「大人ってかわいそう」と考える高校生たちに響く作品を作った「ぼくらの7日間戦争」村野佑太監督インタビュー
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2019年12月13日(金)からアニメ映画「ぼくらの7日間戦争」が封切りとなります。本作を手がけるにあたり、監督の村野佑太さんは、高校生や先生にインタビューしたり、北海道の炭鉱に取材をしたりしたとのこと。その中で高校生の口から出た衝撃の言葉や、作中の舞台でありながら「8人目の主人公」でもあるという廃工場がいかにして描かれたのかなど、『ぼくらの7日間戦争』を制作にまつわる話をとことん聞いてきました。
ぼくらの7日間戦争
http://7dayswar.jp/
あの戦争から30年、
— 映画『ぼくらの7日間戦争』 (@7dayswar_movie) 2019年10月2日
新たな戦いが始まる。
『ぼくらの7日間戦争』の
PVが公開しました!
「自分らしく生きると決めた。」
12月13日(金)全国ロードショーhttps://t.co/8zNvsWWgjQ#7日間 #北村匠海 #芳根京子 #宮沢りえ pic.twitter.com/uxEE8mjy4L
GIGAZINE(以下、G):
『ぼくらの七日間戦争』という、多くの人が知っている作品のアニメ映画化を手がけるのはかなりプレッシャーも大きかったと思いますが、企画が来たときの印象はいかがでしたか。
村野佑太監督(以下、村野):
すごく有名なタイトルで、それこそ自分が小学生のころ図書室には決まって置かれていた人気作なので「ありがたいな、是非やらせていただきたいな」という気持ちになりました。とはいえ、世に出てから時間が経過している作品でもあるので、「今やるとなると、どうやれば良いんだろう?」という難しさもあって、うれしさと同時に漠然とした不安みたいなものも感じました。そのまま、ただアニメ化すればいいというものでもないと思っていたので。
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G:
実写映画化から数えても30年も経っているということで、難しい点は多々あったかと思いますが、具体的にどういったところに難しさを感じましたか?
村野:
原作の中に出てくる「全共闘」とか「解放区」といった時代性を感じさせる言葉は、本作を見せたい相手、特に子どもたちには響きにくいだろうなと思いました。あと、「大人との立ち位置」ですね。「自分たちと大人たちの立ち位置」「大人をいたずらで懲らしめようと思った時の大人像」は30年前と今とではまるで違うだろうということで、「どうしたものだろうか……」と。高校生にインタビューしたり、中学生にアンケートを取ったりすればするほど、当初思っていた以上に原作の頃との違いが明白になっていきました。
G:
どういった声が聞けましたか?
村野:
一番衝撃的だったのが「大人はかわいそうだ」と言われたことです。
(一同笑)
村野:
高校生に「大人ってどう思う?」とインタビューしたら、「別に戦う相手とも思わないし、大人との関係にそんなにストレスがあるわけでもないし、どちらかというと大人ってかわいそうだな」という話が出てきました。「自分たちの方がまだ自由で、大人は自分たちより守らなければならないしがらみがあって……」と。それに、原作の頃は大人の方が絶対的に強かったですよね。しつけと称して体罰は横行するし、実写映画ではそれが如実に描かれていました。
その点、今の子どもたちって守られているんです。体罰は御法度だし、いざとなれば、スマートフォンひとつで大人をやり込めることができるんです。大人の人生を簡単に終わらせることができる武器を自分たちが持っていて、その気になったらいつでも対等に戦えて、「そういうツールを使ったら僕たちの方がうまいよ」という自覚があるので、大人に反逆してまで何かをしなければならないという感覚を抱きにくいのかもしれません。
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村野:
そこが衝撃的で、「なるほどな」と思いました。ただ、原作をすごく読み込んでいるような高校生にもインタビューすることができましたが、その中で「『全共闘』等の名称や、大人に対するストレスとかはよく分からなかったけど、1カ所に仲間と集まって、1週間何かに向かってみんなでワイワイやる、という空気感はすごく楽しいな」という話がありました。「全部が駄目というわけではなく、30年前と変わらぬ感性の部分を大事に描写すればいいんだな」というのが子どもたちと話していて思ったところですね。
