地球温暖化によって赤ちゃんが予定より早く生まれやすくなる可能性がある
by Rene Asmussen
一般的な妊娠期間はおよそ40週間とされており、赤ちゃんはできるだけ満期に近い期間を母親の胎内で過ごした方が好ましいとされています。出産が予定よりも大幅に早まる早産は、さまざまな医学上の健康リスクを増加させることもわかっていますが、「地球温暖化によって極端に暑い日が増えると、予定より早く生まれる赤ちゃんが増加する可能性がある」と研究者が指摘しています。
The impact of high ambient temperatures on delivery timing and gestational lengths | Nature Climate Change
https://www.nature.com/articles/s41558-019-0632-4
Babies Are Predicted to Be Born Earlier in The Extreme Heat of Climate Change
https://www.sciencealert.com/heatwaves-shorten-gestational-length-and-babies-abandon-ship-quicker
Pregnant women have a higher risk of delivering early on unseasonably hot days
https://theconversation.com/pregnant-women-have-a-higher-risk-of-delivering-early-on-unseasonably-hot-days-126822
アメリカでは4人に1人が予定よりも2~3週間早く生まれているとの(PDFファイル)調査結果があり、わずか2~3週間の早期出産であってもぜんそくのような呼吸器疾患のリスクが高くなるとのこと。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の環境経済学准教授であるAlan Barreca氏とクレアモント・マッケナ大学の経済学准教授であるJessamyn Schaller氏の研究チームは、天候が子どもの出産時期にどのような影響を与えるのかを調査しました。
以下の図は、2007年~2018年の期間中に妊娠38週以下で生まれた赤ちゃんの割合を示したもの。南へ向かうにつれて早期に生まれる赤ちゃんの割合が増加している傾向が見てとれます。
しかし、単に早期に生まれる赤ちゃんの割合だけを見ても、正確な調査結果を得ることはできません。Barreca氏によると、ミシシッピ州では健康保険に加入していない人が多いなど、暑い場所では気候とは関係のない問題も多いとのこと。
そこでBarreca氏らの研究チームは1969年~1988年の間に生まれた5600万人の出生記録と、子どもが生まれた郡における気温データを照合して分析を行いました。分析においては、「郡の最高気温が摂氏32度以上になった日を対象に、その日の出生数が郡の平均出生数をどれほど上回ったのか」を調査したとのこと。
一般的に早産について分析する際には、妊娠期間が何週間だったかを指標として用います。ところが、正確な妊娠期間を医学的に測定することは難しく、時には病院側や親側による曖昧な推測が行われることも多いとBarreca氏は指摘。そこで、今回の研究では妊娠期間を指標として用いずに、「最高気温が高くなった特定の日にどれほど郡の平均を上回る数の出生があったのか、さらにその後日、平均を上回った分だけ出生数の低下がみられたのか」をチェックしました。これにより、本当に暑さによって出生数の増加が発生したのかどうか、どれほど出生数が増加したのかを調べることが可能です。
by Pixabay
研究チームは、「最高気温が32度を超えた場合、最高気温が高くなった当日とその翌日にかけて出生数の増加がみられました」と述べています。最高気温が32度を超えた日とその翌日には予想よりも5%多くの子どもが生まれており、暑さのせいで毎年2万5000人もの赤ちゃんが予定よりも早く生まれていることが判明しました。ほんの数日早まるくらいであれば、赤ちゃんにとって大きな影響があるとはいえませんが、研究チームは暑さによって赤ちゃんの出生日が最大で2週間早まった可能性もあると指摘しています。
以下のグラフは、1969年~1988年にかけてアメリカにおける赤ちゃんの出生数が最高気温によってどれほど変化したのかを、最高気温が華氏60度~70度(摂氏15度~21度)の場合を100%として示したもの。これによると、最高気温が上がるにつれて出生数が上昇し、最高気温が下がるにつれて出生数が低下することがわかります。一方、最高気温が華氏40度(摂氏4度)以下になっても出生数の低下は2%未満であるのに対し、最高気温が華氏90度(摂氏32度)を超えると、出生数が5%近く増加していることがみてとれます。
一体なぜ、暑さが赤ちゃんの早産を誘発するのかというメカニズムについては明らかでないとのことですが、研究チームは暑い気候が陣痛と分娩を調整するオキシトシンというホルモンの分泌量を増やし、早めの出産につながる可能性があると考えています。このまま地球温暖化が進めば、21世紀末には年間で4万2000人の子どもが暑さによって早期に生まれる可能性があると研究チームは述べました。
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