people-say-about-exercise-that-arent-true-128249

◆1:「健康になったら運動をする必要はない」は誤り
ブロデリック氏によると、運動による健康効果は運動習慣を維持しなければ持続しないとのこと。2000年に発表された研究論文によると、運動量をがくっと減らしたり、運動習慣を急にやめたりすると。心血管系の体力および持久力などが一気に衰える可能性があるとのことで、「人生を通して運動には一貫性が求められます」とブロデリック氏は論じています。

◆2:「一日中立っているだけでは運動にならない」は誤り
2015年に発表された論文によると、座ってばかりの生活を送りがちの現代人にとって、1日中立ったり動き回ったりすることは高いレベルの身体活動に相当するそうです。また、運動の健康効果を最大限に高めるためには、汗をかく程度の運動を週合計で150分以上行うことが重要だとブロデリック氏は主張しています。

ただし、あくまでも「座りっぱなしの生活には健康上のリスクがある」というだけで、立ち続けること自体が必ずしも健康的であるとはいえないという指摘も存在します。

座りすぎは死のリスクを高めるが「立ちながらの仕事が健康的」とは言えない - GIGAZINE


◆3:「運動は最低10分以上行う必要がある」は誤り
アメリカ保健福祉省が2018年に発表した「(PDFファイル)国民のための身体活動のガイドライン」では、「身体活動は最低10分以上行わなければならない」という最低限の基準はなくなったとのこと。ブロデリック氏は、重い買い物袋を持ったり精力的に家事や庭仕事に務めたりするなど、積極的に日々の雑用を行うことで健康を改善すべきだと述べました。また、少し息が切れるくらいの激しさで階段を上るなど、2分から30分の短い運動を1日に3~5回ほど挟むことも勧められています。

◆4:「持病がある場合は運動しない方がいい」は誤り
運動はがんや心臓病など、さまざまな慢性疾患に効果があるといわれており、ランニングなどの運動によってがん細胞の増殖が抑制される可能性も指摘されています。

ランニングでがん細胞の増殖を抑制できるかもしれない - GIGAZINE


もちろん持病の状態によって運動量は調整されるべきですが、医師の許可を得て、理学療法士や運動の専門家からアドバイスを受けた上で、日常的に適度な運動を心がけるべきだとブロデリック氏は主張しています。

◆5:「運動するには年を取り過ぎた」ということはない
2018年9月に発表された(PDFファイル)研究によると、90歳半ばまでは老化が直接的な原因で運動できなくなることはないとのこと。また、高齢者でもトレーニングによって筋力や筋肉量を増加させることができる報告もあります。

◆6:「運動するとやせる」は誤り
減量するために激しい運動を大量に行う人もいますが、「運動すると必ずしもやせるわけではありません」とブロデリック氏は述べています。運動をすると確かにカロリーは消費するものの、反動で食欲が増進されてしまい、結果的に摂取カロリーも増加するため、運動するだけでは必ずしも効果的な体重減少につながらないことは、以下の記事でも指摘されています。

運動は「体重を減らす」ことに向いていない、運動が健康にもたらす5つのメリット - GIGAZINE


減量に成功するためには運動するだけではなく、食事のカロリー制限が必要だとのこと。例えば、体重の5%以上を減量したいという人は、食事制限をした上で少し激しめの運動を週に5時間以上行う必要があります。

◆7:「週に1回のランニングは十分な量の運動ではない」は誤り
仕事や家事で忙しく、運動する時間があまり取れないと悩む人は多くいますが、2019年11月に発表された研究では、週1回50分のランニングを行うだけで、がんや心臓病による死亡リスクが低下するとのこと。ランニングのペースは決して速すぎる必要はなく、時速8kmと時速13kmとで健康へのメリットは変わらなかったことが報告されています。

週50分以上ランニングするだけで心臓病やがんのリスクは低下する - GIGAZINE


◆8:妊娠していても、ある程度の運動は問題ない
「国民のための身体活動のガイドライン」では、母子ともに健康な妊婦にとって、ある程度の身体活動は安全であり、妊娠中の過剰な体重増加や妊娠糖尿病のリスクを下げるとのこと。また、日本の厚生労働省も「マタニティーエクササイズ」として、医師によるメディカルチェックとアドバイスを受けた上で妊娠中でも行えるような、有酸素性運動の比率が大きいエクササイズを勧めています。

by StockSnap

◆9:「体調が悪い時は極力運動しない方がよい」は誤り
気分が悪い時、熱がある時、激しい痛みや疲労を感じる場合は運動するべきではありません。しかし、カナダの医療保健機関であるAlberta Health Services(AHS)によれば、患者の入院が長びくと、病気の感染率が上がり、筋力が低下し、肉体的・精神的な健康リスクによって日常生活に支障をきたす恐れがあるとのこと。AHSは、80歳以上の患者が入院して10日間安静にすることによる筋肉の老化は10年分に相当すると主張しています。そのため、ある程度体調が落ち着いたら、ベッドから起き上がって軽い運動で体を動かすことも重要だとブロデリック氏は述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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