また、先生からは「今の子どもたちは頑固さが足りない」「昔に比べて、人に言われたことを上手くやる、大人たちが欲しがるような答えを言う、ということはすごく上手だけど、何にもない状態でトラブルに巻き込まれて『なんとかしろ』と言われた時に、それを切り抜ける生命力が昔の子に比べて薄くなっている」という話も聞けました。それを聞きながら、「なるほどそうだな」と思う反面、自分が子どもの立場でその意見を聞いたら「そんなことねーよ」と言うと思うんですよ。
そういう風に決めてかかる大人に対して、「いや、俺たちはやろうと思ったらできるんだよ」という、ある種の決めつけに対する反発心みたいなものはこの高校生にも当然あるだろうから、そこを肯定してあげる映画にしなければいけないだろうなというのはありました。
G:
「大人と戦う」という前提を作るのが難しそうだと。
村野:
そうなんですよ。子どもと大人というのが「ぼくら」シリーズの大きなテーマとしてある中で、大人と対峙しなきゃいけないというのが、物理的にげんこつでやり合うという側面以外に、子どもたち自身の中にある大人というものと対立しなきゃいけない部分もあるな、と原作を読んで感じたんですね。
特に、この映画では主人公が高校生です。高校生は「いい年した大人なんだから聞き分けなさい」と言われることもあれば「子どものくせに口出しして」と、都合良く大人としても子どもとしても扱われてしまう年齢です。そういう子どもたちに、「自分たちが大人なのか子どもなのか」を自分たちの手で決めてもらえたらいいなと思っています。
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村野:
自分の周囲を見渡してみても、聴き取りをしてみてもそうですが、子どもってどこか「大人にならなきゃ」と思っている節がありますが、「それってなんかちょっともったいないんじゃないの」「子どものうちにしかできない選択ってあるんじゃないの」と感じています。その選択というのは、ちょっとした法に触れるようなことなのかもしれませんが、がんじがらめになるのではなくて、わがままを突き通す頑固さのようなものを発揮してもいい年齢なんだから、そこに対しては「まだそういう幼さがあってもいいんですよ」というのを伝えられるといいなと思いながら、映画化に臨みました。
G:
主人公の守はとてもおとなしそうに見えますが、作中ではかなり大胆な行動に出て、ギャップに驚かされました。このキャラクターデザインはどういう経緯で決まったのですか?
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村野:
最初は脚本から始まり、何テンポか遅れた段階からキャラクターデザインはスタートしました。その中で、キャラクターデザインを担当されているけーしんさんから最初の案をいただいたんですけど、それがすごく良くて。「ああ、こういう表情をするキャラクターたちが登場する、こういう絵柄が好きだなと思っている子たちに向ける映画にすればいいのね」というある種の活路が見えたところがありました。これがちょうど行き詰まりを感じた時だったので、すごくありがたかったですね。
G:
絵にも引っぱられた部分があったと。
村野:
はい。
G:
綾もお嬢様然とした部分の多いキャラクターですがアクティブですし、みんな、それぞれに意外な一面を見せてくれますね。
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村野:
いまの子たちにヒアリングする中で、「こういうことに興味があるんだね」「こういう人って、いまの子たちにおいても割とヒーローなのね」というのがありました。あと、7人という子どもたちを描くにあたって、「こいつクラスにいないよね」っていうキャラは作りたくなかったんです。立派すぎるとか、アニメ的にデフォルメされすぎたりしているキャラではなく、自分と同じ教室にいてもおかしくない人間にしたくて。
ただ、今の子どもたちの話を聞いていると、どうやら周りとのリアルな人間関係とは別に、ネットやスマートフォンの中に「もう1つの自分」のエリアがあったり、そこの中で発揮している自分というのは、リアルで見せている顔とは別の一面を持っていたりしているようだったので、そこはちゃんと描いていかなくちゃいけないなと思いました。
G:
脚本を担当されている大河内さんへのインタビューの中でも、「まさかスマートフォンが出てこない作品にするわけにはいかないので、そうなると当然みんなSNSは使っているし、それが作中にも生かされている」という話がありました。
村野:
