生き物

「人工光が昆虫を大量に殺している」と科学者が指摘

By emkae junior

「人間が設置した人工光による光害が昆虫の個体数を大幅に減少させている」とアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの研究者らによる合同研究チームが指摘しています。

Light pollution is a driver of insect declines - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006320719307797

Light pollution is key 'bringer of insect apocalypse' | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2019/nov/22/light-pollution-insect-apocalypse

昆虫は世界中の至る所に生息している種で、その個体数の多さから、食物連鎖において重要な役割を果たしています。しかし近年、「昆虫は絶滅の危機に瀕している」という研究結果が多数報告されています。

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by smarko

以下では、昆虫が激減した結果、生態系全体が大きな打撃を受けていると報じています。

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by GalgenTX

昆虫が絶滅しつつある理由について、温暖化などの影響が声高に叫ばれていますが、「人工光も大きな影響を与えているにもかかわらず、その影響は見過ごされてきた」と主張するのがアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの研究者らによる合同研究チームです。

研究チームは光の存在が昆虫の行動を左右する例を複数挙げています。よく知られている例は、夜行性の蛾は、電灯の光を「月」だと誤認するというもの。電灯の光に捕らわれた蛾はその周囲を飛び回り、夜が明けるまでに約3分の1が捕食者に捕らえられるか飛び疲れて死に至ります。一説によると、ドイツでは夏季の間に1000億匹の蛾が光が原因で死んでいるとのこと。また、偏光を感知して水面を見分ける能力を持つカゲロウは、アスファルトに反射した光を水面の光だと勘違いするそうです。そのため、アスファルトに卵を産み付けて短い一生を終えるカゲロウが増加しています。

By Studio_OMG

さらに、人工光は昆虫の行動を乱すだけではなく、「捕食者を有利にする」という点でも昆虫に影響を与えています。クモ・コウモリ・ネズミ・ヤモリなどの多くの捕食者が人工光の周りで狩りをする傾向があります。そのため、人工光が増えると捕食される昆虫の量が増加します。

こういった問題があるだけではなく、研究チームは、「昆虫にとって人工光は対処しづらい問題」と指摘します。昆虫という種は、長い歴史の中で気候変動や捕食者による捕食を多数経験してきました。それゆえ、将来的に公害が原因の温暖化や人間による駆除が起きても、似たような経験から対処が可能とのこと。しかし、光と闇の周期に関しては長い年月に渡って不変だったため、昆虫は光と闇の周期が変わるという経験を持たず、簡単には対処できないだろうというのが研究チームの主張です。

By Lucas França

一方で、人間の側からこの問題に対処するのは簡単です。研究チームのバレット・セイモア氏は「光を消せばいいんです、ほとんどの汚染物質のように除去する必要はありません」とコメントしました。セイモア氏は、「もちろん『光を使うな』と言ってるわけではなく、『人工光を賢く使うべき』ということです」と述べ、人工光を常時オンにするのではなく、人の動きなどに応じて光がオンになるモーションセンサーなどの仕組みや、有害な波長を簡単に制限できるLEDなどが問題の解決に役立つと語りました。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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