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住宅価格の上昇と出生率の低下には関連があるのか?


by Ian

先進国における出生率の低下は将来の経済停滞を招きかねず、各国政府にとって大きな問題となっています。2017年のアメリカは過去30年間で最も出生率が低い年になっており、「リーマンショックから経済は回復したのに、なぜ出生率が上がらないのか?」という疑問もわき上がっています。そんな中、「住宅価格の上昇と出生率の低下に関連がある」とする分析が発表されました。

Birth Rates Dropped Most in Counties Where Home Values Grew Most - Zillow Research
https://www.zillow.com/research/birth-rates-home-values-20165/

2008年に発生したリーマンショックによる景気後退を背景に、アメリカの出生率は低下を始めました。2007年には女性1人当たりの出生率は2.12人だったのに比べ、2010年には女性1人当たり1.93人にまで出生率が低下しています。多くの人々は「景気が回復すれば、出生率もそれに伴って回復する」と見込んでいたものの、リーマンショックから経済が立ち直ったにもかかわらず、出生率は2016年に1.82、2017年に1.76まで低下しているとのこと。女性1人当たりの出生率が「2.1」を下回ると、人口が減少していくと考えられているため、アメリカの総人口はこのままだと減少していくとみられています。

「出生率の低下は、近年の若者が多くの子どもを作ることを望んでいないからだ」という、価値観の変化が反映されたものだという指摘もあります、ところが、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が行った「あなたは人生で何人の子どもを作ると予想していますか?」というアンケートでは、2002年から2015年まで、一貫して女性は2.3人、男性は2.2人の子どもを作ると予想していると回答しています。そのため、現役世代が子どもを作りたがらないから出生率が低下しているのだ、という指摘は正しくないとのこと。

そこで、アメリカのオンライン不動産データベースを運営するZillowは、自らが集計したアメリカの住宅価格の変動と、CDCが発表した出生率のデータをもとに、住宅価格と出生率の関連について分析しました。すると、「住宅価格の上昇率と出生率の低下には関連が認められる」という結果が出たそうです。

by North Central Church

「子どもを持つ前に広い持ち家を購入しておきたい」と考える人は少なくありませんが、パートナーとの間に子どもをもうけようとする割合が増え始める25歳~29歳の人々は、その時点で家を持っていないことがほとんどです。2010~2013年の間に初めての住宅を購入する人々の平均年齢は32.5歳でしたが、2017年には初めて住宅を購入する平均年齢は35.2歳にまで上昇しているとのこと。一方で、女性が初めて子どもを出産する平均年齢も2010年には27.7歳だったのが、2016年には28.7歳にまで遅くなっていました。

Zillowは2010~2016年の期間で、アメリカ合衆国におけるごとの住宅価格の上昇と、25~29歳の女性が出産する割合について関係があるのかどうかを分析しました。すると、実際に住宅価格の上昇率が大きい郡では20代後半女性の出産割合が低下しており、住宅価格の上昇率が少ない郡ではそれほど出産割合が低下していないか、微増している郡もあったとのこと。

全体の平均をとると、他の郡よりも10%住宅価格の上昇率が高ければ、郡における出生率は1.5%多く低下する傾向にありました。例えば、バージニア州のフェアファックス郡では住宅価格が2010年から2016年にかけて17%上昇し、出生率は8.2%減少している一方で、カリフォルニア州にあるモントレー郡では住宅価格が37%も上昇しており、出生率は11.7%減少しているそうです。


上記の住宅価格の上昇率と出生率の低下についての相関関係は、特にアメリカ西部と北東部において平均よりも強く観測されています。カリフォルニア州やイリノイ州、ニューヨーク州といったアメリカ西部や北東部では、平均的な住宅価格上昇率と出生率低下の比率よりも、さらに大きな割合で出生率が低下していることがわかります。


一方で、アメリカ南部や南西部にあるテキサス州やアリゾナ州にある郡では、平均的な出生率低下割合よりも出生率が高くなる傾向にあり、郡によっては出生率が増加しているところもありました。


分析結果を発表したZillowによれば、アメリカにおいて住宅価格の上昇率と出生率の低下には相関関係がみられるものの、因果関係があるとまでは判断できず、「住宅価格が上昇することが、直接出生率の低下につながっている」とは言えないとのこと。また、上記のように地域ごとにおける相関関係の変化も観測されていることから、「出生率の低下が大きい郡には、住宅価格が高くなっても居住可能な高所得層であるものの、何らかの要因で子どもを持ちづらい職業に就いている人々が集まっている」可能性なども含めて、複数の要因が重なり合って上記の結果になっている可能性も残されています。

もっとも、住宅価格の上昇率と出生率の低下に直接的な因果関係は認められないものの、有意な相関があることは間違いありません。住宅価格の上昇率で郡を5段階に分類し、出生率の低下割合をグラフ化したところ、以下のようになりました。最も住宅価格の上昇率が低かったグループの出生率低下は5.4%に抑えられていますが、最も住宅価格の上昇率が高かったグループでは、実に13.4%も出生率が低下していることがわかります。


年々大幅な住宅価格の上昇がみられたアメリカの不動産市場ですが、Zillowによれば今後住宅価格の上昇率は、2017年の8.7%に比べて2018年は6.5%にとどまるとみられています。不動産に対する過剰な熱は収まりを見せつつあるようですが、「住宅価格の上昇率が低下することで出生率の向上につながるのかどうかは、今のところ判断できません」とZillowは述べています。

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