僕たちが思っている以上に、スマートフォンやネットは「危険性」や「善悪」を議論する対象ですらない、当たり前の存在になっています。スマートフォンを特別にフィーチャーして、映画のテーマにするという程のものでさえ、もうない。これが2000年代はじめの高校生が主人公だったら、「ネットという強力な武器を手に入れてどうにかする」みたいな話になりますが、2020年の高校生ともなると、もはやそういうものではないわけです。ただし、生活の一部として当たり前に存在する一方で、その「当たり前」を維持するために僕たちの高校時代より余計な気苦労もあって、そんな人間関係の中に一歩踏み込んでいく作品にしたいという思いがありました。
G:
今回、背景も美しいだけでなく、大人を撃退する時に「ああ、なるほど」と膝を打つようなギミックも細かく描写されています。北海道に取材旅行に行かれたとのことですが、どれくらい北海道巡りをしましたか。
村野:
1泊しかしていないんですよ(笑)
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G:
弾丸ツアーだったとうかがいました(笑)
村野:
ひたすら道をぶっ飛ばして、おいしい物も何も食べずに帰ってきたぐらいです。
G:
完全にロケだけの旅行……。
村野:
そうですね。最初にメインで想定していたのが赤平市にある炭鉱でした。この炭鉱を主な舞台になる廃工場の参考としてロケーションしています。赤平だけでなく、三笠市の奔別にある炭鉱遺跡や、夕張市石炭博物館の模擬坑道なども参考として見ました。
本作では、工場に立てこもるというのがポイントの1つとしてある中で、工場もある意味で「8人目の主人公」として、感情が動くような楽しい場所に見せなきゃいけないだろうなと。高校生が1週間立てこもることに対して「いいな」と思える場所ってどういうところだろうなと思った時に、見た目のインパクトと存在感の中に、ちょっとしたスピリチュアルな雰囲気もある工場というのを求めたかったんですよ。工場をアニメで描くというのは、実は大変すぎて吐き気がするんですけどね。
(一同笑)
村野:
というのも、赤平の工場をロケハンさせていただいて撮った写真と、見取り図をもとにCGで工場を完全再現して、それを使って背景を描いているんです。とてもじゃないけど、想像力だけでは描けないんですよ。
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G:
CGで再現したのに、それを参考にしてまた絵にしたんですか?
村野:
CGを使っている部分もありますが、基本的には参考です。ぜいたくな話です(笑)
G:
内部を見下ろした光景にワクワクとして「あんな風にホッパ車が動いてるのを見たい!」と思わされるような、生き生きと描かれた廃工場はそうやって生まれたんですね。
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村野:
実際に見に行ったときもものすごく圧倒されたので、なんとかそれをスクリーンで再現したかったんです。
G:
美術の面では他にも、エンドロールで作画監督の下に「重機作画監督」という役職があるのが気になりましたが、これは名前通り、重機だけを担当する方なんですか?
村野:
そうです。だから、重機はすごく迫力があったと思います。この映画の難しいところの1つに「アナログ」だというところがあります。表現しているものや題材、舞台の設定が非常にアナログなんです。今のトレンドって、アニメでしかできないファンタジーですよね。タイムスリップだとか、超常現象だとか。それをやったほうが確かに映像的には間違いなく派手になるんですけど、それをやるとその途端に「7日間戦争」ではなくなってしまいます。
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村野:
「7日間戦争」の魅力って、自分にギリギリ再現可能なリアリティの中で行われている冒険なんです。だから敵も見せ場もその範囲のものにならなければいけません。そこで重機を出そうという案が出てきたんですが、出すからには、迫力があるようにちゃんと描かなければ、ということになりました。リアリティのある重機なんだけど、首を上げたときに恐竜が「くわっ」と首を持ち上げたときのようなケレン味や、ちょっとしたファンタジー性も出さないといけないとなると、並のアニメーターさんじゃ描けないんですね。ですから、メカ専門の、本当に一流の方にお願いをさせていただきました。
G:
なるほど。確かに迫力あるものになっていました。
村野:
まさに怪獣が襲ってくるぐらいの迫力がないといけませんでしたからね。
G:
細かい部分なのですが、教室のシーンで「消しゴムを拾おうとして2人が同時に手を伸ばす出会う」という場面がでてきて「なんという王道の出会い」と感じたのですが、これは大河内さんの脚本の段階からそうだったんですか?
村野:
脚本の段階からそうですね。初稿だと、もっとベタなものでした。
(一同笑)
村野:
ただ、あくまでも個人的な意見ですが、ベタってそんなに悪いものでもないなと思っています。王道な展開から離れようとして奇をてらっているような出会い方にも魅力的なものはあると思いつつも、「特別過ぎない、慣れ親しんだような所から始まる話」がどんどん加速していって、「そこに落ち着くんだね」っていうところに昇華されるというのが好きなので、導入部分は比較的よくある感じにしたかったというのがありました。
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G:
王道なところから入って、「七日間戦争」らしい流れがあって「うんうん」と思っていたら、「そこまで行っちゃうのか!」というようにどんどん話が転がっていって……。
村野:
終盤は、これはぜひ見て確かめてみて欲しいですが「そうなるのかよ!」っていうところもありますし。
(一同笑)
G:
大河内さんにお話を聞いたところ、マイナーチェンジのような改善を重ねていったとのことでしたが、改稿する中でもっとも大きく変わっていった部分というのはどんな所でしたか?
村野:
最も変わったのは、主人公たちが抱えている悩みのリアリティラインだったと思っています。高校生に話を聞く中で得られた「こういう事に悩んでいるんだ」「こういうことが関心事なのね」という物を最も参考にしてそれぞれのキャラクターに取り入れているんですが、それ以前は「映画をドラマチックにしたい」という欲から悩みが大きく重いものになりがちだという傾向がありました。
ドラマとしてはそのほうが衝撃的でインパクトも大きいものの、「ぼくら」の話になるのかなという疑問もあって。この映画はやっぱり「ぼくら」の話にしたかったし、なんてことない、普通のクラスにいるアイツやコイツがこういうシーンにいたら「そうなっちゃうよね」っていうところはリアルに突いていきたかったので、ドラマチックにしすぎてしまうとそこから離れてしまうというのがありました。
この点については宗田先生側にもご懸念があったようで、「もう少しライトで、子どもたちが最後に笑顔で終われるような作品にして欲しい」というご意見もありました。そういう意味でのリアリティについての変更が、一番大きなものだったと思います。
G:
その変更があったからこそ、映画を観たときに「これ、自分にどこか似ている」と思えて、突飛すぎないリアリティに落ち着いたと。
村野:
やっぱり映画の導入の段階では、「自分たちとなんら変わらないな」と思って欲しかったんですね。ただ、そのまま映画が終わってしまうのはもったいなくて、最初は自分たちと変わらないと思っていたキャラクターたちが一歩だけ階段を登って、映画を見終わった頃にはそこに自分も引っぱられたくなるような感覚を持っていて欲しかったので、スタートはリアルで最後はちょっとだけ格好良く見せたいなという思いがありました。
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G:
その格好良さを支えてくれたのが主題歌だと思います。曲の発注は作品が完成する前だと思いますが、この曲はイメージを伝えつつ、作っていったという感じでしょうか。それとも、最初からイメージにビビッとくるような曲が上がって来た感じでしょうか。
村野:
最初に上がってきた曲がもうドンピシャリでした。シンガーソングライターの中には、自分の気持ちを歌に乗せるという人が多い中で、今回主題歌の制作をお願いしたSano ibukiさんという方は少し特殊で、まず自分で物語を書いて、その物語の登場人物を描く語りで曲を作っているらしいんです。今回、Sanoさんには「こういう作品です」「こういう主人公です」というのをお伝えしたので、おそらくかなりやりやすかったと思います。こちらとしては、シナリオと部分的な絵コンテを渡しただけですが、「ここまでちゃんと映画のことを解釈して、歌詞を紡いでくれるんだ」とひたすら驚いた記憶があります。
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G:
映画公開1カ月前の2019年11月6日にデビューアルバムが出たという絶妙なタイミングですが、実際に発注したのはもっと前なんですよね。
村野:
だいぶ前ですね。
G:
Sanoさんを選ばれたのは村野監督だとお聞きしていますが、どのようにしてSanoさんを見つけたんでしょうか。
村野:
ちゃんと今の子どもたち、つまりティーンエイジャーに刺さる世界観を持っている方にお願いしたいなと思っていました。『ぼくらの七日間戦争』というと、必ず小室哲哉さんが手がけた「SEVEN DAYS WAR」が出てくるじゃないですか。
TM NETWORK / SEVEN DAYS WAR(TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-) - YouTube
![](https://img.youtube.com/vi/H9VO5t9nfCc/maxresdefault.jpg)
村野:
今回この映画を作り直すに当たって、また小室さんの「SEVEN DAYS WAR」を主題歌に使っても、それでは「かつてのぼくら」の物語になってしまうんですよ。それが今のティーンエイジャーにとっての「ぼくらの」になるのかといったら、それはちょっと違うんじゃないのかというのがありました。
当時の曲をリスペクトしつつ同じ精神性で曲を作らないといけないとなった時に、Sanoさんが書いている歌詞や曲の世界観ならすごくクリアかつ爽やかにそこに届くだろうなと思いました。爽やかなだけじゃなく、どこか鬱屈とした、悶々としている所もあって「すごくリアルで作品の空気感にも合うだろうな」と思ってお願いをさせていただきました。
G:
それで開始10分ぐらいの、まさに今から始まっていくぞ、というところで「決戦前夜」が流れることになったというわけですね。
Sano ibuki『決戦前夜』Official Music Video - YouTube
![](https://img.youtube.com/vi/6-r3Ln78UMY/maxresdefault.jpg)
村野:
僕が子どものころからディズニーとかが好きだったので、歌を入れたいなというのがずっとあって、オープニングとか中盤とかにはその映画を象徴するような音楽や歌を入れたいなと思っていました。ですので、歌は映画の初期段階から誰かにお願いしたいなという思いがあって、それでSanoさんにお願いしたら3曲とも素晴らしい曲を作ってくださったので。
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G:
確かに、作中で挿入歌が流れるのはディズニーのアニメーションらしくもありますね。
村野:
そうそう。ただ、さすがにキャラが歌うわけにはいかないだろうなと。
(一同笑)
村野:
主題歌ではないですが、タイトルを代表する名曲として、今回「SEVEN DAYS WAR」はアレンジして劇中曲として使用しています。一ファンとしてこれはうれしかったですね。一番大事なシーンで流れますので、これから観る方は聞き逃さないよう注意してみてください。
G:
ディズニーについて村野さんは、職業調べサイト「EduTownあしたね」によるインタビューの中で、「子どものころからディズニー映画『ピノキオ』や『アリス』が好きで、大人になったら映画のアニメーション監督をやりたいと当時は思っていました」と語っています。こうして、テレビアニメの監督を経て、映画の監督にもなりましたが、何か心境の変化などはありましたか?
村野:
テレビシリーズと映画といっても、スタッフさんにいろいろとお願いをしながら、自分のやりたい方向性に作品を持っていくというところは同じです。もちろん、今までやってきたテレビシリーズはどれもやりがいがあったなと思いつつ、この業界に入ったのが「映画作りに携わりたい」という気持ちがあったからなので、モチベーションや、やる気は今までで一番だったのではないかなと思います。
G:
同じインタビューの中で、村野さんは「視聴者がどのような作品を求めているのか、常に考えながら制作しています。どのような視聴者に向けた作品なのか、対象を明確にして、その対象に合わせた見せ方ができるようにも心がけています」と語っています。
また、TVアニメ「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」の放送終了後のインタビューでは「異世界転生モノで、さらに面白くて熱いアニメを作れますよというのを証明したかった」とも語っておられますが、本作の場合は念頭に置いたことや、「これだ」と自分の中で持っておられたことはどういったことでしたか?
村野:
いつも、俯瞰で物事を見るというよりは、キャラクターの精神年齢に自分を合わせてから世界を見渡すという作り方をしようと心掛けていて、本作を作っている最中にはひたすら「子どもをなめるなよ」ということを言える映画にしたいなと思っていました。自分も「大人か子どもか」と聞かれたら「大人」と言わなければならない年齢ですが、高校生と先生の意見のちょっとした差異があった時には子どもの側について、大人がなめたような目で見ているのであれば「そんなことないぜ」と、自分たちの活力や生命力を信じられる映画を作らなきゃいけないなというのが頭にありました。何においてもそこだろうなと。
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村野:
子どもたちを肯定してあげるというか、「今のあなたたちは場所さえあれば、ちゃんとやっていけるだけの力を発揮できるんですよ」というのを、きれい事とかではなくリアルな主人公たちでそれができたら素敵だろうと思っていました。
G:
かなり驚かされたのは、「宮沢りえさんが以前と同じ役名で出る」ということなんですが、これはどういう感じで決まったんでしょうか。
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村野:
原作や実写映画で「子どもと大人」というのが描かれる中には、大人はただ単純に悪いやつらというだけじゃなくて、必ず子ども立場に立ってくれる大人がいました。そして、この映画にもそういう人が必要だろうな、と思った時に、全然関係ない人を連れてくるより、「かつてのぼくら」から連れてこられたらすごく素敵なんじゃないのという考えがありました。特に、宮沢さんが、当時あの「七日間戦争」を生き延びた中山ひとみ役として戻ってきてくださったらと。
30年経って、描かなきゃいけない内容も変わりましたが、僕たちはまったく別のものを作りたかったわけではないので、「ちゃんと原作や映画の精神性を受け継いでいきますよ」ということを意味する繋がりが生じたのはとてもうれしいことでしたね。宮沢さんが出演するという話は、最初は誰からともなくふわっと出てきた話なんですよ。だから、とても実現するとは思っていなかったので、いざ実現したときは本当にうれしかったです。
G:
最初は、「ひとみ的なキャラクターが出るかも?」という流れだったのでしょうか。
村野:
そこが難しかったところで、最初から出てもらえると決まっていたわけではなかったので、ダメでも大丈夫なようにという作り方をしていました。とはいえ、宮沢さんにやってもらえないのであればあのキャラクターはまったく意味がなくなってしまうので、冷や冷やしていました。
(一同笑)
村野:
宮沢さんにとっても『ぼくらの七日間戦争』はすごく大事にしているタイトルだということで、打診した早い段階から前向きな意見をいだたいたので、後は実現してくれるのを祈るのみという状態でした。
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G:
まさに、あの「中山ひとみ」だからこその意味がありましたね。
村野:
ぜんぜん違う人だったらと思うと……(笑)
G:
ひとみの登場シーンは、しっかりと30年の歳月を感じさせる細かい描写もあって「おおっ」と嬉しくなりました。ちゃんと、あの『ぼくらの七日間戦争』から続いているんだと。
村野:
実写映画とアニメ映画、別の表現だけれどこうしてちゃんとつながったというのが面白いところの1つだと思います。
G:
本日はいろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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村野監督が「子どもをなめるなよ」との思いを込めて制作に打ち込んだアニメ映画『ぼくらの7日間戦争』は、2019年12月13日(金)から全国の映画館で封切りされます。実写映画を観たことがある人なら思わず「なるほど!」と思ってしまう描写もあるので、現代を生きる「ぼくら」も、かつての「ぼくら」も是非劇場に足を運んでみてください。
映画『ぼくらの7日間戦争』予告【12月13日(金)公開】 - YouTube
![](https://img.youtube.com/vi/IhJG4helDKk/maxresdefault.jpg)
c2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会
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